良い年を


 去年今年境目といふ白きもの


  

「去年今年」は、新年の季語。

一夜明ければ、昨日は去年であり、今日は今年。たちまちのうちに年が去り、新しい年が来る。時の流れの速さを深く感じる言葉。  




 一年が終わる。



 今年、私にとって最も嬉しい出来事は、この「カクヨム」に出会えたことだ。




 私は、これまでものを書いたことがなかった。


 高校時代、国語の授業の課題だった作文でエッセイ風の作品を書き、それがとても楽しかったことは記憶している。


 以前の勤務先で文書作成能力を買われ、配布用文書の作成をあれこれと上司から依頼されたこともある。



 だが、「自分の作品を一から創作する」という作業は、初めてだった。



 未体験の楽しさと、難しさ。そして、それを誰かに読んでもらえるという、例えようもない喜びと不安。

 ——それこそ眠る間も惜しいほど、私の脳はその行為を楽しんだ。



 そして——ここで得た大きな幸せは、それだけではない。

 ここで出会えたたくさんの人との「心の繋がり」は、私にとってかけがえのない宝物になった。


 顔も知らない。何処に住んでいて、具体的にどんな環境にいる人なのかも知らない。

 ほとんどのことは、わからない。

 それでも——そんな情報は、いらなかった。

 心と心が深く繋がるのに、顔も環境も必要ないのだ——

 そして、心の深い部分で繋がるということは、こんなにも「その人そのもの」を感じるものなのだ。

 これほど不思議で温かい繋がりが存在することを、今まで知らなかった。



 素晴らしい経験。素晴らしい出会い。

 この一年は、私の中で特別な意味を持つ一年だったと思う。

 こうして、自分の何かを大きく変える出来事を用意してくれた自分自身の運に——心から、感謝したい。




 それぞれの人生の中の、この一年間。

 時間に換算すれば——この1年で、新たに8784時間を積み重ねたことになる(今年は閏年だった)。


 いろいろあったような。あっという間だったような。

 その時間を振り返る時の思いは、さまざまだろう。


 だが、それがどんな一年だったとしても——

 その時間は、自分自身のため、そして大切な人たちのために真剣に生きた、かけがえのない8784時間だったはずだ。



 思ったような成果や結果が出なくてもいい。

 苦しみや悲しみの中にいてもいい。

 真剣に、真摯に向き合った時間が積み重なったのならば——きっと、それでいい。




 今年も、あと一日。

 この僅かな時間だけは、心安らかに——この一年間を振り返りたい。

 過ぎていったさまざまなことを、静かに見送りたい。


 まっさらな、新しい一年を迎えるために。




 今年出会えた、たくさんの素晴らしい出来事と、たくさんの大切な人たちへ、心から感謝しつつ。



 ——どうか、来年も良い年でありますように。







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