第110話 男爵領 実は子爵領だった……
総合ギルドを後にし王城へと向かう。
アリーゼに総合ギルドへお使いを頼んだついでに王城にも走ってもらってブラック男爵との面会も申し込んでおいた。
常識では考えられないスケジュールでの面会申し込みだったが、恐らく会わせてくれるだろう。
センドラド王国では確実に魔王認定されているだろうし、機能の件もあるからな。
逆らうと確実に国が物理的に無くなると思っているだろう。
「常識をすっ飛ばして行動出来る事を考えれば、魔王認定されているのも悪くは無いのかも知れないな」
「そうね。相手はたまったものでは無いでしょうけれど、悪くは無いわね」
「カミーユ様もサクラ様も少しは自重して下さい。お二人には手を出せないでしょうけれど、私やザクスさん、ナタリーさんには嫌がらせされるのですから。しかも絶妙に文句を言えない程度の地味なやつを……」
一緒に馬車に乗っているアリーゼが俺達にクレームを入れる。
「貴女達も常識を無くせば良いのよ。何かあっても責任取るわよ?」
「そんな事したらアンジェラさんやエデンにいる皆に迷惑がかけります! お願いですから自重して下さい!」
アリーゼが馬車の中で鼻息を荒くしているタイミングで王城へ到着した。
ブラック男爵は王城の地下牢に入れられ厳重な監視下に置かれているらしい。
「お待ちしておりましたカミーユ国王、サクラ王妃。昨日の件も騎士団から報告が上がってきております。お手数をおかけして申し訳ございませんでした」
出迎えてくれたのはセシル宰相だった。
自国の領地が消えたのに『お手数をおかけして申し訳ございませんでした』とは相当恐れられているようだ。
「シスター達を凌辱されたのだ。そして自分達の言う事を聞かない者の尊厳を踏みにじる行為。男性のシンボルは切られて無くなっていたぞ? こんな事をされて許される訳が無い」
「シスター達も被害にあった方達もエリクサーで身体の問題は無くなりましたけど、未だ目を覚ましません。精神を壊されているでしょうから意識を取り戻した後にどうなるかは判りません。当然の報いを受けたと思いますわよ?」
「本来であれば王国内できちんと対処しなければならない問題でした。現在は他領で同様の事が起きていないか調査中でございます」
セシル宰相があの夜からの王国の動きを説明してくれる。
あの場にいた貴族だけで無く、参加出来ていなかった貴族達にもクレティアへの毎日の感謝を義務づけたらしい。
食事をいただく時に『女神クレティア様に感謝を』と唱和して食べるらしい。
教会に特別な寄進などは行わないが、回復魔法の独占契約等は即時廃止し正当な価格で取り引きする様にしたと。
これが守られれば今までの不当な契約は不問にする条件で貴族達を従わせたらしい。
王国も必死だ。
昨日の件も貴族達が危機感を覚えるだろうから、渡りに船だったようだ。
一通り話し終わり、ブラック男爵を拘束している地下牢に案内された。
地下牢と言っても
腐っても貴族として遇されているのだろう。
元貴族となった時にどのような待遇になるのかは知らないし、知ろうとも思わない。
面会は地下の応接室的な場所で行われた。
男爵の周りに三名の騎士が控えており、不測の事態に対応出来る様にしている。
「最初に俺から言っておく。今日来たのは話し合いをするためでは無く神罰の執行だ。俺から一方的に話すが、質問等に応える事は一切しない。それから、男爵に対する王国の処罰に俺は一切関知しない。その事は宰相を通して国王へ伝わっている。王国がどのような処罰を行うのかは俺は知らないし、知ろうとも思わない」
「きっ、貴様のせいで我が一族がこのような目にあっているのだ。国王が許しても我が一族は許さない。覚悟しておけ」
この期に及んで強気に出られるブラック男爵はやはり凄い男だ。
ファンタジー作品で読んだ悪い貴族の見本だな。
「一応先に魔法をかけておこう。『
キラキラ演出が発動すると同時に緑の炎が男爵の体内に吸い込まれていく。
自殺出来なくなる魔法だ。
「先程『我が一族は許さない』と言っていたが、君の領地は消滅し、君と君の奥さん以外の一族は女神クレティアの神罰によりこの世に存在していない」
ギャーギャーと騒ぐ男爵を無視しながら、昨日の事を丁寧に説明してあげた。
俺は慈悲深い魔王だからな。
一通り説明し終わりいよいよ神罰執行だ。
「では女神クレティアの使徒カミーユがグスタフ・ブッシュへ神罰を執行する。眠れない夜は懺悔すると良いぞ。『
再びキラキラ演出が発生し今度は黒い炎がブラック男爵の体内に吸い込まれていく。
これでブラック男爵は眠ると激痛が走り、辛さから逃げようと自死しようとしても出来なくなった。
恐らく精神崩壊してしまうだろう。
そして、ブラック男爵の妻には同室で過ごしてもらい、壊れていくブラック男爵を見ながら恐怖に震えてもらうとしよう。
「俺からの要望で、今日から愛妻と同室で過ごせる様にしておいた。せいぜい感謝してくれ」
用件は全て済んだので面談室を後にし、遠隔でブラック男爵の妻に『慈しみの枷』をかけておいた。
領地や一族の事は誰かから教えて貰えるだろう。
「サクラ。今まで男爵領、男爵領と色んな人と話していたが、今日魔法を発動する時にブラック男爵が子爵だった事を思い出した」
「カミーユのおかげでブラック男爵の二つ名? 通り名? が広まったし、貴方が男爵と言えばブラック男爵の事を言っていると誰でも判るからね。まぁ、指摘してカミーユが怒ったら面倒だと思って誰も指摘しなかったのでしょうね」
そこはきちんと指摘してほしかったな。
非常識な人間と思われるじゃ無いか。
【マスター。今更ですが、マスターがエルトガドに存在している事自体が既に非常識ですし、マスターのマスターも非常識な逞しさです。体力に魔力は人外ですし、言いたくはありませんが、容姿はずば抜けて整っています。非常識の塊のマスターが常識人とは誰も思っていませんから安心して下さい】
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