日曜の朝
囀りの問ひかけの奥引き込まる
「
鳥の囀る声。
早朝、人間がまだ目覚める前のあるひと時だけ——鳥たちが盛んに囀り、鳴き交わす時間がある。
次第に明るくなる、動き出す生命の気配に満ち溢れた空。
まるで、その大気を吸い込む幸福感を声にせずにはいられないかのように——
そして、自分たちの囀りが作り出す陶酔したような空気を、お互いに確かめ合うかのように。
朝早く目覚め……その囀りの時間に遭遇することが、ごくたまにある。
その声の重なりを聴いているうちに——鳥たちの無数の問いかけの渦の中へ、ふと引き込まれていくような感覚を覚えた。
彼らが本当に幸福感に浸りながら囀っているのかどうかは、わからない。
けれど——そんな新鮮な感動を抱かせてくれるそのひと時に出会えたことに、震えるような幸せを感じずにはいられない。
幼い頃、日曜日はなぜか朝早く目が覚めた。
まだ誰もいないキッチンの、ひんやりと静まった空気。早朝の淡い光。
窓の外で、雀が盛んに囀る声が聞こえる。
時々、車庫で洗車している父を手伝った。
大きなブラシを借りて、ホースから水を流しながらタイヤをこすったり、窓をきれいに拭いたり。
青いバケツの水はいつもすぐに濁るけれど、そのぶん車がピカピカになっていく。そんなささやかなことが、とても気持ちよく、楽しかった。
登校する朝は眠くて仕方ないのに……日曜の朝は、そんな眠気がすっきりとどこかへ行ってしまう。
少し大きくなって——気づけば、日曜の朝に早起きすることはなくなっていた。
母に起こされるまでは、のんびり心置きなく眠る。
時には、起こされても再び布団に潜り込んでしまうことも増えた。
——どうしてなんだろう?
勝手に早く目が覚める自分と、起こされても眠っていたい自分。
それが不思議で——幼い頃と今の自分の「日曜の朝」の違いを、時々なんとなく考えたりした。
そしてある時、ふと思い当たった。
——幼い頃の日曜の朝は、例えば祭りの日の朝のように、嬉しく心浮き立つ時間だったのだろう。
その日一日を自由に過ごせるわくわくするような気持ちが、布団の中で寝させてなんかおかなかったのだ。
そんな喜びが、次第に普通のことになっていく。
日曜は毎週来る。その気持ちが、当たり前になっていく。
起き出して好きなことをして過ごす時間ではなく、布団の中でゆっくり寝る時間を多く持ちたいと思うようになる。
それはつまり——
「幸せ」に感じていた特別なことが、「普通のこと」になり——
心の浮き立つような時間が、ひとつ減ってしまった……
言い換えれば、そういうことだったのかもしれない。
歳を経るほど、「うきうきする、わくわくする」という感情からは、少しずつ遠ざかっていく……そんな気がする。
それはきっと——どんなことも、何度も経験した「普通のこと」になっていくからだ。
それは、未経験という不安感やストレスを減らし、生きることを楽にしてくれるのかもしれない。
けれど——
生き生きと心が動く瞬間が減ってしまうことは、どこか寂しい。
好奇心や活動的な心を刺激する、わくわくするような幸福感。
新鮮な感動を心に絶やさないでいることは、瑞々しい感覚や感性を保ち続けるためには、きっと大切なことだ。
例えば——
上質な本を読む。音楽を聴く。
いい映画や絵画を観る。
興味のあるスポーツや趣味に、新たに挑戦してみる。
自分の心を、積極的に新しいものに触れさせる。
初体験の喜びや感動で、心を刺激する。
自分自身の日々の中で、経験済みの事柄が増えてきたとしても……
瑞々しい感覚を再び呼び覚ますチャンスは、周囲をよく見ればたくさんある。
そんな風に、自分の心をいつもたくさんの感動で満たしてやれたなら——
私たちは、年齢に関わりなく、自分自身の表情を生き生きと輝かせ続けることができるかもしれない。
幼い日の、日曜の朝のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます