第85話 人として正しい行動とは?
ブラック男爵の性癖が若干特殊である事は置いておいて、先ずは誓いと祝福を済ませないと何も始まらないし、終わらない。
全員で礼拝堂へ移動だ。
ブラック男爵は『ブラックハイヒール』に拘束されたまま……。
流石スペシャリストだ……。
礼拝堂はきちんと礼拝堂として完成していた。
良く結婚式で見る白壁のザ・礼拝堂! だ。
今から俺が女神像を設置して本当の完成となる。
エルトガドの教会も基本同じような感じなので、移動してきた王侯貴族は特に驚きは無いようだ。
皆俺の魔法に慣れてしまったのか、驚いてくれないのが若干悔しい。
女神像を作る時に演出を増やして驚かせてやろう。
「カミーユ。派手な演出をしても驚いてくれないと思うわよ」
何故サクラは俺の心が読めるのだろうか?
サクラの進化の方向性が恐ろしい。
「べっ、べっ、別にそんな事考えていないぞ? 早速像を……」
誤魔化すように像の設置場所に移動する。
声が裏返っていたのは誰も気付いていないはず……。
そう思わないとやっていられない。
「エルトガドの管理者たる女神クレティア様。貴女の正しき姿をエルトガドへ伝えるため使徒カミーユが石像を奉納致します」
適当な文言を並べそれっぽく演出してみる。
自分でも何を言っているのか良く判らないが、大事なのは雰囲気だ。
【マスター。この場にいるのはマスター以外全員高度な教育を受けています。バレてますよ】
ヘルピーよ。その情報は不要だ。心が折れてしまうでは無いか。
一気に魔力を込めてクレティア像を造る。
何も無い空間に金色の粒子が舞い踊り、徐々にクレティアの姿が現れる。
「「「おおぉぉぉー。これが、クレティア様の本来のお姿」」」
普段俺達と話す時には見せない澄まし顔のクレティア。
本当に女神以外に見えない神々しい美しさだ。
何度見ても惚れ惚れする。
「では、これより女神クレティアに誓いを。代表してルーラント国王及び王妃よ……」
皆まで言うなと言わんばかりに国王と王妃は女神像の前へ進み出て跪く。
それに
「私、ルーラント・ペーテル・ファン・センドラドはクレティア様の三戒である、『日々女神クレティアに感謝を捧げる』『人として正しい行いをする』『笑顔で挨拶する』を守り、王国国民へ三戒を広める事をお約束致します」
「私、ルーラント・ペーテル・ファン・センドラドの妻カタリーナは三戒を守り、国民を笑顔に導く役割を全うする事を、王国貴族を代表してお約束致します」
いつの間にか俺が適当に言った約束事が三戒と言うものになってしまった。
将来的には十戒にしたい。
日本人として十戒の方がしっくりくる。
「エデン国国王カミーユ・ファス・ドゥラ・エデンの代理である王妃サクラ・ファス・ドゥセ・エデンが問います。女神クレティア様への誓いはエデンへの謝罪であり、誓いを
俺を置いて儀式? が粛々と進んでいく。
全員初めての事をしているはずなのに……。
「はい。誓いを違えればその罰を受け入れます」
「その言葉を受け入れ、信じます」
一人取り残された俺は礼拝堂を見渡す。
誰一人身じろぎもせずに跪いている。
【マスター。キラキラ演出を発動させて下さい!】
「女神クレティアの使徒であるカミーユは、ルーラント国王及びカタリーナ王妃の誓いの言葉を此処に集う王国貴族の総意である事を確認し、エデン国とセンドラド王国との約定を確認した事を宣誓する」
俺の宣誓と同時にクレティア像が金色に輝きキラキラ演出が発動する。
当然戒めの光も同時に発動しこの場にいる全員に吸い込まれていく。
何度見ても幻想的で素敵な演出だ。
幻想的な祝福の光景を目の当たりにし流石の国王も貴族も皆言葉を失う。
「こっ、これが……。女神は実在するのだな……」
ルーラント国王の口から素直な言葉が漏れている。
『女神は実在する』『本物の祝福がある』と聞いていても、実際に自分の目で見ない事には信じる事は出来ないだろう。
王国が祀る神は王国が創作した神だから神が実在しない事は国王は当然知っているだろう。
神が実在しないのに祝福などあるはずが無いと言う常識が根底にあるから、『女神クレティアは実在する』と言われて、『はい。そうですか』とは行かない。
「ルーラント国王。女神クレティアは実在する。しかし、貴国の信じる神も皆の心に実在するのだ。貴国の神と同様、今後はクレティアにも感謝を捧げてくれ。そして、国民を一層笑顔に導いてくれ」
「カミーユ国王……。貴方との出会いを女神クレティア様に感謝する」
「色々とあったが、王国とエデンが友情で結ばれる事を願っている」
ようやく終わった。
長くなった一因は間違いなく俺だが、丸く収まって良かった。
さっさと宿に戻って、キンキンに冷えたビールを飲みたい!
エルトガドではビールでは無く
その内ビール造りを始めよう。
幸いエルトガドには魔法があるから、飲み物を冷やして飲む事は驚くほど簡単だからな。
それならエールを冷やして飲めば良いかというとそうでもない。
一度試したがエールは微温いからエールであって、冷えて美味いかと言えばそうでもないのだ。
そんなどうでも良いことを考えていたら、いつの間にか女性陣に囲まれてしまった。
「カミーユ様。側仕えで構いません。私をカミーユ様の傍に……」
「貴方様に全てを捧げます。私は綺麗な身体です。私に慈悲を……」
「私の胸は貴方を包み込むために成長したのだと悟りましたわ……」
「今まで研鑽を積んできましたのよ? 熟した果実の味見はいかがかしら?」
何がどうなっているのだ?
サクラを見ると、男性陣から囲まれているようだ。
こいつらは、つい先程『人として正しい行動をする』と誓ったのでは無いか?
より良い遺伝子を求めるのは人として正しい行動というのか?
否。こいつらは単純に欲望にまみれているだけのような気がするが……。
「風よ……」
ヤバイ。
そう思った瞬間、サクラを囲んでいた男性達は吹き飛ばされる。
「貴方達! 私の言葉を忘れたのかしら? たかだか人間風情が私に触れる事など出来ないのよ。立場を
相当ご立腹のようだ。
俺は大丈夫なはずだ。
女性陣に囲まれたのは不可抗力だ。
会話すらしていないからな。
「カミーユ! 何を鼻の下を伸ばしてデレデレしているの? クレティア様や私じゃ満足できなくて? 夜通し話し合いましょ? ねぇ?」
【マスター。今夜の指導はサクラに一任します。ご武運を……】
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