みなし冒険者編

第48話みなし冒険者

「これ!可愛いと思いません?」

ブローチの前で、はしゃいでいるライナ。

「欲しいの?」

「可愛いとは思いますけど、似合う服が今は無いんですよねぇ」

ライナは残念そうにそのブローチを見ている。

キラキラした光と閉じ込めたような大きな宝石が入っているけど、じつは魔物の目玉だったりするんだよなぁあれ。

だから、宝石のような光が無くなるのが以外と速かったりする。


「あ!あっちに、美味しいスイーツ屋さんがあるんです!」

思い出したかのように叫ぶと、僕の手を掴んで引っ張るライナ。

楽しそうな、嬉しそうなそんな彼女に付き合いながら僕も微笑みが浮かんでいた。


その次の日は。

「わ、わたしと、、一緒いぃ、、」

思いっきりかみかみで、手を握ってくるレイア。

「えっと、、武器屋とか、、、行ってみたい、、」

女子力よ、、、


ライナと二人きりのデートをして、次の日。

レイアと手つなぎデートを一日する羽目になってしまった。


理由はただ一つ。

「無茶した罰」

「「勝手に出ていった許しません!」」

と宿屋を抜け出して、帰って来なかった事に対して、散々に怒られてしまった上に、二人からこんこんと説教をされてしまったからだ。


さらには、見張りと言って、二人のどっちかが、ほぼ毎日、僕のベッドにもぐりこんで来る。


いろいろ溜まりすぎて辛い

仮にも、前の人生合わせて100年近く生きた記憶はあるんだけど。

夜のお店も言った事あるんだよ。

横に美少女が寝てるなんて、ムラムラしない方がおかしい。


しかも、多分。二人とも僕が襲っても、受け入れてくれる事はほぼ確実。

けどもし、もしもだよ? 断られたら、、、、


多分、別の意味で立ち直れなくなる。

だから、手が出せない。キスすら出来ない。


ええ!ヘタレですよっ! 悪いかっ。


まだ、18にならないから、アウトだっ!と自分に言い聞かせて、心を静める。

けど、二人が僕にくっついて、むにゃむにゃ言っているのは、それだけで幸せだったりしていたけど。




「ギルドマスター」

冒険者ギルドの一室にて。

一人の女性が、頭が寂しくなっている男に声をかける。

「以前、平地の魔物が全て狩られた件についてですが」


「おお。あれは、規約違反だ。誰がやったのか分かったのか?」

「見た事も無い、フードをかぶった仮面の冒険者が、魔物を虐殺していたとの通報がありました。ただ、、正体については不明のままです」

「そうか、、一言、文句を言ってやりたかったんだがな」

「それを、調べている最中に、ちょっと面倒な事が判明したのですが」

「何だ?」

「一人の特待生が、特殊冒険者カードを持ったまま、狩りや素材を売っているようです」

「はい?留年生か?」

「一日の稼ぎが、大銀貨(10万)にせまるような稼ぎの方です」

その発言に、思わず吹き出すギルドマスター。

「おそらく、温情でカードを発行して、そのままにしているのかと」

「ヨベ」

「はい?」

「学園長をよべぇぇぇぇ!ふざけるな!冒険者見習いとかならまだしも、疑似冒険者カードは、卒業試験の数か月のみ有効としてあるはずだぁ!」





「シュンリンデンバーグ君!」

久しぶりに学校に行くと、先生が蒼い顔をしてこちらを見ていた。

「とにかく、今から、すぐ、冒険者ギルドに行ってください。ライナさんと、レイアさんも連れて行って!学校は今日はいからっ!」

凄まじい剣幕だった。



「えーと。シュンデンデンバグ?シュンリンデン?」

冒険者ギルドに入るも、受付のお姉さんが名前を間違えまくる。


「とりあえず、、ギルドマスターがお呼びです」

「はい?」

さっきまで名前を間違えまくっていたはずなのに。

真剣な顔で僕たちを呼んでいた。

やばい。やらかしがバレたかな?


「単刀直入に言う。シュンリンデンバーグ君。君が持っているのは、疑似冒険者カードだね」

部屋に入り。椅子を勧められた途端、睨みつけられる。

「えーと」

ライナと、レイアが、ギルドマスターの圧に負けている。

「まあ、学校からは、それしかもらっていませんから」

「シュン君が、、敬語、、、」

ライナ?

