拭えぬかなしみ


果てのなき時雨のすこし明るみぬ



「時雨」は、秋の末から冬の初めにかけて、ぱらぱらと通り雨のように降る雨。冬の季語。




今日は、弱音を吐く。



どうしようもなく、かなしい日がある。


目の前の具体的な悩みや苦労は、何とか乗り越えてやる、という闘志にもつながる。


だが——そんなはっきりとした理由も見つからないまま、心が静かな悲しみに浸ってしまう時がある。



生きていることは、かなしいこと。


認めたくないが——そう認めざるを得ない。


まるでそれが、人間の初期設定でもあるかのように——

心の底をじっと覗き込めば、そこには常に川が流れている。

かなしみという、暗くて深い川が。



そんな川が流れる私達の心だから——私達は、上を向く。

明るい空と日差しを仰ぐ。

いや——仰がなければならない。



でも——

今日のように、空のどこにも光の見つからない日は——


好きなだけ、涙を流そう。

地面に膝をついて、ぼとぼとと涙の雫を落としながら——泣き崩れてしまおう。



耐えてかなしみを膨らませるより、よほどいい。




こんな日は——

思い切り嘆こう。

暗い空と、決してかなしみを拭うことのできないこの心を。




疲れるまで嘆き尽くした後には——きっと少しだけ、力が戻るから。









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