今いる場所で
ふたつほど湯呑しずめて秋の水
秋になると、野外や器の中、台所など、どこに存在する水も、静かに澄み渡る気配を持つ。「秋の水」は、そんな水の様子を表す。秋の季語。
高く澄んだ空や、爽やかな風、穏やかな陽射し。
そんなものを映し込むせいだろうか。
秋の水は、どこに存在するものも、清らかに澄みきって感じられる。
時にどこまでも深く、時に光を反射しながらきらめくように。
当然の話だが——水は、置かれた場所に文句を言わない。
「こんな場所では充分に輝けない!」と、声を荒らげることはない。
それでも、秋の水は、自らの存在する場所で、穏やかに澄んだ美しさを放つ。
どんな場所に置かれていたとしても——それにこだわることなく、自らをひたすら澄み渡らせ、輝かせる。
その周囲までも清め、人の心を惹き付けるほどに。
今いる場所に不満を漏らす。
それは簡単だ。
でも、仮に新たな場所へ移ることができたとして——そこでなら、澄みきった自分が得られるのだろうか?
それは分からない。
自分の今いる場所や置かれた状況に不満を並べても、多分望むものは手に入らない。
そうではなく——
自分の存在する場所で、自分なりに深く澄み渡る。
きっと、それだけでいいのだと思う。
秋の水のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます