第91話依頼2

【???】

「なんだよ。せっかく楽しめそうだったのに、速く来いとかよ」

どこかの一室。

不機嫌そうにナイフを投げて遊んでいる男が、目の前の学生服の男を睨みつける。

「君のシュミに口出しする気はないけど、おすすめはしないシュミだよね」

「ちっ」

舌打ちをしながら、ナイフを突然男に投げる。

そのナイフは、学生服の男の目の前で止まり。

砕け散る。


「ちょっと、あんた死にたいの?」

ゴスロリ服の女性が、ナイフ男を睨みつける。

「まあ、そんなに怒らなくてもいいよ。それよりも、見つけたかも知れない。ゲートを」

「ほんとうに?!」

「マジかよ」

「ああ。だから、早々と集結してもらった。あれは、ちょっと面倒な場所にある」

学生服の男の話を聞いて、2人は頭を抱える。


「そりゃ、、面倒だな」

「どうするの?」

「だから、、ちょっと、ご乱心してもらおうかな」

「ふふ。国壊しかしら」

「面倒事はゴメンだが。楽しめるなら何でもいいぜ」

「なら、始めようか。一気にやっても楽しくないから、ゆっくり、ゆっくり」

「本当に、そういう事に時間をかけるのは好きよね」

3人は、小さく笑い。

姿を消していく。



【シュン】

真夜中。

僕は一人で牧場の入り口で仮眠を取っていた。

家の中では、ミュアとカイナが二人仲良く眠っている。

カイナのお母さんは、カイナを産んですぐに死んでしまったらしい。

「カイナねっ、毎日牛さんのご飯を運んでるんだよっ!」

ミュアにすぐに懐いたカイナは、ミュアと一緒にお話しをしたり、一緒に歩いたりとミュアにべったりだった。


「お姉さんと思っているのだろう」

ダンがそう言って優しい目でカイナを見ている。

強い子だ。

お母さんはいないのに、弱音は一切吐かない。

そんなカイナが、僕たちは半日で好きになっていた。


少し深い眠りに入りそうになった時。

マップに赤い点が突然生まれる。


オオカミのような唸り声が聞こえる。

出していた武器を取り、すぐに立ち上がる。

夜目をこらして見てみると。


「グルル」

喉を鳴らす数体の黒い影があった。

オオカミほど大きくない。

しかし、小型犬くらいの大きさはある。

「モグラオオカミかよ」

僕は小さく呟く。

小型犬のような姿をしているくせに、こいつらはモグラなのだ。

しかも肉食の。

モグラというだけあって、小型犬の両足の爪が異様に長い。

そして、夜行性で素早い。


自分で穴を掘り直す事は難しく、一度地上に出たら出て来た穴からでないと戻れない少しお馬鹿な一面もあるのだが。

「けっこういるな」

6匹。

普通ならこんなに出て来る事は無い数だ。


僕はマップだよりに牧場を駆け回り、モグラオオカミを切り倒す。

全部の魔物を倒し終えた時、少しだけ空は明るくなっていた。


「ごめんなさい!どんな罰でも受けます!」

朝。

ミュアが起きて来て、開口一番土下座していた。

朝まで眠っていたらしい。

まあ、子供と一緒に寝てたら、そりゃ起きれないよね。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん!また来てね~!」

叫びながらブンブンと手を振るカイナに手を振りなおしながら、あくびを噛み殺す。

結局徹夜に近い仕事になってしまった。


あ~ 瞼が重い。

「本当にすみません。どんな事でもしますから」

ミュアが、僕の服を掴んだまま放してくれない。

「だったら、3日間、抱き枕の刑」

重い瞼を必死に開けながらそれだけを伝えると、ミュアはパットと顔を上げる。

「もちろんです!抱き枕といわず、ミュアの全てを使って下さい!」

いや、満面の笑顔でそんな事を言われても。

襲っちゃうよ。

可愛い顔で、にこにこしているミュア。

突然真顔になって、「肌着は着けない方がいいのでしょうか?」

なんて言っているのも聞こえるけど。

眠くて、頭が働かない僕は、返事もせずにただ歩くのだった。



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