第6話 ヘルピーは超有能秘書?

 生活魔法ライト。

 そっと周りを照らすほのかな灯りのはずが、夜間の道路工事現場で活躍する投光器よりも威力がある事に驚きを隠せない。


「ヘルピー」

【どうしました? マスター】

「明るすぎない?」

【魔法はイメージが大切です。どの程度の明るさが必要かしっかりイメージしましょう】


 はい。

 説明書はよく読んで、正しく使用しましょう。


「ヘルピー」

【何ですか?】

「消すときはどうすれば良いのかな?」

【指を曲げれば勝手に消えます。幼児でも知っている事ですが……】


 気のせいかな。

 ヘルピーがジト目で見ている気がする。

 大丈夫。気のせいだ。

 ヘルピーも俺の事をマスターと呼んでいる。

 俺が設定したのだけれど……。


 まあ、気を取り直してもう一度。

 今度は、デスクライトのイメージで。


「ライト」


 よっしゃ!

 イメージ通り。

 俺って魔法の才能あるのじゃ無い?


【猿でも出来ます】


 あれ?

 俺ヘルピーの事呼んでないよ?


 気を取り直して、水を飲もう。

 こちらに来てから半日以上水分補給していない。

 荷物が入った袋からコップを取り出してと……。


 右手の人差し指を伸ばしたままだと目茶苦茶難しい。

 しかも、光源を直接見てしまって目がやられる。


【マスター。魔法はイメージです】


 うん。知っている。

 つい先ほど教えてもらったからね。

 魔法はイメージが大切。


 ライトを任意の場所に固定すれば良いのね。

 イメージを固めて。


「ライト」


 頭上一メートル付近にシーリングライトが出現しましたよ。

 完璧が過ぎる。

 ヤバイ。俺、天才。


【……】


 お願いヘルピーさん。

 ジト目だけは止めてください。

 癖になるじゃ無い。


 気を取り直して水を飲もう。

 コップ八部目まで水を入れるイメージで。


「ウォーター」


 凄い。

 何も入っていなかったコップに水が。


「う、美味い」


 一気に三杯ほど飲み干す。

 駆けつけ三杯は社会人の基本です。

 飲み会に行った記憶は無いけれど。


 人心地ついたところで、能力の詳細を確認しないと。

 その前に、何とか安全を確保したい。


「ねえヘルピー」

【はい。マスター】

「この辺に安全な場所ある?」

【安全のレベルはどの程度をお考えですか?」

「誰にも邪魔されずに熟睡出来る程度の安全」

【ありません】


 そうですよね。


「じゃあ、動物が寄ってこない場所は?」

【魔素供給装置の上ですね】

「落ちたら死ぬじゃん」

【動物は来ません】


 そちらを重要視したのね。

 出来れば俺の生死を重要視して欲しいです。


「結界魔法は?」

【使えます】

「えっと……。使用方法は?」

【魔法はイメージです】


 はい。判りました。

 イメージすれば魔法は使えるのね。

 了解しました。


 結界の範囲をしっかりイメージして。

 ついでに虫も入ってこないように。


「バリア」

 ……。

 …………。

 ………………。


「ヘルピー」

【はい、マスター】

「結界はきちんと出来てるかな?」

【出来ていません】

「何故?」

【魔法はイメージと説明しましたが、ことわりを理解している必要があります。マスターは理を何一つ理解していないのが原因です】


 正しい知識が無いと使えないのね。


「今だと魔法は使えないのね?」

【それは正しくありませんね。生活魔法は誰でも使えますから、生活魔法しか使えないと理解してください】

「他の魔法はどうやったら使えるようになる?」

【魔法学園で勉強するのが一般的です。それ以外の方法は熟練の魔法使いに師事する事でしょうか】


 今の俺だとどちらも無理だな。

 しょうがない。今は諦めよう。


「因みに、ヘルピーは俺に魔法を教える事は出来る?」

【可能です】

「了解。今からは無理だけど、明日からよろしくね」

【畏まりました】


 とりあえず、ご飯食べて寝るか。

 さすがに疲れた。


 しかし、この巨大な世界樹にどうやって登れば良いのか想像が出来ない。

 ツルツルだし、幹は太すぎて、壁と言っても過言では無い。


 木の根元で身を隠せる場所が無いか探したら、六畳程度の空間を見つけられた。

 入ってみると高さもあり、地面もフカフカしていて問題無い。

 そこを今日の寝床にしよう。

 起きてからから他に良い空間が無いか探そう。


「このジャーキー、美味いな。ビールが欲しい」


 早く街に行ってビールを調達しないと。

 まずは能力を確認しないと今後の行動も決まらない。


「ステータス」


 目の前に俺のステータス画面が現れる。


 ****************

 ミッション進捗:0パーセント

 

 名前:カミーユ(佐藤翔太)

 性別:男(精神的性別:男)

 年齢:24歳(35歳)

 国籍:――(自由民)

 人種:ヒューマン

 職業:女神クレティアの使徒

    世界樹の管理者

 従者:――


 身体能力:超越者

 魔法能力:超越者

 ****************


 成る程……。

 ゲームやラノベで出てくるステータス画面と比較すると、圧倒的に情報量が少なすぎる。

 チート級の能力がある事だけは判るが、あまりにも不親切。


「ヘルピー」

【はい、マスター】

「情報はこれだけ?」

【詳細は、私が口頭でお伝えするようになっています。必要なら質問してください】


 俺が頑張った時間は一体何だったんだ。

 しかし、説明を文章で表示させた方が良い事もある。

 出来れば紙ベースの方が好きなのだが、贅沢は言っていられない。


 気になる事をヘルピーにどんどん聞いていこう。


「ねえ、ヘルピー」

【はい、マスター】

「俺に与えられたミッションって何?」

【女神クレティア様を最高神に昇格させる事です】

「信仰心を向上させれば良いのね」

【それ以外にも魔素供給装置の維持管理、七つの試練を乗り越える必要があります】


 試練とか使徒っぽいね。


「魔素供給装置の維持管理は、世界樹の健康管理をしておけばいいのかな?」

【概ねその認識で問題ありません】


 俺はベランダで薔薇を育てていたからね。植物管理の知識は持っている。

 この条件は大丈夫そうだな。


「七つの試練の内容は?」

【内容は不明ですが、創造と終焉の神サイナス様が決められ変更出来ないように登録されています。一度の失敗も許されない強制クエストですね】

「もし、失敗すると?」

【その場合、女神クレティア様とマスターは、物理的にも精神的にも永遠に苦痛を与え続けられれます】

「俺のメリットが見当たらないんだけど」

【そんなことありませんよ。マスターがミッションを達成した場合、マスターも最高神へとなり、クレティア様の伴侶となります】


 クレティアと伴侶となる。つまりは結婚。

 それに文句は無い。

 何せ超絶美人でスタイルも抜群だからね。


 問題はそこでは無い。

 

「俺の行動はクレティアにバレる?」

【筒抜けですね。私がクレティア様に、日報、週報、月報、それから、年次報告を行いますので。場合によっては緊急報告も致します】      

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