第55話 異世界に日本の観光地を造ろう計画

 教会や孤児院、学校を造る目的を改めて確認し、俺の考えも踏まえた上でもう一度考えて貰う事にした。

 孤児達はあっという間に迎賓館という遊び場に慣れ、元気に遊び回っている。


 熊どん達にはエデンの森から出てくる魔獣の対応をして貰うようにお願いして、数頭の魔獣が交代で警備してくれるようになった。

 その辺は熊どんがリーダーシップを発揮して魔獣達に指示を出していたようだ。


 熊どんの能力が地球での俺の能力より高い気がするが……。

 まあ、気のせいだろう。

 俺は仕事が出来る子だからな。


 俺とサクラはアリーゼさんと公国との契約条件について打ち合わせを行ったが、基本的にはアリーゼさんにお任せする事にしている。

 彼女ならエデンに最大限の利益をもたらしてくれると確信している。


 団長さんが仕出かした『他国の国王殺害未遂』についての保証? お詫び? は公国次第だが、俺としては教会と孤児院、学校の建築費用の全額負担程度で良いと思っている。


「カミーユ。それは少し甘すぎじゃないかしら? エデンという国と女神クレティア様があなどられる恐れがあるわ。和睦条件は私に一任してくれないかしら」


 事の発端はエリクサーの真贋を疑った事なので、サクラとしては思うところがあるようだ。

 実際にこの騒動で血を流したのは俺なのだが、エルトガドの常識が無いと言うか、国同士の争いの条件? 条約? 的な内容なんて判らないから任せる事にした。


「可能な限りクレティアへの信仰心向上に役立つ条件も盛り込んでおいてくれ」


 俺からの注文はこれくらいだ。


 その後も、俺達が世界樹に帰った後の連絡手段や、物資輸送手段等を協議した。

 結果、森の魔獣達による週に一度の定期便を運用する事にした。


 二日ほど会議や打ち合わせをする日が続いた。


 教会や孤児院、学校は規模を大きくせずに造る事にした。

 規模は大きくないが、エデンらしいと言うかクレティアらしい建物にと皆からの要望があった。


 ヘルピーにお願いしてクレティアに確認したが、『カミーユに任せる。それよりも早くミッション終わらせて』との事であった。

 ヘルピーの報告書で色々と拗らせているようだ。


 教会などの建築様式は、地球の建築物を参考にする事は決めていたが、国や地域、時代によって大きく違って迷ってしまう。

 俺が教会と聞いてピンときたのが中学校の歴史の時間に習った長崎県の天主堂だったので、ヘルピーに画像データを貰ってミニチュアを作ってみた。

 孤児院はさっぱりわからないので、こちらも長崎県の観光名所の旧グラ○ー住宅にして、学校は同じ敷地にある旧スチ○ル記念学校をセットで作ってみた。


 間取り等は無視して外観だけ。

 サクラから合格が出れば間取りも含めつめていく予定だ。


 建築物は木造なので、エデンの森の木を使って職人さんに作って貰う予定。

 木が堅すぎて加工が難しそうなので、ノコギリなどの工具も造らないといけないが、面倒なのでプレカットした木材を運ぼうかと考えている。

 瓦や漆喰はエルトガドにもあるので問題無いだろう。


 俺が造ったミニチュアを見ながら、色はどうするか、間取りをどうするか等女性陣が賑やかに話し、それに伴い俺がミニチュアを変更していくと言う作業を二日ほど繰り返し、教会と孤児院、学校のデザインが間取りも含めて決定した。


 職人さんの手配や工事費の見積もりなどはミニチュアを渡して総合ギルドに丸投げだ。

 詳細の打ち合わせを現場で行いたいと要望があったが、当然そうなるだろう。

 公国との契約完了後に現場打ち合わせを行う事にした。


「アリーゼさん。職人さんと早く打ち合わせをしたい。打ち合わせの後はエデンの森で伐採や加工があるんだ。契約と謝罪はどうなっている?」

「契約条件はほぼ固まっています。迎賓館側の城壁から森までの土地が提供される予定です。今後の教会や孤児院、学校の運営について一切公国は口出し出来ないようにしています」

「予想以上の成果だな。流石アリーゼさんだ」


「謝罪はどうなっているの?」

「公国でも決めかねているようです。何しろ国王の命の代金を決めているので。こちらからは要望等特に伝えていません」

「宗主国が口出す可能性も考えていた方が良いのかしら?」

「今回は総合ギルドも絡んでいますからそこまで警戒は必要ないかと思いますが、最悪の想定は必要かも知れません」

「その場合はエデンの恐ろしさを知らしめてやろう」

「カミーユはたまに悪い顔をするわね」

「最悪はそうなるだろ? 最悪の想定だと武力行使だな」


 本当に最悪の場合はそうなるが、様々な想定をして準備しておこう。

 アリーゼさんとサクラと俺の三人でしっかり打ち合わせをした。

 完璧とは言えないが、ある程度の事態には対応出来るだろう。


 そんな話をしていた翌日。

 アリーゼさんから契約の詳細が決定したので、契約条項を確認して欲しいとお願いされた。

 事前に聞いていたが契約条件を簡潔に纏めると以下の通りだ。

 ・城壁からエデンの森までの土地がエデンに無償で貸与される。

 ・提供された土地の維持管理はエデンが行う。

 ・迎賓館、教会、孤児院、学校の経営はエデンで行い、公国は一切口出しが出来ない。

 ・死の森の魔獣から公国が危険に晒されないように、エデンが警護する。

 ・魔獣からの被害があった場合はエデンがその保証をする。

 ・公国への出入りの検査は今まで通りの場所で公国が行う。

 ・エデンはエリクサー三本を公国へ提供する。


「俺はこれで問題無いが、サクラはどうだ?」

「私もこれで良いわよ。アリーゼさんありがとう」

「いえ。私もエデンの一員と思っています。当然の事をしたまでです」

「それでもだ。アリーゼさんに感謝を」


 仕事で成果をあげた人にはきちんと感謝を伝えないとな。

 ご褒美もあげたいが何がいいだろうか。


「アリーゼさんはクレティアローズをどれにするかまだ決めていなかったわよね? カミーユに好きなデザインで作って貰うのはどうかしら」

「それは良いな。どんなデザインでもアリーゼさんの理想の一品を造るぞ?」


 オーダーメイドのクレティアローズは最高のご褒美になるだろう。


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