風の層
秋茜頭上に風の層あまた
秋茜は、集団で飛んでくることが多い気がする。
一匹庭にちらりと見かけて、外に出てみると、何匹もの秋茜がその周辺を飛び回っている風景に出会う。
普段何気なく見上げる空も、そんなふうに小さなトンボの姿が近づいたり遠ざかったりしながら無数に飛んでいると、空という空間の広さが立体的に感じられる。
その飛ぶ姿はまるで、透明で滑らかな風の層の上を滑るようだ。
何のためらいも思い煩いもなく、自分の進む道を軽々と選び取る。
陽射しに羽をきらめかせ、すいと進んでは空中に制止するように——自由自在に、軽やかに空間を移動していく。
そして、空を仰げば、頭上高くにまで散らばる秋茜の姿。
そのどれもが、無数に存在する風の層に乗り、静かに浮いている。
そんな透明な風の層をずっとずっと登って行けば——その空間は、やがて宇宙へと続く。
どんな悩みや苦しみの中にいても——
空を見上げれば、私たちの頭を重苦しく押さえつけるものなど、何一つ存在しない。
晴れれば、遮るものの一切ない、限りなく高く続く空間。
重くたれ込めるように見える雲も、近づけばただの煙の塊に過ぎない。
私たちの頭上は、常に大きく広がっている。
何かに閉じ込められることなどない、どこまでも広い空間に生きているのだ。
苦しくて、息が詰まりそうな時は、外へ出よう。
空を見上げよう。
その広さと奥深さを、心ゆくまで感じよう。
自分を縛る物など、なにもないことがわかる。
自分を縛っているように思える一切の物から、私たちは自由になれる。
——そのことが、はっきりとわかる。
秋の青空高く舞う、どこまでも自由な秋茜のように。
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