第61話 焦走
奥へと走る。
マップを見れば、僕の後を追いかけていた赤い点が、緑の一つの点の前で消えていく。
「さすが、ロア先輩」
そう思った時。
目の前で、何かがぼやけるのが見えた。
紫色の光りが見えた気がして。
僕は危険を感じて、空中へと飛び上がっていた。
木を蹴って、かなり高くへ飛んだのに。
目の前に、バッファローの頭があった。
口を開いて。
僕を呑み込もうとする。
咄嗟に魔法球を出して、魔法球に絶対結界を張り。
それを足場にさらに上空へと飛んでいた。
あれ。今、、、
必死だった。
けど。とんでもない事をした気がする。
空中に浮かんでいる絶対結界が、ジャイアントバッファローの上あごを受け止める。
何か。行けそう。
僕は、魔法球から、一気に氷魔法を解き放つ。
口の中を氷の魔法で切り刻まれたジャイアントバッファローが、叫ぶ。
そうかっ。
「設置型にしてやれば、使えるよなっ」
叫んで口を開いているジャイアントバッファローの口の中に魔法球を生み出す。
魔法球は、視界に入る所ならどこでも生み出せる。
なら。
「楽しい歯磨きだっ!」
口の中に魔法球を生成。魔法球全てから、風魔法を撃ちだす。
口の中から頭まで切り刻まれて。
ジャイアントバッファローが、倒れて行く。
「意外と、弱い?」
僕が呟くとほぼ同時に。
黒い風に拾われていた。
「トロトロしてたら、置いて行くぞ。急いでるんだろ?」
「にゃーっ」
にゃんの声が不機嫌だ。
地面すれすれまで降りたにゃんは、その体を震わせて、僕を振り払うように地面に落とす。
「今のはノーカンにしといてやるにゃっ」
それだけ言うと、にゃんは、森の奥へと走っていく。
熊の魔物を吹き飛ばして。
ていうか、、今のひき逃げじゃあ、、、、?
「ねぇ、、、、」
「黙って。ライナ」
ずっと隠れていた。
隠れるしかなかった。
漏らしちゃったけど、それよりも嫌な事が続く。
目の前にある地下への入り口から、別のコボルトが出て来る。
新しく出て来たコボルトは、変な薬品を骨の魔物に飲ませると。
骨の魔物が一回り大きくなっていた。
コボルト、、、アルケミスト、、、
授業で聞いた事がある。
回復薬や、毒薬を作るコボルト。
死にかけた仲間を癒すコボルト。
けど、私たちにとっては、悪魔でしかない。
なのに。
悪夢は続く。
禍々しいというしかない、黒?いや、血の色と言ってもいい赤黒いローブに身を包んで、骨をじゃらじゃらと鳴らしているコボルト。
なんか、あのローブは、見てはいけない物のような気がする。
だって。
ローブに、小さな虫がついている。
あれは、死虫。死体を食べる虫のはず。
なんで、ローブにあんなにたくさんついているの?
あのローブは、、何?
私が嫌な考えに至った時。
そのコボルトがこちらを見て、ニヤリと笑った気がした。
ぞわっと背筋が凍る。
見つかった。
レイアが、叫びながら飛び出す。
けど、一瞬。
周りに黄色い霧が立ち込める。
悪魔のような笑いを浮かべたまま、ローブのコボルトがこちらに近づいて来る。
消え居て行く意識の中。
私はただ叫んでいた。
声には出ない叫びを。
タスケテ、、、、、、、
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