「それで、いろいろな問題が起きている。疑似冒険者カードは、一か月しか使えないはずなのだが」

うん。そうだよね、、、

「君は、すでに、半年近く使っているな」

「ですね、、」

「だから、とりあえず、、、だ」

そういって渡されたのは、冒険者カード。

「え?」

僕が唖然としていると。

「君が、以前、冒険者見習いとして登録していたのは知っている。

炎の楔、、だね。だからこそ、この処置が出来る」

ギルドマスターは真剣な顔でこちらを見る。

「冒険者見習い。荷物持ちとしての登録から、みなし冒険者として、Fランクカードを発行する。Eランクに上がったら、文句なしに冒険者だ」

え?え?

それ、いろいろと規約にひっかかるんじゃ、、

「何か問題はあるか?」

「いえ、、ないです」

「なら、これを持っておいてくれ」

ギルドマスターは、どことなく苦笑いをしていた。



「シュンリンデンバーグさん。おめでとうございます。みなし冒険者としてのカードとなります。こちらは、、初めての試みとなりますので、少し特殊なカードとなっております。一応Fランク冒険者としての登録となりますが、Eランク、Dランクの依頼を受ける事が出来ます。こちらは、Dランク以上の実力がある方にしか発行しない事になっており、また、王都のこのギルド限定のカードとなります。他の場所での使用は出来ませんし、効力を発揮しませんので、速めに、Eランクに上がっていただける事をお願いいたします。

また、冒険者見習いの方を連れて出る事も出来ますので、お連れの方も一緒に依頼を受ける事ができます」


何か、不思議だ。

突然渡されたカードの説明を受付のお姉さんが初めてくれたのだが。

初めての試み?

「これは、一気にランクアップとか出来るんですか?」

「できません。そもそも、冒険者ランクは、各ランクをひとつづつ上がっていく事になってます。どんな功績を上げてもです。竜を倒しても、シュンリンデンバーグ様は、Eランクにしか上がりません」


へぇ。

「だからこそ。Bランク、Aランクの冒険者は、ベテランとして尊敬されますし、また、貴族など地位のある方からの依頼も来るようになるのです」


「最高ランクはAですか?」

「いえ。AA AAA もありますが、最高ランクはSとなっております。今は、4Sと言われていますので、4名ですね。名前はお伝えする事もできません。機密事項ですので」


なんか、キナ臭い。まるで特殊工作員みたいだ。


「一般人に対して、暴力行為、恐喝はお控えください、ギルド審議会にて、資格のはく奪をされる事もありますから。一般人にからまれても、我慢してくださいね」

「あと、冒険者同士の喧嘩も、審議会に訴えられる事がありますから、気をつけてください」


にっこりと、受付のお姉さんに笑われる。

「ただ、、、自然現象は管理しておりませんので、何かあっても仕方ない事ではあります。最近は部屋の中で、突然竜巻が起きた事もありましたね。怖い事です」


真面目に話をする受付のお姉さんに、僕は思わず苦笑いを返していた。




「ギルドマスター、本当にいいのですか?国王に怒られませんか?あんなカードを発行して」

「アレとは、散々話し合った。有能な人材を学生とか言って置いておくのは、損害でしかない」

「しかし、、みなし冒険者とは、、」

「Cランク以上の力があると思われる奴にしか発行しないさ。

表向きは、Dランク以上と言っているがな。すぐにでもBランクになれそうな、化け物に渡す用のカードだ」

「化け物、、ですか、、、」

受付のお姉さんが、困惑しているのを見て、ギルドマスターはため息を吐く。

「なぁ。フードをかぶった男が、平原の魔物を一掃した話があったよな?」

「はい。しばらく、魔物の討伐依頼が出来なくて、多くの冒険者が、生活に困っていました。ギルドからの特別配慮を配ってなんとか落ち着いたと思っていましたが」

「資格の無い奴だったとの事だ。しかも、学生だとよ」

「え?」

「さっき、4Sに調べてもらったのさ。魔王でも出たのかと思ったからな」

「ま、、まさか、、、さっき、お話してばっかりなのに、」

「手綱は必要だって事だ。あいつら、化け物には」


誰がやったのかは、分からないけどな。

それだけを言いながら、目の前の飲み物を飲む、ギルドマスター。

その前には、3人の学生に関する調査書が置かれていた。

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