第85話手に入れた平穏

「マスター、すごく嬉しそうです。私にもご褒美をお願いしても大丈夫ですか?」

ミュアが、僕の腕にしっかりとつかまって歩いている。

少し歩きにくいけど、上目づかいで見てくるミュアが可愛くて何も言えない。

紫の目が、こちらをじっと見つめて来るし青い髪はふわふわでいつまでも撫でていたくなる。


僕の身長は、森に籠っていた1年で、170近くまで伸びていた。

ミュアはというと、ハーフエルフという事もあって、まだ140そこそこで、親子くらいの身長差があったりする。

いや、僕の前の人生を合わせたら、ぜんぜん親子なんだけど。


ミュアは、一年森でしっかり食べてしっかり寝ていたおかげか、ふっくらとして、すごく可愛い子になっていた。

透き通る肌ほど白い肌は、日に当たっても日焼けする事も無く白いままだし、青い髪と、紫の目は遠目から見ても人目を引く。

それでいて、小さく整った顔。目は大きく、実際14歳になっているはずなのに、10歳と言われても頷いてしまうくらい幼く見える。


まさに、理想の美少女。そう言えるほど変わっていた。


「ワイバーンのお肉、楽しみです」

ミュアが、小さく笑っている。

調理するのは、ミュアなんだけど。

「だって、美味しそうに食べているマスターを見るのが好きですから」

追加でそんな事を言われたら、抱きしめたくなる。

衝動を押さえながらも、冒険者ギルドに入ると。


一瞬でギルド内が静かになった。

暴緑ぼうりょく?」

幼女趣味ロリコンマスター?」


聞いちゃいけないあだ名が聞こえた気もしたけど。

「シュンリンデンバーグ君!生きてたのっ!?よかった~!」

受付のお姉さんが、カウンターを飛び越えて走って来る。

いやいや、それしちゃ駄目でしょ。


「おい、生きてたのかよ」

「暴緑 だろ?行方不明って言われてから1年だぜ」

「しかし、あのオーラと連れ。2つ名の通りだな」

「やめとけ。究極幼女趣味ロリコンキングに触れると消されるぞ」


消されたい奴がいるみたいだ。

まあ、そんな事よりもギルドに来た理由があるから。


「とりあえず、お金が欲しくて。素材を買い取ってくれないかな?」

「えっと、預金を降ろしますか?」

「いや、素材の買取だけで。大丈夫だから」


「雰囲気が変わりましたね。もう少し、なんというか、、余裕が生まれているというか、、、はっ!もしかして、その子、、、、」

「余計な詮索はいいからっ!早くして」

「私の事ですか?私は全て、マスターの物ですが。何かありますか?」

「ミュアっ!変な事言わなくていいからっ!」


ほら、ギルド内が殺気だって来たじゃないか。

「コロス」

「あんな美少女を、、、、なんてやつだ、、、」

「つうか、、あんな小さい子を、、、恐ろしい、、、さすが、、」

「やめろ、言ったら殺されるかもしれんぞ。あの暴緑だ。」

ギルド内の動揺が、どうにもならない。


「で、何を買い取りですか?」

受付のお姉さんからも、怒りオーラを感じる。


「ミュアは、僕の奴隷だけど、何ていうか、家族というか、すごく甘えて来る妹みたいなものだから」

「私は、いつでも大丈夫なのに。ミュアはもう大人です。ミュアの全てを貰って欲しいのに」

ぼそっとミュアが呟く。

だから、そういう事を外で言わない。


最近、添い寝をしている時にミュアが襲い掛かってくる事がある。

なんとか全部かわしているけど、いつか食べられそうで怖かったりする。


「で、な、に、を、買取ですか!?」

ヤバイ。お姉さんがキレ始めてる。

「いろいろ量があるから、ちょっと準備が必要かも」

「なら、こっちですね」

お姉さんは僕を隣の部屋に連れて行く。


「ヒウマさんが、時々とんでもない数の魔物を持って来るから作った部屋です」

受付のお姉さんが真剣な目で説明をしてくれる。

というか、ヒウマさん。何をしてるの?


「あと、これ。預かっていたギルドカードです。あと、これは、そちらのお連れ様用です」

ギルドカードを渡されて、そういえば、カードの不調で預けたままになっていた事を思い出す。

ミュアに渡されたカードは、冒険者見習いカード。

けど、色が違う。

「それは、奴隷冒険者カード。誰の奴隷かが分かるようになってます。奴隷の身分証明にも使えます」

「へぇ。便利なカードがあるんだな」

「奴隷は、外に捨てられる事もありますから。所有者が分かるようにしておく事は必要なんです」

あっさりお姉さんは言うけど、、それって。。

「奴隷は盾ですから」

だよね、、、、



それじゃ、、、とりあえず、、素材を出そうか。


「はぁ!?シュン君!?一年間何処にいたの!?黒豚なんて、強さBランク、食材としてはAランクの魔物よっ!こっちはサイレントキラー? というか、これだけのサソリ系の魔物がいたら、冒険者全員が討伐に出てもおかしくない数じゃない!」

まだまだなんだけど。


これでも、全魔物の総数の100分の1にもなってない。

赤牛とか、神戸牛よりもおいしい肉はきちんと確保しているし。


次々と出していく。

だんだんと頭を抱えていくお姉さん。

「ギルドマスター!!!!」


ついに、限界を超えたのか。

お姉さんはギルドマスターを呼んでいた。


結局、素材だけで金貨8枚 (800万)の買取になった。



「ふぅーーー」

大分空間収納の中もすっきりした。

ワイバーンの大きさがすごくて、大分圧迫していたから、他の詰め込んでいた魔物を大放出したけど。


まだまだ入るんだけどね。

この一年で、魔力を上げまくったから、僕の空間収納は多分、市とか、区がすっぽり収まるくらいの容量がある。

それでも、いらない物を放出するとすっきりした気分になるからね。


「さて、買い物に行こうか」

王都まできた理由は、ただ一つ、ミュアのスキルの確認だった。


ミュアには、絶対不幸がある。

そのスキルが、周りの人間を不幸にして、時には死に追いやり、ミュア自身を傷つけて、普通に生活する事を不可能にしていたのだが。


随時解除

と言うスキルをミュアにつけたのだ。


随時解除

 呪い解除、呪い軽減、異常状態解除、異常状態軽減、即死防止、不幸防止、因果律調整、神への抵抗


そんなスキルを一気にまとめたスキルで。

EPを50万も使ったスキルだ。

スキル統合なんてスキルまで取る事になったけど。


毎日毎日100体以上、多い時は200体近く倒し続けた結果だった。

それでも、一体10pとかしか入らないから、一年はかかったけど。

ミュアの絶対不幸による、絶対エンカウントがなかったら溜まらなかったと思う。

後、ちょっと自分の魔力にも振ってるし。

魔力球の自動掃除システムのおかげでもある。


それはそうとして、今回の街歩きは、このスキルが、絶対不幸を打ち消してくれるか、その実験でもあったのだけど。


「大丈夫そうだ」

「はい」

本当に嬉しそうに笑うミュア。


自分が歩けば人が死ぬかもしれないミュアにとって、何事も無く歩けるだけで嬉しいみたい。


とっても素敵は笑顔で、笑っていたのだった。



【随時解除】


EPを大量消費して、無理やり作ったスキル。

データベースに照合なし。

絶対不幸を緩和する。緩和時に、大量の魔力を消費する。

※シュンリンデンバーグが傍にいる時のみ、シュンリンデンバーグの魔力を消費し、スキルを発動する。

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