第46話追い込み

カチャリと、家となっている宿屋の扉を開ける。

フラフラの足をなだめながら、ベッドへと倒れ込む。


何回か、大進攻が起きた気もするけど。

全部倒してやった。

ほぼ、全部狩り尽くしたと言ってもいい。

平原は今平和そのものだ。

もう少ししたら、また魔物が出て来るんだろうけど。


平原では魔物は沸かないから、森から出て来るのを待つしかない。

しばらくは平原は魔物がいなくて暇になってしまうかもだけど。

「20体が、、限界か、、、」

魔法の罠を張って。絶対結界をフルに活用して。

それでも同時に戦える数は20体だけだった。

それ以上になると、絶対結界の中に閉じこもる事になってしまう。

何回地面に開けた穴の中に逃げ込んだ事か。

「それでも、取れたから良しだよな」

空間収納魔法、魔法球のスキルを手に入れる事が出来た。


寝がえりを打って。

片手を天井に伸ばす。


その手を握られる。

「えっ!」

びっくりして心臓が跳ねあがる。

「おかえりなさい、、、」

「た、、ただいま、、、」

金髪、金目の可愛い子が、僕の手を握っている。

握っているんだけど、、、

「目が、、怖いんだけど」

「そう、、ですか?気のせいですよ、、、」

ゆっくりと顔を近づけてくる。

ねぇ、服、、、透けてない?


「ライナっ!そこまでっ!」

突然大声がして、ライナの動きが止まる。

「レイア?」

本気で怒っている。

「襲うのはダメだろっ!さすがに、、、ねぇ」

私も襲いたいのに。


そんな声が聞こえた気がしたけど、気のせいだろう。

ねぇ。

ゆっくりとレイアも近づいて来て。

「で、、10日以上も、私たちをほったらかした理由、、、教えてもらえるんだよな」

あれ、?レイア、、一人称、、、?

「どうなんだ?それとも、私たちには教えられないって言うのか?」

口調は強いのに。

微笑みながら、真直にこちらを見つめるのは止めて欲しい。

近い、近いから。

「ちょっと、自分を鍛えに、行こうと思って、、」

「私たちを置いて?」

「連れて行ってもくれないのですか?」

いや、ライナも、近い、近い。

「久しぶりのシュン様の臭い、、、、」

いや、ライナ。嗅がないで。

「風呂も入ってないのかよ。とりあえず、体くらい拭いたらどうだ?」

「そうですわねっ!シュン様の身体を拭いてあげないと。すみずみまでっ!」

ライナ、目、目。


「ライナは、あっちに行く事。何かしそうで本当に怖い」

レイアの意見に激しく同意。

いろいろ大変な事になりそうだから、やめて欲しい。

視線が、危ないからっ!


夜中だけど、大きな桶を用意してもらって、体を拭く事にする。

あ、二人には外に出てもらったよ。


二人の視線が、獲物を狙う目で、めっちゃ怖かったから。




「で、、何をしていたのですか?」

ライナが、本気で問い詰めて来る。

ここ、僕の部屋で、今、、夜中なんだけど。

「私も、聞きたいんだが?」

レイアの顔がなんだか、今までにくらべて優しい気がする

「これをね、、練習してた」

そう言うと、空間収納を発動。

牛の魔物の肉を取りだす。

ライナの杖の素材にも使われている水牛の魔物だ。

イノシシよりは癖がなくて食べやすい。

火の魔法が使えないと言うか、火を直視できないから、生肉を食べていたから、イノシシは硬いんだよなぁ。

「たった10日間程度で?!」

想い出に浸っていると、レイアが、びっくりした声を上げる。


ほわぁとそんな肉を驚いてみていたライナが、何かに気が付いた。

「シュン様?ちょっとお尋ねしても?」

僕がライナを見ると、、目が、、怒ってる。

「シュン様、、火、、、使えませんよね。料理屋の火を見ても、汗が出るくらいですよね」

ライナの言葉に、レイアまで気が付いたらしい。

「調理は、、どうしていらしたのですか?」

僕は、二人から目線をそらす。


「「シュン様っ!」」


やばい。生肉を食べてたのがバレる。

「いや、、買い込んで、持ち出していたから、だいじょ、、、」

「嘘ですよね?そんなに日持ちする食料なんてないですよね?まさか、携帯食だけで、ずっといたとか言わないですよね?」

この世界の携帯食は、干し肉がほとんどで、数日これだけで過ごせる物じゃない。

長期の旅となれば、途中で行商人から食料を買ったり、魔物を狩ってその肉を食べたりするのが普通だ。

大体、干し肉でお腹が膨れる訳も無い。


「シュン様?」

「剥きますよ?」

ライナが、、ライナが怖い、、、、


「ごめ、、、」

謝ろうとした瞬間。ライナに抱きしめられる。

「だから、これからお外に行く時は、私たちを連れていってください。シュン様の足手まといでも、料理くらいは出来ますから」

「火の番くらいなら、いくらでもしてやるから」

「無茶は、、無茶はしないでください」

ライナが泣いている。


「本当に、、ごめん、、、、」

僕はただ、抱きしめられながら謝る事しかできなかった。



ライナはふと顔を上げると。

「それ以外のお世話もしますから。子供は二人がいいですか?」

「ライナっ!」

突然の爆弾発言に、怒鳴るレイア。

「お前、いつ結婚っていうか、なんというか、いろいろと飛ばしすぎだろう!」

「あら。これからの事を考えたら、早い方がいいのかなぁと」

けらけらと笑うライナ。

ぎゃあぎゃあと喧嘩している二人を見ながら、僕は微笑んでいた。



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