第57話 ゴタゴタ後のあれやこれや

 レオニラン公国からエデンの森へと戻ってきて三ヶ月が経過した。


 その間のんびりスローライフを楽しむ予定だったのだが、非常に忙しく過ごしていた。


 建築資材を送らないといけないので伐採と思ったが、世界樹を中心にした都市計画をしっかりと行ってから作業に取りかかった。

 伐採して加工して魔獣便で送り出すと言う工程を何度も何度も繰り返し、一ヶ月ほどかかってようやく終了した。


 その後は、蜘蛛の魔獣と約束したスパイダーシルク(勝手に命名した)を送ったり、鏡を作って送ったり、魔獣達が森で狩った魔獣を冷凍保存して送ったりと日々休むこと無く働いた。


 サクラもカロリーバーの制作が忙しいようで、いつの間にか数種類のカロリーバーを作り出していた。

 体力、造血、精神安定、精力等性能特化の開発にも成功しており、カロリーバー職人となっていた。

 ヘルピーもサクラが作り出すカロリーバーが理論上はエルトガドで制作出来ないはずだと困惑していたが、そこはサクラだからしょうがない。


 ポーションは俺とヘルピーで作った。

 流石ヘルピーだ。俺が求める性能のポーションの材料や制作手順を直ぐに教えてくれる。

 基本的に世界樹の葉と実と俺の魔素が原材料だが、配合や魔素量によって効能が変わるらしい。


 興味を持ったサクラが、化粧水や美容液を作り出したのは驚いたが、そこはサクラと言う事で諦めた。


 死んだことになったルシアナさんのお墓も世界樹の裏に作った。

 ドッグタグを偽造しないといけないのだが、ヘルピーの相談したらクレティアに報告をあげてくれて、『今回だけよ』とクレティアが作ってくれた。

 クレティアは俺に甘い気がする。

 将来結婚する事もあるが、ミッションに失敗すると大変な事になるので協力してくれたのだろう。


 総合ギルドには各地にある教会の現状調査を依頼した。

 状況が悪い教会を優先して助けてあげようと思う。

 調査のついでに今後教会の管理はエデンが行う事になるだろうと伝えておいた。


 ルシアナさん一行の埋葬の報告のために、エルフの国であるムルドラン自治領に総合ギルドに依頼して速達で手紙を送った。

 俺がクレティアの使徒として魔素枯渇問題を解決したこと、ルシアナさん一行を埋葬したこと、レオニラン公国における教会の窮状と今後の管理について。

 クレティアの使徒として教会は大切なので、今後はエデンが教会の管理運営を行う事と、ルシアナさん一行の遺品の引き取りも兼ねて迎賓館まで来いと、結構な上から目線で伝えておいた。


 サクラが文面を考えたのだが、考えているうちに生贄にされたことを思い出してご立腹のようだ。


 他にもポーションの容器や森の木専用の工具などの作成等、細々とした作業も沢山あって、とてもじゃないがスローライフとはほど遠い生活をしていたが、充実した日々を過ごせていた。


 夜は夜で、サクラからカロリーバーの性能試験という名目のが待っていた。

 ヘルピーも報告書と言う名の官能小説の執筆が捗ると大喜びだ。


 公国からの賠償はサクラが助言してくれたとおり、税収では無く土地の割譲で落ち着いた。それ以外の条件は公国からの提案通りにしておいた。

 この条件であれば公国は周辺国、特に宗主国であるセンドラド王国に言い訳も立つだろう。女神クレティア様の使徒を名乗る人物が奇跡を起こし、公国はクレティアを信仰することにした。クレティアと使徒に敬意を表し、土地を提供し新たな教会等の建築費用を負担することにしたと。

 クレティアを主神として崇めるが、センドラド王国が信仰する神についても今まで通り敬う事は出来る。クレティアはエルトガドの管理者であり創造神では無いから。


 エリクサーを一本センドラド王国に渡せば納得出来るはずだ。


 頼んでもいないのにセンドラド王国が調印式の立ち会いをすると言い出したので、サクラに相談して申し出を受ける事にした。

 今回の賠償が大国のお墨付きを得られることは重要な事らしい。


 調停式は迎賓館で行った。

 センドラド王国からは宰相が立ち会い人として出席し、俺とエフセイ国王が当事者として調印した。

 調印後クレティア像の前で宣誓しキラキラ演出を発動させておいた。


 キラキラ演出の安売りのような気もしたが、センドラド王国へのアピールにもなったことだろう。


 センドラド王国には大きな鏡を贈っておいた。

 宰相からは大変喜ばれた。

 

 それと、迎賓館の一室にエデンの特産品コーナーを作った。

 エリクサーも展示されており、本物のエリクサーである証拠にサクラの風魔法で切り飛ばされた俺の腕も展示している。

 結構なホラーだが、効果はあるだろうとサクラとアリーゼさんからアドバイスがあったので了承した。


 副団長の処刑への立ち会いも依頼されたが、お断りした。

 はっきり言ってどうでも良いし、人が目の前で死ぬところを見たくない。

 平和な日本で育った俺には刺激が強すぎる。


 教会や孤児院、学校の建築も順調に進んでいるし、ポーションやカロリーバーも市民が気軽に買える様になって教会に感謝の礼拝を捧げる人も増えてきた。

 死の森の脅威が無くなった騎士団が治安維持に人を割くことが出来たので犯罪も減っているということで、公国の市民達はその原因を作ったエデンとクレティアに感謝してくれているようだ。


 因みに総合ギルドのレオニラン公国支部からギルド本部へとポーションやカロリーバー、鏡やスパイダーシルクが送られ、総合ギルドは全国的にエデンの特産品を売り出すことに決めたようだ。

 鏡はエルトガドで流通している物と透明度や映りが全く違うし、スパイダーシルクは物理耐性や魔法耐性がある事が判ったので、高級品として売り出すそうだ。

 ポーションやカロリーバーは市民が気軽に購入できる価格に設定するようにお願いしている。


 徐々に徐々にエデンとクレティアの使徒カミーユと妻サクラの名前がエルトガドに知られてきた。

 総合ギルドとズブズブの関係になって本当に良かったと思う。


 日本からエルトガドに転移? 転生? して約半年。

 この世界で活動する基盤がようやく固まってきた気がする。


 スローライフを実現させるべく今は忙しく動き回ろう。


【マスター。たった半年で良い気にならないでください。マスターの勘違いを正すために、私が綺麗に踏み抜いて差し上げます】   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る