第62話 サクラの進化 ユニコーンを添えて

 力業によって出来上がったクレティアをイメージした薔薇『女神の微笑み』をサクラと観察しながら、使徒として与えられた肉体が人外である事を改めて思った。

 石の投擲で魔獣を狩れるし、迎賓館をあっという間に造り上げる魔力もある。

 エルトガドへ転生? 転移? してきた時に確認したステータスがシンプルなのも頷ける。


(そう言えばステータスは一度確認してから全く見ていなかったな)


 ふと思い出し、改めてステータスを確認してみる事にする。


 ****************

 ミッション進捗:十一パーセント

 達成ミッション数:一/七

  ・武力行使をせずに一つ以上の国を従える

 

 名前:カミーユ・ファス・ドゥラ・エデン

 性別:男(精神的性別:男)

 年齢:永遠の二十四歳

 国籍:エデン

 人種:ヒューマン?

 職業:女神クレティアの使徒

    世界樹の管理者

    エデン国王

    従者:――


 身体能力:超越者

 魔法能力:超越者

 ****************


 人種が気になるが十一パーセント神に近づいているのでと納得しておこう。

 それと俺は歳をとらないらしい。永遠の二十四歳だから……。

 それ以外にネタ的な項目が無くてホッとした。

 ヘルピーがだから、もしかしたらな項目があるかと思ったが心配しすぎだったようだ。


 レオニラン公国に行った時に周りに流されず平和に? 問題解決した事は良かったようだ。

 しかし、最高神からのミッションは七つあるので、ミッションを一つ達成しているのに、進捗率が十一パーセントというのが判らない。

 ミッションの難易度によって変化があるのか、クレティアから追加依頼をされたからなのか……。


 その辺はヘルピーも判らないらしいので、クレティアへの報告時に確認して貰おう。

 ミッションに付いても事前に判るようにして欲しいが、それは以前無理だと言っていた。

 最高神が好きな物を色々と渡してみるのもありかも知れないが……。人として良くない事だな。

 

 真面目にコツコツとが俺のモットーだ。

 時間はたっぷりある。焦る必要は無いだろう。


「どうしたのカミーユ」

「ああ。使徒の能力の一つとして自分のステータスが見れるんだよ。今確認していたところだ」

「それは興味があるわね。私には見れないの?」

「今ステータスを表示しているんだが、サクラに見えないのであれば俺にしか見られないのだろう」

「そう……。残念ね」

「サクラもその内誰かから祝福か加護を貰えるんだから、その時にお願いしてみてはどうだ?」

「うーん。考えておくわ」


 そこまで乗り気では無い様子だから、サクラは他にも欲しい能力やスキルがあるのだろう。

 俺に被害が及ばない能力にして欲しい。


 取りあえずステータス確認も終わったし、クレティアからの依頼に取りかからなくては。

 世界各地にある教会を回って女神像を置き換えなければならないから、かなりの長旅となるだろう。

 その間特産品の供給をどうするかが一番の問題だ。

 それ以外にも孤児院や学校の件もあるし、留守の間エデンの森の大神殿や俺達の家を綺麗に保つ必要もある。

 薔薇の経過観察も必要だし、やらなければならない事は多い。


 総合ギルドと綿密な打ち合わせが必要だな。

 今回の旅には可能であればアリーゼさんにも同行して欲しいと思っているから。

 彼女とサクラがいれば大抵の事は何とかなる気がする。

 俺はエルトガドの常識が無いから交渉事とかは戦力外だからな。


「サクラ。エルトガドには神獣っているのか?」

「勿論よ。と言っても、教会の神話やお伽噺の話ね。クレティア様がユニコーンに乗って世界各地を訪問した……。とかね」

「ユニコーンか……。頭に一本の角を生やして空を飛ぶ白馬の事か?」

「えっ? 知ってるの?」


 どうやら当たりらしい。

 ユニコーンは地球でもエルトガドでも同じ容姿をしているようだ。

 どちらの世界でも空想の生き物だけれど……。


「ああ。地球にもユニコーンが登場するお伽噺や神話はあったぞ。人間の想像力の限界を感じるな」

「でも……。全く違う世界に生きていて、カミーユと同じ想像をしていたと思うと嬉しいわ」


 何故か顔を赤らめ遠くを見つめているサクラは美しいが、俺の本能が話題を変えろと警告してくる。


「熊どんにでも聞いてみるか。もしかしたらエデンの森にいるかも知れないぞ?」

「そうね。此処はエデンだものね」


 サクラの『ハイエルフですから』バリのパワーワードになりそうな言葉が出てきた。

 その内『此処はエデンですから』で全てが解決しそうな気がする。


「でも、どうして神獣の事を聞いてきたの?」

「神獣を従えていれば使徒っぽいだろ? 格好いいし」

「ふふふ。まるで子供みたいね。そんなカミーユの事も好きよ」


 話題変更に失敗したようです。

 むしろより危機的状況? になってしまったようです。

 真っ昼間の屋外で何かが始まる気配が……。


「取りあえず熊どんにユニコーンがいたら連れてきて貰うようにお願いしよう」


 話題と行動を変えなければならない。

 旅行準備で忙しいのだ。やる事はいくらでもある。



 ――

 夕焼けに染まる綺麗な空を見ながら、俺とサクラはエリクサー風呂に入っていた。

 

 俺に拒否権は無かった……。

 

 此処がエデンの森で人がいなかった事がせめてもの救いだ。

 魔獣達は興味津々と言った感じで覗き見していたが……。

 流石に艶めかしい声(激流に飲み込まれるのを必死に耐える誰かの声を含む)が森中に響き渡れば魔獣達も駆けつけてくるだろう。


 サクラは更に進化していた。

 昨晩ベッドルームで嗅いだ艶めかしい香りを、身体から発していたのだ。

 進化の方向性が斜め上だが……。


 何故エリクサー風呂に入っているかって?

『ブラックハイヒール』が何故か絡みついてきたり、花弁が飛んできたりと大変だったのだ。

 ヘルピーの執念を感じるが、ヘルピーも斜め上に進化しているようだ。


 二人とも傷だらけの状態でも励んでいたので俺の中で何かの扉が開いた気もしたが、扉はそっと閉じておいた。


 激闘の傷を癒やしているところに熊どんがやってきた。

 ユニコーンを三十頭ほど引き連れて……。

 これだけの数がいればありがたみが無い。


 ユニコーンって実在したんだ! と感動したかった。

 

【マスター。ユニコーンはこの森にかなりの数が生息しています。これで空を移動出来ますね。空飛ぶベッドで……。これは神界に至急報告しなければなりません。流石マスターです。神々を飽きさせませんね】 

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