愛する


 探梅に彼のひとの背を見失ふ



探梅たんばい」は、早咲きの梅を探しながら山野を歩き回ること。

冬の季語。




「愛」というもの。

 不思議なものだ。


 形がない。目に見えない。

 どんなに「愛している」と繰り返し言葉にしても——中身が伴わなければ、そこに愛はない。

 逆に、無理やり言葉を並べなくても——真摯で誠実な愛は、絶えず降り注ぐように相手を幸せにする。


 とても大切で、かけがえのないもの。



 相手への思いを込めた行動や言葉がなければ、そこにあることを確認できない。

 それなのに——欲しがりすぎれば、バランスを失って崩れていく。



 自分自身の欲や利益、幸せばかりを追い求めない。

 自分自身を思うのではなく、相手のことを思う。

 それが、「愛する」ということの意味なのかもしれない。


 大切な人と、愛を交わす。

 そして、お互いを愛し続けるということは——お互いにそんな努力を必要とする、とても難しい作業だ。



 だが——

 どんなに変わりたくなくても、人間の心を永遠に同じ形に留めることはできない。

 少しずつ、形を変えていく。

 自分自身の心も、相手の心も。


 そのまま、お互いを深く見つめ続けることは——時が経つに連れ、一層難しくなる。



 心の形が変わる寂しさを止められないまま——

 人は、常に誰かを愛していたい。

 愛おしいひとの心を、側に感じたい。

 その人の存在が自分に寄り添っていることを、感じていたい。



 人間の心は、そんなふうに、絶えず愛を探す。

 愛したい。そして、愛されたい。——そう思わずにはいられない。




 心の底に湧き続ける、愛を求める感情。


 人間という生き物は——わがままで、寂しがりで。

 困ったものだ。








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