夏休みの最終日


 食べ物は穴に排気は空に捨て



 本句は、無季俳句(季語を含まない句)である。





本当に大切なことは

いつも面倒くさくて難しい


本当に大切なことに「気づく」のは

もっともっと難しい


テレビや漫画、スマホの動画にどっぷり浸って過ごしたい

いつも気楽に笑っていたい

誰だってそうだ


難しい事など考えるのは面倒

自分が考えなくたって日々は回る

大変なことは多分誰かがうまく回してくれるし

大切なことは多分誰かが解決してくれる



本当に?



誰もが一度は経験したはず

夏休みの終わり、残った宿題に追い回される数日間

甘く見ていたレポートに手間取って、提出期限間際に青ざめる瞬間



面倒なものから目を逸らし続けたツケは、必ず自分自身へ返ってくる。




全く同じことが

今まさに私達の未来を押し潰そうとしている

一切顧みることをしてこなかった、自分達の星への虐待

好きなだけ空へと捨てるCO2

先進国の飽食、途上国の飢餓

未だ反省のかけらすら見えない、裕福な国による貧しい国からの搾取



課題から目を逸らし続けたツケは、やがて容赦なく私達に襲いかかる

地球全体の異常な気温上昇

水や食料を求める人々の反乱や暴動

森を追われた動物たちが人間界に出てきて撒き散らす新たな感染症


真剣に見つめ、改め、今すぐ着手しなければならない課題が、目の前に山となって迫っている

あと少し放置すれば、これらの課題は真っ赤に煮えたぎる溶岩となって私達の頭へ降り注ぎはじめるというのに


残り時間は、あと10年

このまま突き進めば、その先はもうこの溶岩を止める手立てはないという



溶岩が降るように仕組んだのは、誰?

カウントダウンが始まっても尚、私達はまだ毎日気楽なショーを見て笑うだけ?

そして、その溶岩の中を逃げ惑わなければならないのは、誰だと思う?



悲鳴を上げながら逃げ惑い、立ち竦み、頭を抱えてうずくまるのは、私達の子供たち。

その子供らが紡ぐ、新しい命たち。


これから生まれてくる命に、私達は自分達の積み重ねたツケを全部押し付けようとしている。

修復不可能な星で苦しみ喘ぐ運命。

それ以外の選択肢を、私達は今まさに握り潰そうとしている。



それでいいのか。

本当に?




本当に大切なことは

どれも面倒くさくて難しい


けれど

私達は、もう夏休み最終日に来てしまった

宿題を全部放り出したまま



もう逃げられない

私達一人一人が、全く手付かずの課題に本気で向き合わなければならない



考えたい。

何ができるのか。

笑顔で明日を迎えるために。

子供達に、笑顔を約束するために。




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