第36話 ファンタジー装置発見
レオニラン公国国王から非常に短い伝言を受け取った。
俺では判断出来ないので、サクラに判断を任せよう。
サクラを見やると思案顔だ。
「サクラ。俺はこれで構わないぞ。目的は新婚旅行と買い出しだからな。別にこの国を滅ぼしたい訳じゃ無いからな」
「それもそうね。確認事項と詳細の打ち合わせは私に任せて貰っても良いかしら?」
「勿論だよ。サクラが納得して新婚旅行を楽しめれば俺は何も言う事は無い」
そう。忘れかけていたけれど、新婚旅行中なのよ。
エデンに足りない物もこの街で可能な限り仕入れたい。
エデンにあるのは森だけだからな。
「レオニラン公国国王からの謝罪と歓迎を受け取ります」
俺は、国王の名代であるザクスさんに回答した。
外務大臣と国防大臣は心底安堵した表情を見せていた。
「では、詳細について確認しましょう。誰と話をすれば良いの?」
早速サクラが交渉に入る。
良い条件を引き出すために、熊どん達の力も借りておこう。
熊どん達に向かって、こっそり手招きしておいた。
「では、私アリスティド・ブリス・アンゴが……」
「お手柔らかにねアリスティドさん」
おお~。
サクラが自分の魅力を前面に押し出しながら微笑みかける。
ほら。アリスティドさんの目が泳いでいるよ。
交渉はサクラに任せたから、俺も何か出来る事は無いかな。
国王は『友好の証し』と言っていた。
それがたとえ強がりであろうともその言葉を受け取ったからには、俺からも友好の証しを送ろう。
「難しい話は二人に任せて、俺達も両国の友好の証しとして話をしよう。国防大臣も騎士団の副団長もいる事だし、貴国の国防に関する大切な情報を伝えておこう」
ザクスさんと国防大臣のヨーナスさんを近くに招いた。
「先ず、あの城壁だが、魔獣に対しては無意味だ。熊どんちょっとこっちに来てくれ」
俺に呼ばれて嬉しいのか、熊どんが走り寄ってくる。
二人は腰を抜かして動けない。
「城壁の高さだが、低すぎるな。簡単に乗り越えられるし、容易に破壊も出来る。熊どんを見てみろ。この巨体だ。判るだろ?」
ガクガクと首を縦に振る。
こんなにも人懐っこい熊どんを見て、そんなに怯えないで欲しい。
「因みにエデン森の木は、あの城壁くらいの太さがある。熊どんなら一撃だ。俺も生活魔法で伐採出来るぞ。厚みを増すか、更に高くするか検討した方が良いと思うぞ」
熊どんが自慢の爪を見せる。
「此処に来る途中で俺が狩ってきた鹿の魔獣がエデンの森の最小サイズと思って対策をしたら良い。土魔法の熟練者であれば造作も無い事だろう?」
「きっ、きっ、貴重なアドバイス……。かっ、かたじけない」
ザクスさんは頑張って声をひねり出した。
ご褒美に熊どんをモフらせてあげよう。
「ザクスさん。熊どんをモフっていて良いぞ。毛並みは柔らかで最高のモフり心地だ」
熊どんはザクスさんに頭をこすりつけながら、じゃれている。
ザクスさんは死にそうな顔をしているが、頑張ってモフっている。
「ヨーナスさんは、騎士団の指導を厳しくした方が良いな。あの騎士団長の対応はあまりにも酷かった。因みに未だに俺達のドッグタグは貴国から確認されていない。基本を大事にしないと、今後も同じ問題が起きるぞ」
「本当に申し訳ない。彼も真面目で優秀なのだが、少し前に森が光に包まれた時から、かなり神経質になっていたところに、森から人が歩いてきたのだ。しかも、姫巫女様と瓜二つの女性が。済まない。こちらの事情は貴殿に関係ないな」
「それでも、基本動作が出来ていれば、此処まで大事にならなかったはずだからな。この事を教訓にすれば良いだけだろ?」
「左様ですな。誠にありがとうございます」
そんな話をしていると、サクラとアリスティドさんの話も纏まった様だ。
「カミーユお待たせ」
「大丈夫だぞ。俺達も有意義な話をしていたところだ。見てみろよ。熊どんとザクスさんは仲良しになったぞ」
ザクスさんは恐る恐るだが熊どんをモフっている。
「ザクスさん涙目じゃない」
違うぞサクラ。
ザクスさんは熊どんの素晴らしい毛並みに感動しているだけだ。
「ようやく入国出来るんだろ? 歩きながら決定した事を教えてくれ」
「そうね。折角の新婚旅行だから思いっきり楽しめるように頑張ったから、後から褒めてね」
人目も憚らずイチャイチャしてしまうのは悪い癖だな。
サクラに確認したら、今回の条件はこんな感じだった。
・入国税免除。
・宿泊施設はレオニラン公国が手配する。
・宿泊費及び国内の買い物はレオニラン公国が負担する。
・何を購入したのか等の確認と護衛のために一名騎士を派遣する。
お金は出すから無茶をしないでねって事か。
問題無い。
むしろウェルカム。
「流石サクラだな。俺なら此処までの条件は無理だったと思う。世界一の妻だ」
「はい。ハイエルフですから」
今夜もカロリーバーが必要かも知れない。
「では、こちらに。入国税は免除されますが、それ以外の入国手続きは行っていただきます。これは、どの国の王族であろうとも必ず行っている、世界共通の手続きですのでご容赦を」
「俺は初めて他国に入るのだが、具体的に何をするんだ?」
「あの水晶みたいなのが、魔力測定装置ね。魔力には個人個人波長が違うから、登録するのよ。もし何か事件があった場合、現場に残されている魔素の波長を特定して誰の魔力かを照合するのに使うのよ」
「おお~。本当にこんな装置があるんだな。凄いな」
指紋の登録みたいな感じか。
ラノベで出てくるファンタジーな装置を実際目にすると感動するな。
もしかしたら魔道具もあるかも知れない。
買い物が楽しみだ。
「二つあるんだな。微妙に違う気がするが、気のせいか?」
【マスター。一つは鑑定の水晶です。あれに触れればマスターとサクラの全能力が丸裸です。サクラの過去もバレますね】
それは穏やかでは無いな。
俺の能力は見られても問題無い。
人外の能力はクレティアの使徒として活用出来るし、クレティアへの信仰心向上にも役立つと思うからね。
「片方は能力鑑定の水晶だと思うわよ。他国の要人に使用されたという話は聞いたことが無いけれど……」
サクラとヘルピーの見解が一致した。
能力鑑定の水晶で間違いないようだ。
【マスターの魔力を大量に流し込めば簡単に破壊できます。貴重なアイテムを破壊され絶望する顔を見るのも良いものです。一緒に昂ぶりましょう】
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