第28話 第一回行動方針会議
初夜とは何なのだろうか。
間違いなく三日三晩、不眠不休でいたすことではない。
汗をかけばクリーン。
喉が渇けばウォーター。
体力(精力)が落ちればカロリーバー。
カロリーバーの在庫が少なくて助かりました。
カロリーバーの在庫が豊富だったら……。
「すみません。嬉しさのあまり、少しはしゃぎすぎたようです」
少しの定義が日本とエルトガドでは違うようです。
「喜んで貰えて俺も嬉しいぞ。とにかく、寝よう」
「カロリーバーも無くなりましたし、致し方ありませんね」
致し方なくでも問題無い。
不満などあろうはずも無い。
「後で今後の事を話し合おう。家の改築もしたいし、今後の方針も決めないとな」
「判りました。不足している物もありますし」
「じゃあ、お休み」
「はい。お休みなさい」
「ふあー。よく寝た」
「可愛い寝顔でしたよ」
「ああ。サクラ。先に起きていたのか」
「ご飯を用意していますから、一緒に食べましょ」
目が覚めると愛妻の手料理が待っている。
「ありがとう。サクラの料理は絶品だからな」
「はい。カミーユのために作る料理ですから」
これは、絶対に美味しいと言わないといけない。
口に合わなくても、心から美味しいと言わないと駄目なやつだな。
「本当にサクラが作る料理は美味しいな。この料理を食べると、他の料理が食べられなくなるよ」
「頑張ったかいがありました」
お世辞抜きで絶品だ。
肉を焼いただけのはずなのだが、奥深い味わいがある。
いつの間にか『カミーユ』と呼び捨てにされている事も甘んじて受け入れてしまう。
美味しい食事を堪能し、体調も万全になった。
早速話し合いを始めよう。
「今後の事について話す前にサクラに伝えておかないといけない事がある」
そう。
祝福の影響や使徒の妻となった事の影響について話さないといけない。
少しはしゃぎすぎて、話すのを忘れていた。
「はい。何でしょうか」
俺の雰囲気を読み取り、サクラも居住まいを正す。
「サクラは使徒の妻になり、名付けの祝福を受けた」
「はい。この上ない幸せです」
「先日クレティアから影響について教えて貰った。お互いはしゃぎすぎて話が今になってしまって申し訳ない」
「はい……。私も少々はしゃぎすぎたと……」
思い出して恥ずかしくなってるのかな?
今更だぞサクラ。
「先ず、使徒との結婚についてだが……。そもそも、使徒が役割を果たした後どうなるか話していたかな? 今後の行動にも関わるから、復習も兼ねて話しておこう」
もう、記憶が曖昧なのですよ。
「……。という訳で、君は不老不死となった。申し訳ない」
「謝る要素が見当たりません。だって、私はカミーユとずっとこのままいられるって事でしょ? これ以上の幸せはありません」
「しかし、俺が使徒の役割を果たせず死んでしまったら、君は……」
「大丈夫です。カミーユには私が付いています。失敗する要素がありません」
おっ、おう。
その自信はどこから来るのかな?
「私に任せてください。ハイエルフですから」
やはりそうなのね。
ハイエルフは万能。
サクラと出会って学んだ事です。
「一緒にのんびり頑張ろうな」
「はい。のんびり、まったり、しっぽりと頑張りましょう」
何を頑張ろうとしているのか問い質したい。
カロリーバーの自作を急がねば。
「この件は問題なしという事で、本題に入ろう」
「喫緊の課題としてはベッドですね。さすがに腰が……」
「おっ、おう……」
それは、あれだよ。
三日三晩が問題だと思いますよ。
まあ、実際マットレスが無いから、寝心地はすこぶる悪いのは確かだな。
「街へ行って買い物だな。この森には何も無いからな」
「買い物リストは私が作りますね。任せてください。私記憶力には自信があるんです」
そうだよね。ハイエルフだからね。
「家の改築もしたいな。露天風呂も作りたい。輝く世界樹を眺めながらゆっくりと……。最高だな」
「あっ。それ良いですね。家の設計と露天風呂の計画も私に任せてください。私、憧れのお家があるんです」
夢見る少女かな?
あれだな。暖炉がある小さな家に子犬がいるやつだな。
子犬はいないから子魔獣かな。
「それから神殿……」
「神殿は私に任せてください。髪飾りを頂いたのです。クレティア様に相応しい神殿を設計します」
「おっ、おう……」
それから、問題点を洗い出して、何をどうするのかを話し合った。
サクラが計画し、俺がお手伝いをする事が決定した。
「最後に何を売ってお金を作るかだな。エデンの特産品を作れれば一番良いが、先ずは目先の金が必要だ」
「そうなんですよね。エデンで手に入る物はトラブルの元です」
ここに来てサクラの勢いも止まった。
「冒険者ギルドで依頼をこなすとか?」
「カミーユ。街へ入るのにもお金が必要です。即現金化出来る物が必要です」
「魔獣を一匹売ろう。多少騒ぎは起きるだろうが、森の浅層の魔獣ならそこまで問題では無いだろう」
「魔獣ですか……」
「普通の獣だと猟師や冒険者が狩るだろう。小さいやつをサクッとな」
「うーん……。魔獣でも小型なら……」
我ながらなかなか良い案だと思う。
【マスター。土魔法はお金の匂いがプンプンする事をお忘れでは?】
それだ!
ナイスヘルピー。
頼りになる女ヘルピー。
どんどん覗いてくれ。
「保険として俺の土魔法で何か作ろう。熊どんの置物とか得意だぞ」
「もう一声欲しいですね……。インパクトがあってお金になる……」
「君の髪飾りを模したアクセサリーはどうだ? サクラほど美しい女性が身につけているアクセサリーだ。熊どん達に頼んで鉱石を見つけて貰えば、それなりの物は用意出来るぞ」
「しかし、この髪飾りはクレティア様が……。しかし……。これは……」
サクラの長考が始まりました。
俺は待つ事しか出来ない。
考えに耽るサクラも美しい。
「カミーユ。その案を採用します。そしてこのクレティアローズをエデンの象徴にしましょう」
この薔薇はクレティアローズだったんだね。
知らなかったよ。
サクラのために作ったからサクラローズの方が良い気もするが、クレティアが作ったからクレティアローズでも良い。
非常に悩ましいな。
「教会と手を組んで売り出しましょう。クレティア様への信仰の証し的にすれば信仰心も高まりますし、エデンも潤います」
良かった。
何とかなりそうだ。
早速熊どん達に鉱石を探してきて貰おう。
「カミーユ。でかしました。ご褒美です。脱ぎなさい」
えぇぇぇ。
サクラさん。何時からそんなに強くなったの?
【マスターの妻としては常識的な行動ですね。即断即決が出来るサクラは見込みがあります】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます