第4章 真女神クレティア像

第58話 夜行性の薔薇

「これは……。凄いわね」

「ああ。正に白亜の神殿だな」


 サクラの設計を元に俺が作った大神殿を前にして俺とサクラはその出来映えに満足していた。

 サクラが設計した大神殿の外観はタージマハルのような外観をしていたので、俺が土魔法を駆使して建築した。


 純白の石材。

 黄金色に輝くドーム。

 ブルーサファイアのアクセント。


 黄金色のドームは金色のクリスタルと表現したくなるような透明感のあるゴールド。

 エリクサーやキラキラ演出に登場する黄金色の粒子が舞っているような、固体であって液体のような物質を作ってしまった。

 

 クレティアンゴールドと名付けよう。


 神殿のシンボルとして、世界樹と薔薇をモチーフにしたエンブレムを作成した。

 

 世界樹はサクラを表すエメラルドグリーン。

 薔薇はクレティアを表すブルーサファイア。

 世界樹の幹や薔薇の茎やとげはヘルピーを表すブラックダイヤ。

 縁取りは俺を表すシルバーミスリル。


 エンブレムは森の魔獣達のレリーフで守られている。


 地面から屋根までの高さは大凡おおよそ三十メートル程度。この世界では超高層建築物と言っても過言では無い。


 クレティア像も神殿の規模に合わせて大きくしているが、あまりにも大きすぎると見えないので、大仏様のように巨大では無い。


 当然天井や壁には精緻な装飾を施しており、訪れた人を非現実の世界へといざなうはずだ。


「本当にクレティア様は美しい姿をされているのね。早くお目にかかりたいわ」

「そうだな。焦らなくてもそのうち会えるさ。クレティアはサクラのことをよく知っているけどな」


 クレティアだけで無く、神界の神々にサクラは大人気だと聞いている。

 何処かのヘルピーさんのおかげで。

 ヘルピーには神々から様々な要望が届いているらしい。


 神界大丈夫か?


 否、神々に創造と管理をされている世界は本当に大丈夫なのだろうか。

 ラノベが流行していると考えればそこまで可笑しくは無いのかも知れないが、神としての仕事はきちんと行って欲しいと切に願う。


「宝物庫の展示物が寂しいわね」

「しょうがないだろ。そもそもクレティアは今までエルトガドに干渉していなかったのだから、クレティアの痕跡は皆無だったのだから」


 一応神殿の中には宝物庫を作って展示しているが、展示物が少なくて寂しい。

 エリクサー、カロリーバー、クレティアローズ(レプリカ)しか展示する物が無かったので、苦肉の策で、俺がクレティアから貰った最初の荷物も展示することにした。

 短剣(アダマンタイト、ミスリル等の超合金製)こそ立派な物だが、後は布袋とマント、村人の服、寝袋、食器、ジャーキーだからな。


 一応短剣は俺の唯一の武器だからレプリカを作って展示している。


 それでも空間が有り余っているので、エルフの姫御子を讃える為に、ルシアナが身につけていた衣装と装飾品とレイピア。それと、ドッグタグも展示している。

 当然ルシアナと共に森に入って命を落とした姫御子の騎士達の遺品やドッグタグも隣に展示している。


「機会があったら、クレティアの服とか装飾品やクレティアの秘書……。女神もどき? のハイヒールとか貰えるか聞いてみるよ」

「女神もどき?」

「ああ。いるんだよ……。神界に存在しているとはとても思えないようなド変態が」

「……」


「性癖はだけど、有能なのは間違いない。エルトガドでの俺の活動も手助けしてくれている。話くらい出来るようになれば良いのだが……。否、サクラに悪い影響が出そうだから、やっぱり話す必要は無いな」


「駄目よ。カミーユがお世話になっているのでしょ? 妻としてきちんとお礼はしたいわ」

「……」


 サクラの気持ちは嬉しいが、ヘルピーとの接触は極力避けたい。

 神上がりしたときは嫌でも会うのだから、それまでは平穏……、とは言え無いが、現状のサクラで十分だ。


「それよりサクラ。神殿の近くにローズガーデンを作るのはどうだろうか?」

「露骨に話題を変えたわね。まあ、ローズガーデンは賛成よ。趣の違うローズガーデンを複数作って、王侯貴族の社交の場を提供してあげれば良いわよ。お金にもなるし」

「そうだな。お金はあって困るような物じゃ無いしな」


「折角ローズガーデンを作るなら、エデンの象徴とも言える薔薇を作りたいんだ。クレティアと女神もどきとサクラを表すような品種。エデンにしか無い品種を作るのはどうだろうか」

「それは素晴らしいわね。私の薔薇は置いといて、クレティア様の薔薇は早急に作りましょう。それと、カミーユがいつもお世話になっている方の薔薇もね」


 俺としては、人々の目に触れることの無いヘルピーの分は後回しでも良いのだけれど。


「ある程度は予想はついているんだ。俺がイメージしながら魔力を注いで、水代わりにエリクサーを与えれば何とかなる気がするんだよな」

「そんなに簡単にいくかしら? それに、もし成功したとしても、エリクサーが無ければ育たないのであれば、職人さんにお願いして地道に品種改良した方がいい気もするけど……」


 もっともな意見だ。

 俺の魔力とエリクサーありきではエデンでしか見られない幻の薔薇になってしまう。

 それはそれで良いのだけれど、各教会で育てれば、教会の地位向上にも役立ちそうなのだよな。


「先ずは、理想の薔薇が出来るかやってみよう。職人さんがいない……。と言うか、現状住民は俺とサクラ、ザクスとナタリーしかエデンにはいないんだから」

「それもそうね。先ずは実験しましょう。折角なら私の薔薇は私が作ってみたいと思っていたの。私の魔力でエリクサーは作れないけど、カロリーバーは作れるから私らしい薔薇が出来ると思うのよ」


 非常に艶めかしい夜行性の薔薇が出来そうな気がする。

 植物に夜行性という概念があるのかは不明だが、夜花を咲かせる薔薇というのも神秘的で良いだろう。


「薔薇が出来たら、人材確保の旅に出かけよう」

「そうね。ずっと此処にいても使徒の目的も果たせないし……。クレティア様にお目にかかる為にも頑張りましょう」


【マスター。マスターが私に対してどのような感情を抱いているのかよく判りました。神界で第二夫人としての勤めを果たすのが今から楽しみです。あぁ。想像するだけでゾクゾクします】   

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