拒むきらめき


 夏草のきらめきに呼ばれ拒まれ



 夏草は、繁茂する夏の草。野山に茂った夏草は青々として快い。夏の季語。




 ひとの心を惹き付けるきらめき。自分自身のどこかにそんなきらめきを持ちたいと、誰もが願う。

 そして、誰もが既にそれぞれの魅力的なきらめきを放っている。

 しかし、そのことに自分ではなかなか気づかない。



 自分は、どんなきらめきを放っているだろう?

 それはちゃんと、自分の思い通りの色をしているだろうか?

 時々、そんなことを思う。





 ——夏草の生い茂る野原を通りかかった。

 夏の熱い風に吹かれ、剣のように美しい葉のつややかな表面が一斉になびく。

 それは強い陽射しに反射し、ギラギラと鋭い波のような輝きを放つ。


 ざざ……っと、風の通った跡が爽やかな音を立てる。

 一切無駄のない、鋭く力強い美しさ。



 その輝きに、思わず歩み寄った。

 しかし——腰辺りまで高く密集したその草の太い茎に阻まれ、その中へ足を踏み入れることができない。

目の前で、こんなにも美しく波打っているのに——その輝きの中に立ってみたいという願いは、すげなく跳ね返された。



 青々と輝き、人を惹き付けて止まない夏草。

 しかし、惹き付けておきながら、その茂みは近づく者を拒む。簡単に踏み込むことのできない強い茎と、鋭い葉先をなびかせて。




 夏草の野は清々しくきらめくが、どこか険しく、寂しい。

 優しい表情を見せない——それこそが、夏草の魅力なのかもしれないが。








 

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