第139話 正義の鉄槌を!
「カミーユ様。サクラ様。お帰りなさいませ」
帝国が準備した馬車が総合ギルド総本部に到着した。
俺が先に降りて、サクラをエスコートする。
「ティボール総本部長と話したい。アポイントを頼む。俺とサクラは部屋で待機する」
「
帝城でのやり取りは、決着が決闘となった事以外は概ね俺とサクラの思惑通りに進んだと言って良いだろう。
先ずは一勝。
三大国の意見を覆した結果を見れば、この一勝は世界に衝撃を与える大勝利と言って良いだろう。
サクラの生まれ故郷であるエルフ自治領を表舞台から引きずり下ろす事にも成功した。
部屋付のメイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みながらサクラと二人で反省会を行いながら、今後について軽く打ち合わせをする。
ゆったりとした時間を過ごしていた。
思えば二人でゆっくりと話す事も久しぶりのような気がする。
サクラも同じ気持ちのようで、お互い求め合うような視線を絡め合っていたところでドアがノックされた。
「誰だ」
「ティボールでございます。お二人が私に話が有りるとの事で罷り越しました」
「許可する。入れ」
ティボール総本部長と秘書と思われるお付きの女性が入室してきた。
「そんなに急いで来なくても良かったのよ?」
若干不服そうにサクラが嫌みを言う。
総本部長にしたら寝耳に水。
正にとばっちりである。
「本日の帝城の件と思いましたので、急ぎ
「いやいや。アポイント無しなのに早急に対応頂いて感謝する。単なる八つ当たりだろうから気にしないでくれ」
「八つ当たり?」
「詳細はメイドさんに聞いてくれれば判る」
顔を赤らめ若干汗ばんでいるメイドさんを見て総本部長は何かを察したようだ。
「……。やはり出直しましょうか?」
「本当に問題無い。今夜は少し騒がしくなるかも知れないが、気にしないでくれ」
「まぁ、お二人が一緒にいて騒がしく無い夜は無いと旧公国時代から報告は上がっておりましたので、お気になさらず。仕事が無いのに残業をしたがる職員が増える程度でございますので、実害はございませんよ」
「今日からは防音の結界を張ろうかしら」
「セキュリティーの問題もございますので、防音の結界はご勘弁を……」
総合ギルドの職員さんも色々と捗っているようなので良しとしよう。
人に見られている、聞かれていると思うだけで……。
否。違う。
俺はいたってノーマルだ。
「先程総本部長が言っていた通り、帝城での口喧嘩の内容と決定事項、今後について情報共有と対策を話し合いたい」
「と言う事は、帝国が一度出した条件を取り下げたのですな?」
「取り下げたと言うか、意見の相違が大きくお互い妥協できないので、決闘で白黒付ける事になったのよ」
「決闘……、ですか……」
総本部長は決闘という言葉を受け、何かを考えているが、決闘に至る経緯を丁寧に説明する。
「成る程……。エルフの森を治めるムルドラン自治領から教会を切り離し、エデンが教会を管理する事になり、ムルドラン自治領を表舞台から引きずり下ろしたのはエデンにとっても、エルフにとっても良い事ですな。現領主派は心からエルフの解放、自立を目指していないようですからな」
サクラの父親が発狂し退場させられたと知り、総本部長が一つ感想を述べる。
やはり現領主は第三者の目から見ても良い印象は無いようだ。
その後も帝城での口喧嘩の内容を説明していく。
「ドノヴァン帝国のジェイコブ陛下は傑物ですな。武勇は勿論の事、自分の信じる道、正しき道を進まれる方と聞いておりましたが、その通りの人物のようです。我々ギルドで帝国と言えばライオネル帝国ですが、真の皇帝と言えばジェイコブ陛下の名が上がる事にも納得です。カミーユ様もサクラ様も、ジェイコブ陛下とは信で繋がる関係が構築できればエデンも益々安泰かと」
やはりジェイコブ陛下の評価は各ギルド長からも高いらしい。
各国が集まる帝城の中で、あれだけ自分の意志を伝えられていたのは彼だけだ。
「肝心の決闘に付いてはどのように決定したのですか?」
これが一番重要だろう。
各ギルドの今後の動きが変わってくるのだから。
「決闘は武闘祭メインイベントを中止し、メインイベント予定日の正午から行われる。場所は帝都とエデンの森の間の大草原。審判はドノヴァン帝国ジェイコブ陛下。見届け人として各ギルド長。観客席も設ける」
メインイベントを中止するのはライオネル帝国ハリスン陛下から提案が有りりそれを了承した。
恐らくメインイベントに参加予定の猛者を俺達と戦わせる腹づもりだろう。
褒美はエリクサーや死の森探索許可など様々な物が考えられる。
奴らは俺達の財産を奪い取ったと思い込んでいるからな。
取らぬ狸の皮算用だな。
「メインイベントを中止して決闘ですか……。かなり大規模な決闘ですな」
「恐らくドノヴァン帝国以外の騎士団やメインイベント参加予定者を取り込むつもりだろう」
「エデンからは誰が?」
「俺一人で十分だろう。サクラは取り決めにより参加できない」
「カミーユ様お一人で?」
「あぁ。全く問題無い。魔法を含め何でも有りの決闘だからな。俺有利のルールだ」
「……」
ドノヴァン帝国以外の国と戦うのに俺一人で十分と自信満々に宣言する俺に絶句している。
普通ならそうだろうが、無尽蔵の魔力が有りる俺にとっては、魔法有りと決まった事でで勝ちが確定している。
「双方何を差し出すかだが、エデンが負ければエデンの全てを差し出す。エデンが勝てば、教会とエデン製品の免税だ。センドラド王国に対しては、魔素の供給を止める。ドノヴァン帝国に対しては何もしない」
「免税ですか……。今はカロリーバーとポーションがメインですが、今後エデンが生み出す商品が増える事を考えるとジワリジワリと効いてくるでしょうね。税金分の上乗せが無くなればエデン産の製品は更に競争力が増しますし……。恐ろしいですな」
「褒め言葉として受け取ろう。総本部長には免税の事について各ギルドへの伝達と今後の対策。それから、センドラド王国に対する魔素供給の停止にていて王国民へ周知して欲しい。王国に残るも良し、他国へ移住するも良し。エデンで受け入れるのは難しいがな」
「市民が苦しむのは私達も嫌だけれど、全てを受け入れるほど優しくは無いのよ」
「畏まりました。では、急ぎ各ギルド長へ連絡し対応したいと存じます」
総本部長は一礼し慌ただしく部屋を後にした。
【マスター。決闘で正義の鉄槌を! 先ずは見られる喜びを全身で感じる事が正義(性技)の為に必要です……。ねぇ?】
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