足裏の感触
足裏に深呼吸ありブーツ脱ぐ
ブーツは、防寒用の長靴。最近はファッションの一部として季節に関わらず履かれるようになった。しかし、特に寒い時期に暖かく足元を包むブーツには、冬ならではの趣がある。冬の季語。
バスマットを、新しくした。
毛足が長くふかふかで、裸足の足裏になんとも心地よい。
思わず深呼吸が出る気持ちよさだ。
一年を通して室内では裸足でいることが多いせいか、踏むものの感触に結構敏感なのかもしれない。
足裏の心地よい瞬間を、とりとめなく思い浮かべる。
夏場にひんやりとした青畳を踏む瞬間。
植物を踏む清々しさが、そのまま全身に行き渡るようだ。
窓を開け放せば吹き抜ける風と、畳。風鈴の音。
日本人でよかった、と心の底から思う。
冬の、体の芯まで冷えた夜に浸かる風呂。
痺れるように冷たくなった足を湯に浸すと、まるで氷が溶けていくような心地よさに思わず恍惚とする。
浴槽にたっぷり張った湯に身体を沈める幸せを、しみじみと感じる瞬間。
浜辺の砂を踏む感触は、独特だ。
踏み出せばぐっと潜る感触。貝殻のかけらが時々痛くて。
潮の匂いと、耳のすぐそばで絶え間なく鳴る海。
ふと気づくと、海鳴りに包まれて自分ひとりになってしまったような……不思議な孤独感の中にいる。
子供の頃は、芝生を踏むとなんだかムズムズとする喜びを感じた。
生家の庭の、綺麗に刈り込まれた芝生が大好きだった。
ちょっといけないことをしているような背徳感と、芝の冷たくみずみずしい刺激。
じっとしていられず、走り出したくなる。そんな弾けるような思いが湧き上がった。
真夏のプール。
足をバタバタさせて冷たい水を蹴る、例えようもない楽しさ。
水しぶきが、明るい日差しにキラキラと跳ね上がる。
ひとしきり遊んだ後の、とろりとした眠気と全身のだるさ。体の芯が熱いような、不思議に懐かしい感覚。
拾い上げれば数えきれない、心地よい足裏の記憶。
足裏の感触。
成長に従い、それはだんだんと無関心になっていく感覚かもしれない。
だが、足裏の気持ちよさは、思ったよりずっと新鮮な喜びを——すっかり忘れていた全身に行き渡るような喜びを、私たちの感覚の中に呼び覚ます気がする。
寒い時期だが——時には、靴下を脱いで、足裏や足の指をのびのびと空気に触れさせてみよう。
そして——子供の頃のように、足裏が喜ぶ感触を裸足で味わってみるのも、楽しいかもしれない。
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