風の肌触り

 

 肌撫づる風のいとしき梅雨晴間



 梅雨晴間は、梅雨の合間に半日や一日、または1、2時間晴れること。夏の季語。



 梅雨の晴れ間。厚い雲が切れ、太陽の明るい陽射しと青空がのぞく。草木はそれを迎えるように美しい緑をさざめかせて輝く。同時に、さらさらとした心地よい風が窓から流れ込んでくる。




 ——風が肌を撫ででいく感触を、目を閉じて感じる。

 何の感触に似ているだろう。


 やわらかく、なめらかで、さらりとして……どこまでも優しい。


 この肌触りに近いものは、いくら考えても思い浮かばない。

 ほかの何にも例えることのできない感触。



 でも、その風は、あっという間に通り過ぎていく。

 何のためらいもなく。 


 悲しむ間もなく、またすぐに次の新しい風が訪れる。

 そして、それも一瞬で去っていく。



 決して留まらず。それなのに、絶え間なく肌を撫でる風。


 その優しいものは、追いかけたくても叶わず、指で触れたくてもすり抜ける。

捕まえようと思えば思うほど、その空しさに悲しくなる。



 ——それでも。

 そんな身勝手な望みをすべて捨てれば、風はまた優しく私の周りに寄り添う。




 何も求め合わなくていい。

 ただ静かに感じているだけで、満たされる。



 風とは、なんて愛おしいものだろう。

 








 

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