第45話 カロリーバーの探求者

 孤児達と触れあい、教会見学を終え礼拝堂へとやってきた。

 クレティアに似ても似つかぬ像も作り替えないといけない。

 いっそのこと新しい宗教団体を作った方が良いかも知れないなと考えていると、アリーゼさんとシスター・エレオノールが礼拝堂へとやってきた。


「お待たせしました。エレオノールさんがしっかりと記録していてくれたので助かりました。これで具体的な対策を立てやすくなりました」

「それは良かった。俺達もついさっき礼拝堂へと来たんだ。孤児達やボランティアの方達から話を聞けて俺達も有意義だったぞ」

「では本日はホテルまでお二人をお送りして解散としましょう。それぞれ対策を考えて明日会議をしましょう」


「そうね。それが良いと思うわ」


 サクラの同意で今日のところは教会を後にする事にした。


「シスター・エレオノール。このカロリーバーを渡しておくわ。今晩の食事に混ぜてみんなに食べさせて。栄養も補えるし、体力も戻る。効果は私が保証するから」

「このカロリーバーはクレティアが作った物をサクラが再現した完全食だ。シスター達は一本ずつ食べてくれ。子供達には粉末にして食事に混ぜて食べさせてくれ。必ず食べるように」


「ありがとうございます。恐れ多いですが使徒様からの御指示に従います」


 あれ? 余計な事言ってしまったかな?

 しかし食べてくれるなら問題無いか。


「サクラ。ボランティアの方達にも渡しておいてくれるか?」

「勿論よ。アリーゼさんとザクスさん。それからナタリーさんの分も用意しているから後で渡しておくわ」


 流石サクラ。抜かりない。


 シスターやボランティアの方、子供達に見送られ教会を後にしてホテルへと向かう。

 教会の現状を聞いてからザクスさんとナタリーさんが言葉を発していない。

 自分達騎士が教会や孤児を苦しめている事を目の当たりにしたのだ。

 今まで信じていた事が崩れ去ったのだからしょうがないだろう。


「ザクスさん。ナタリーさん。今日見聞きした事は紛れも無い事実だ。この国で起きている事であり、君達は当事者だと思う。正面から受け止め真剣に考えて欲しい」

「そうね。今まで知らなかった事を知れて良かったと思って、自分に何が出来るのか、どうなるのが正しい事なのか考えるだけでも教会へ同行した意義があると思うわよ」


「……。そうですね。何が正しい事なのか。目を背けずに考えます」

「私は……。公国のためには多少の犠牲はしょうがないと考えていました。命をかけているのは私達と……。何が公国のためなのか考えさせられました……」


「考える切っ掛けが出来ただけ良かったじゃ無いか。何も無ければ考える事無く惰性で生きていくのだから。今日の出会いに感謝だな」


 真面目な話をしていたらホテルに到着した。

 石造りの三階建ての立派なホテルだ。

 俺とサクラは最上階に宿泊するらしい。

 最上階はセキュリティーも考えて貸し切りだそうだ。

 本来ならホテル全体を貸し切りにするのが一番良いだろうが、どうしても都合が付かなかったそうだ。

 元々一般客として宿泊するつもりだったので問題無い。


 メイドさんと言う名の監視役が三名付いてくれる。


 夕食はホテルが準備した食事を部屋まで運んでくれるらしい。

 俺としてはレストランで食べたかったが、立場的にそれは出来ないとの事で非常に残念だ。


「この肉は柔らかくて美味しいな」

「そうね。臭みも無いし、肉本来の甘味や旨味が口の中に広がって」

「こちらのステーキはレオニラン公国特産の牛肉です。上質の牛肉となるよう餌の管理や運動管理もしっかりと行っている国営農場産の最高級肉です」


 給仕をしてくれるメイドさんが教えてくれた。


「死の森の近くなのに畜産が出来るんだな。少し驚きだな」

「しっかりと城壁で守られた牧場で育てていますし、死の森と反対側の比較的安全な場所で飼育していますので。魔獣も出ますが、冒険者やハンターが狩れる程度の強さですから問題無いです。死の森から魔獣が現れるとどうしようもありませんが……」


 エデンの魔獣達はかなり強いらしい。

 その魔獣をサクッと狩ってしまう俺は世界最強かも知れない。

 武器は石だけれど……。


「しかし、冒険者ギルドと騎士団が教会の治癒魔法士を独占していて困っている人も多い様だが、やはり魔獣は危険なんじゃ無いか?」

「私の口からは申し上げにくい内容です……。彼らのおかげで安全が確保されている事も事実ですし、魔獣や動物の肉や素材が入手できるのも事実ではありますから……」


 不満はあるらしいが、それを言う事は出来ないらしい。


「話しにくい事を聞いて済まなかった」

「いえ。私こそきちんとお答えできず申し訳ございません」

「貴女は気にする事は無いわよ。気遣いが出来ないカミーユが悪いのよ」

「サクラの言うとおりだ。君は全く悪く無いから本当に気にしないでくれ」


 小国とはいえ一応国王だからな。発言には気を付けなければ。


「そう言えば、エデンという国について君達は知らないだろう。凄く良いところだから宣伝しておこう」

「カミーユ。宣伝ならカロリーバーを渡すのが一番よ。それとクレティアローズも」


 三人のメイドさんにカロリーバーを渡し、クレティアローズを見て貰った。

 これからエデンが売り出していく商品だし、彼女達を通して国にも報告されるだろう。


「このカロリーバー一つで確実に一晩中。場合によっては三日三晩よ!」


 サクラ! カロリーバーは精力剤では無いから。

 完全食品だから間違えないように!

 メイドさん達も目をギラギラさせて詳細を聞かない!


 サクラもアドバイスが具体的且つ的確すぎる。

 半分を粉末にして食事に混ぜるとか俺は知らないから!

 一度に食べさせるより小分けにして一回戦毎にとか……。


 クレティアローズは綺麗だよ?

 女性はキラキラした美しいアクセサリーが好きでしょ?

 俺も一生懸命作ったんだから誰か興味を示して!


【流石サクラです。神界にも無いデータを持っています。この情報は売れます。結果も聞ければウハウハな上に色々と捗ります】

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