鳥の声
鳥の声またひとつ増え春浅し
「春浅し」は、春の季語。立春を過ぎ、気温はまだ低く寒いが、微かに春の足音が聞こえ始める時期を指す。
窓の外で、鳥が啼く。
無邪気な囀り。細く甲高い、寂しげな声。何かを威嚇する乱暴な声。
野の鳥たちが生きるために発する、生活の声。
何を残すわけでもなく空中へ消えていくその声は、不思議に心を安らがせる。
緊張で張り詰めた心を、ふっと解いてくれる。
それは、日々の中で忘れかけた空へ、意識を誘ってくれるからだろうか。
何にも拘らない伸びやかな自由を、思い出させてくれるからだろうか。
春はまだ浅い。けれど、大気は少しずつ潤いを帯び、明るくなっていく。
厳格に澄んでいた空の青は、次第に淡く、柔らかい色に変わっていく。
鳥が啼く。昨日よりも、心なしか軽やかに。
肺に吸い込んだ空気を、そのまま表現するかのように。
掬い上げるもの aoiaoi @aoiaoi
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★74 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
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