第52話 キラキラ演出 第二形態

「では、公国の諸君。エリクサーがどういう物かその目で確かめられよ」


 ゆっくりと室内を見渡し、受け取ったエリクサーを一気に煽った。


 液体が喉を通り胃に落ちていく。

 体内に入ったエリクサーが身体に染み渡っていく感覚がする。

 自分以外の魔素が身体の中を駆け巡っているような不思議な感覚だ。


 直後、俺の身体からは金色の光が溢れ身体を覆っていく。


 団長さんに開けられた胸の穴や、サクラに切り飛ばされた腕の傷がむず痒い。

 チラリと腕を見ると、金色の粒子が腕の形を作り、組織が再構築されて言っている。


(流石ファンタジーだ。ラノベやアニメと同じだな)


 一人感慨に耽っていると身体の発光が次第に弱まっていく。

 腕は完全に元通りになっており、胸の穴も塞がっている。


「これがエリクサーだ」


 エフセイ国王に向かってそう告げた。

 時間が止まっているかのように会場は静寂に包まれている。


「カミーユ。血を流したんだからカロリーバーも一応食べておいて」


 そんな中サクラだけは平常運転をしていた。

 ビシッと決まったのに気が抜ける。


「エフセイ国王。これでエリクサーが本物と言う事が判っただろ?」

「しっ、信じられん……。信じられんが目の前で起きた事は紛れもない事実だ……。正に神の御業としか……」


 目の前で起きた光景が信じられないのだろう。

 情報量が多すぎる事は否めないが……。


「そう。エリクサーは神の御業で造られたと言っても過言では無い。世界樹と女神クレティアの使徒である俺の魔力が無ければ作る事は出来ないのだから」


「エフセイ国王。エリクサーが本物であると認め、土地の提供と教会、孤児院、学校の建設と運営をエデンが行う事をクレティア像に誓って貰おうか」

「あ、あぁ。勿論だ……」


「では、エデンからは俺とサクラ。公国からは国王と第一王子、両妃がクレティア像の前に。立会人としてアンジェラ支部長。進行はシスター・エレオノール。それから、迎賓館にいる全員見学して貰って良いぞ」


 この部屋にいた騎士やメイド達が走り回り、迎賓館にいる全員を呼びに行く。

 その間にエフセイ国王達に誓いの内容と儀式? の手順をレクチャーしていく。


「それでは全員揃ったようですので、これよりレオニラン公国とエデンとの約定を女神クレティア様に誓います」


 シスター・エレオノールが進行と説明をしてくれる。

 この部屋にいなかった者は何が何だか判らないからな。


 儀式? に参加するメンバーはクレティア像の前で皆跪いている。


「レオニラン公国エフセイ・ドゥラ・レオニラン並びにその一族よ。レオニラン公国はエデンに対し迎賓館並びに教会、孤児院、学校及びその他必要施設のためにエデンに土地を提供する事並びに現在の教会との約定を取り下げ、新たに約定を結ぶ事を、女神クレティアに誓いますか?」

「はい。誓います」


 エフセイ国王が代表してシスター・エレオノールの言葉を肯定する。


「エデン国国王、女神クレティアの使徒カミーユ・ファス・ドゥラ・エデン並びにその一族よ。エデンはレオニラン公国より提供された土地に迎賓館並びに教会、孤児院、学校及びその他必要施設を建築並びに経営を行う事、土地の提供に対しレオニラン公国にエリクサー三本を提供し、レオニラン公国を死の森の魔獣から守る事を女神クレティアに誓いますか?」

「エデン国王として、又、女神クレティア様の使徒として、女神クレティアに誓います」


 国王としても個人としても約束は守ると約束しよう。


「では立会人である総合ギルドレオニラン公国支部支部長アンジェラ・デイビーズ」

「私アンジェラ・デイビーズはレオニラン公国とエデン国の間に確かに約定が交わされた事を立会人として見届けた事を女神クレティア様へご報告いたします」


「私女神クレティア様の信徒であるエレオノールはアンジェラ・デイビーズの立ち会いの下、レオニラン公国とエデンとの約定が成立した事を宣誓いたします」


 シスター・エレオノールが宣誓すると同時にクレティア像から金色の粒子が溢れだし、俺達に振り注いだ。

 いつものキラキラ演出と思ったが、碧く輝く炎が舞っている。

 クレティアの瞳と同じように透き通るように輝く炎だ。


 碧く輝く炎は俺とサクラ、エフセイ国王とウォーレス第一王子に両妃、アンジェラ支部長の胸に吸い込まれていった。


(ヘルピーこれは?)

【女神への誓いの証しです。誓いを破ると神罰が下ります。誓いを破った者が一番嫌な事が起こります】

(クレティア像の前で誓いを立てればこうなるのか?)

【いいえ。現在はマスターとサクラ、アンジェラとエレオノールの四名が像の前で宣誓する事にによって女神への誓いとなります】


 要は使徒である俺とクレティアから祝福を受けた者が宣誓する事が女神への誓いを行えると言う事か。


 エフセイ国王や王家一族は何が起こったのか判らないのか、あまりに美しい光景に現実を忘れているのか呆けている。

 この誓いを見物している者達も皆一様に口をポカンと開けて今起きた事が現実なのか夢なのか判らないでいるようだ。


「エフセイ国王。レオニラン公国とエデンの約定は女神クレティアへの誓いとして認められた」


 キラキラ演出が何であったのか説明する。


「皆も見ていただろうが、碧く輝く光が俺達の身体に入った。これは女神クレティアが双方の誓いを認めた証しであり、誓いを破ったときの戒めだ。もし誓いを破ったときは女神クレティアから罰が下る事になる」


「こ、これは現実なのか? 本当に女神は実在したのか……」


 あくまでも、女神クレティアは神話やお伽噺で登場する空想の神であり、治癒魔法が使えるエルフが信仰しているのでクレティアや教会の存在を認めてに過ぎない。

 自分達が認めていない女神が奇跡を起こしたのだ。

 混乱もするだろう。


「何度も言うが、女神クレティアはこのエルトガドを管理している。俺は女神クレティアの使徒である。別にクレティアだけを信仰しろとは言わないし、改宗しろとは言わない。しかし、今こうして生きていられるのはクレティアのおかげである事を忘れないようにして欲しいし、是非とも日々クレティアに感謝の言葉を捧げて欲しい」


 しっかりとクレティアの宣伝もしておいた。


【マスター。今回の件はエルトガドに来て初の快挙です。ようやく使徒としての活動報告が出来ます。後でをあげます】 

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