第107話 ハイエルフは神をも超える
「「「ヘルピー(様)!」」」
三人の声がピタリと揃った。
「えっ?」
当の本人は何故突っ込まれたのか全く判らないと本当に思っているのだろう。
ただただ驚いた表情をしている。
「俺の特殊能力はヘルピーがサイナス様にお願いしたのか?」
「確かに私はカミーユにあらゆる技を取得してほしいと思っていますが、流石に……」
「私はそんなカミーユでも愛せますが……」
サクラの言葉が微妙にずれているが、一旦置いておこう。
「こっ、これはクレティア様のために必ず役に立つと確信しておりますので。万年拗らせ女神のクレティア様はマスターに普通に愛されるだけで満足ですか?」
「とっ、当然でしょ!」
「本当にそうでしょうか? 今まで様々な世界で億万通りの愛を見てきたクレティア様が……。見るだけで無く脳内で拗らせに拗らせまくったクレティア様を今のマスターで満たせるでしょうか? 答えは否です! しかし、この特殊能力があれば、クレティア様が求める以上の結果が必ず得られます!」
「カミーユ! ヘルピーに感謝して励みなさい。サクラ。貴女も今まで以上にカミーユを愛しなさい」
「「……」」
俺もサクラもドン引きだよ。
神々しさをこんな場面で発揮しないでほしい。
あまりにも神々しくて思わず跪きたくなってしまう。
内容がアレなので跪かなかった俺を褒めてあげたい。
「サクラ……。何か申し訳ない……」
「だっ、大丈夫よ。全く問題無いわ……」
一応俺が確認したい事は終わった。
疲れたから早く帰ってゆっくり寝たい。
「サクラは何か確認しておきたい事は無いのか? 次いつ会えるのか判らないぞ?」
「確認したい事と言うか、お願いですね」
「あら。私に出来る事なら問題無いわよ?」
先程まで取り乱していたクレティアが何も無かったかのように受け答えする。
「今回の神々からの祝福や加護は、クレティア様が許可していない神々も勝手に祝福や加護を与えたのですよね?」
「そうなのよ。一部暴走した神達が許可無く……」
「そして、サイナス様はヘルピー様の直談判に応じた……。クレティア様への確認を経ずに……」
「そうね。まさかサイナス様まで神界のルールを無視する……。まぁ、サイナス様がこの神界のルールと言えばルールだから……」
「今まで今回のような事例はありますか?」
「いいえ。ありません」
成る程と頷きながらサクラが何事か考えている。
「では、クレティア様とヘルピー様にご提案です」
「「何(かしら)?」」
「先ずヘルピー様は、今回の件で私達が大変な事態に陥ったので、使徒の監視とサポートに専念し、創作活動が出来なくなったと発表して下さい」
「そんな事すれば、神界は大混乱よ」
「大いに混乱して下さい。ルールを守れない神々が悪いのです」
自分もルールを無視したヘルピーは何も言えず黙ってしまった。
「クレティア様は神界にメッセージを発して下さい」
「前例が無いわね」
「今回の件も前例がありませんよね?」
事実を指摘されクレティアも押し黙る。
「クレティア様は思慮深く我欲に囚われない女神様ですので、クエストに影響の無い範囲で祝福や加護を選定したと思います。しかし、一部の神々の暴走により、クエストの難易度が変わり、クレティア様とカミーユは永遠の地獄が目前に迫っている。こんな事が許されて良いのでしょうか?」
「ですので、クレティア様のメッセージは神界の秩序と神々に
「私が断罪するのでは無く、メッセージを受け取った神々が声を上げるように……、と言う事ね?」
「流石クレティア様です。私が考える浅知恵などお見通しですね」
流石サクラだ。
クレティアとヘルピーを手玉に取っている。
ハイエルフは神をも超えるな。
「判ったわ。神界の常識と言うか、サイナス様に異を唱えてはいけないと錯覚していたわ。サクラに感謝を」
「私も少し調子に乗りすぎていたわね。カミーユもサクラもごめんなさいね。最良の結果を得るためにしっかりと動くわ」
「神界の事を何も知らない単なるエルフの言葉に耳を傾けていただけるお二人こそ素晴らしいと感じます。お二人に尊敬と感謝を」
俺以外の三人の心が一つになった。
俺は……、俺の出来る事を一生懸命コツコツとして行く事しか出来ない。
「私達の目的はクエストを達成する事。実際にエルトガドで行動するのはカミーユとサクラ。ヘルピーは今まで以上に二人のサポートをお願いね。私はクエストが達成出来るように神界でサポートするわ」
クレティアが纏め皆の意識を統一する。
完全に心が一つになった気がする。
此処にいるメンバーは四人だが、エルトガドには沢山の仲間がいる。
絶対にクエストを達成し皆で幸せになる。
可能であればエルトガドに住む皆が幸せに暮らせる世界を。
「未来を見据え、目の前の事を、やるべき事、やらなければいけない事を真剣にコツコツと行動しよう。俺は使徒として、皆の夫として、皆の名に恥じない行動をして行く」
「期待しているわよカミーユ」
「マスター。私達もサポートします。一人で抱え込まないで下さい」
「これからが本当のスタートね。皆で成し遂げましょう」
――
気がつくとベッドルームに戻ってきていた。
色々あったが、終わり良ければ全て良しだな。
今の俺なら何でも出来る気がする。
サクラは初めてのクレティアホテルで疲れもあるのだろう。
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。
特殊能力を授かり、ほぼ魔王になってしまったが、クレティアが何とかしてくれるだろう。
熊どんとシードルを眷属にしてこの後の行動をサクラも交えて話し合おう。
【マスター。神界で色々と動きますが、マスターは現状エロ魔王極状態です。エロ魔王極の認識と誇りを持って行動して下さい】
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