毒の甘さ
毒のごと甘き夢去り昼寝覚
時々、午睡で思わぬリアルな夢を見ることがある。
どろどろと粘度の高い、身体に絡み付くような夢だ。
「金縛り」的な状態になりやすいのも、午睡の時だ。特に身体が重たく疲労している場合に起こる気がする。
私のケースは心霊現象などではなく、単に身体の疲労が強すぎて、脳が起きても身体が目覚めきらない状態——そんな感じだ。
目を開けたつもりなのだが、身体が動かない。動かそうと思えば思う程、動かない。
そんな時は、とにかく何とかして、力尽くで実際の目を開ける。——本当の目が開くと、身体がふっと動くようになる。
そんな、粘りつくようなある夏の午睡の中で、夢を見た。
それは——毒のように甘く、決して醒めたくない夢。
手触りが残るような、リアルな質感を持った夢。
醒めたくなくても、時が来れば目は醒める。
そして瞼を開ければ、そこには何もなく——今目の前にあったはずの世界は、現実の自分とは結びつくはずもない一場面だったことを思い知らされる。
指や頬に、こんなにも感触が残っている気がするのに——。
見た夢の甘さをどんなに心に残したくても、その幸福感は瞬く間に遠のいていく。
夢でそんなものを見せられるのは——残酷以外の何ものでもない。
まとわりつくような憂鬱や空しさだけを胸に残していく、夏の午睡。
たまらなく甘美で、できるだけ遠ざけたい。——そんな、毒のような時間だ。
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