第129話 営業マン ゲット!
「おはようございます。カミーユ様。サクラ様」
顔を真っ赤にしながらメイドさんが挨拶をして朝食の準備をしてくれる。
総合ギルド総本部のベッドの使い心地はすこぶる良かったので、メイドさん達の反応は正しい反応だろう。
朝食の後ゆっくりと珈琲を飲みたいところだが、今日は帝城でイベントがあるので正装へ着替えなければならない。
身なりを整えるためのメイドさんが三名付いてくれた。
サクラにはメイクを含め八名らしい……。
俺に三人付くのも大袈裟すぎると思うが、一人の準備のために八人必要とは……。
お化粧専門、ヘアメイク専門という風にその道のプロが付くらしい。
女性は大変だな。
「こっ、これは……。凄いですね……」
着替えを手伝ってくれているメイドさんがボソリと呟いたが、しっかりと聞こえているからな。
そして、触れるか触れないかの絶妙な手さばきで確かめるでない!
俺のカミーユがカミーユしてしまう。
本当にエルトガドの女性は……。
それ以降も身体を絶妙なタッチで確認されながら無事に着替えが終わった。
着替えるだけで一時間かかるとは思わなかった……。
因みに俺の衣装は総スパイダーシルク製だ。
光沢があり薄く軽く丈夫な素材だ。
当然サクラの衣装も総スパイダーシルク製。
エデンの森をイメージした薄緑のドレスだ。
クレティアローズの髪飾りや俺が魔法で造ったネックレスやブレスレット等、多数の宝飾品を身につけるが、サクラの美しさを引き立てるように計算している。
「サクラ。君は本当に美しい……」
「ありがとうカミーユ。貴方も世界一素敵よ」
着替えに協力してくれたメイドさん達はうっとりとした表情で俺とサクラのやり取りを見ている。
俺の外見はクレティアが色々いじってくれたお陰でかなり美形だし、サクラは顔もスタイルも抜群だし、溢れ出る気品がある。
リビングでサクラとイチャイチャしていたら総本部長とユベール統括が訪ねてきた。
二人は俺とサクラを見て目を見開き言葉を失っている。
「カミーユ様。サクラ様。おはようございます」
「ああ。おはよう。昨夜は落ち着いて寛げた。宿の提供感謝する」
「派遣していただいたメイド達も素晴らしい腕をお持ちのようで、総本部長の心遣いに感謝するわ」
「ありがとうございます。メイド達も喜ぶでしょう」
簡単に今日の行動予定を確認し談笑する。
今日は帝城から迎えが来るようだ。
昨日の宰相との面談で俺達に対する対応を改めたようだ。
「失礼致します。帝城からお迎えが参りました」
俺とサクラは帝城へ向かうために部屋を後にする。
謁見まで二時間半前には帝城に到着するだろうが、謁見の流れや作法関係の説明も受けなければならないだろうから、当然と言えば当然なのだろう。
俺もサクラも皇帝に
俺とサクラはクレティアに仕える身だ。
女神に仕える者がたかだか人間に跪いてはいけないと思うし、実際旧公国でもセンドラド王国でも国王に対し跪く事はしていない。
皇帝に跪いては他の国を軽んじている事になってしまう。
まあ、センドラド王国は今回帝国に寝返っているのでお仕置きは必要と考えているが。
総合キルドの車止め的なところで一名の文官と二名の騎士が待っていた。
「カミーユ様。サクラ様。おはようございます。私はサウル・ヘノイと申します。お二方の帝国滞在中のお世話をこちらの騎士二名とさせていただきます。以後お見知りおきを」
本来であれば、入国時から付くはずの護衛とお世話係と言う名目の監視人がようやく到着したようだ。
恐らく帝国は俺とサクラを帝城に入れたくなかったのだろうと想像する。
それが、昨日総合キルドの総本部長が宰相に直接帝国の落ち度を報告し、眉唾物の武勇伝が事実だったと知って慌てたのだろう。
「よろしく頼む」
「帝国が何を考えているかは知りませんが、今更という感じね……。で、サラスさんは私達の馬車に同乗するのね?」
そう言ってやるなサクラ。
サラスさんには罪は無いのだから。
帝国貴族という立場であれば同罪と言えるだろうが。
「サラスさんは帝国の貴族なのか?」
「そうですね。しがない子爵家の三男ですので正確には貴族ではありませんが……。家を継ぐことははありませんので、帝城でしっかりと仕事をして準男爵をと思っています」
「今回の監視役で実績を残せるように頑張ってくれ」
「でも、私達が帝城で暴れてしまったら、サラスさんの首が飛ぶかも知れないわね。物理的に……」
「……」
サラスさんはこの世の終わりのような顔をしている。
「勿論俺達は大人しくしている予定だぞ?」
「そうね。私達は喧嘩をしに来ている訳ではありませんからね。喧嘩をする気ならそもそも帝城へ向かってはいないわよ」
少しだけホッとしているが、恐らく帝国とは喧嘩になると思う。
謁見で跪く事をしないから、これは確定事項だ。
「帝城に付いてからの流れを簡単に教えてくれ」
「はい。謁見の前に事前の打ち合わせと謁見時の所作のレクチャーを受けていただく予定となっております。打ち合わせは宰相が行うとの事です。所作は簡単ですので、謁見の間に入る前に簡単に担当者が説明します」
まあ、そこは予想通りだ。
ラノベを愛した男だから予備知識だけはたっぷりある。
「何か具体的な事は聞いていないの?」
「申し訳ございません。詳細までは存じておりません」
嘘は言っていないようだ。
何処の誰を監視するのか判ってさえいれば、問題無いのだろう。
逆に、色々知ってしまっていては先入観を持って接してしまうので良くない事もあるのだろう。
建国祭で要人を迎える時の参考にさせて貰おう。
「しかし、この馬車は揺れが殆ど無く、素晴らしい乗り心地ですね」
「そう言ってくれると嬉しいな。俺が開発した馬車なんだ」
「総合ギルドで注文を受付中なので宣伝しておいて。値段は知らないけれど……。宣伝料はきちんと払うわよ?」
彼は子爵家の三男坊。
将来兄が家を継げば子爵家にとってお役御免だ。
お金はあるに越した事は無いし、俺達もお金に困っている訳ではないが、売れるに越した事は無い。
エデンに取り込むよりも、営業マンとして頑張って貰っても良いな。
【マスター。盗難防止装置として『ブラックハイヒール』を付けましょう。苦痛と喜びのギリギリのラインで捕縛可能です】
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