第135話 主導権はどちらに?
「ジェイコブ陛下。これは茶番では無いのだよ。女神クレティアの使徒カミーユと、クレティアの眷属であるサクラが、君達を裁く場なのだよ」
静寂に包まれている会場に俺の声が響く。
ヘルピーが茶々を入れるがスルーしておこう。
ドヤ顔していた俺自身もヘルピーの指摘が間違っていない事を理解している。
「成る程……。確かに先程の書状の内容が真実であれば宣戦布告を受けたと捉えられなくも無い……。三大国と君達の目的が違えばこの場が茶番で無い事は理解した」
「ご理解頂けたようで何よりだ」
「しかし、裁くというのは少し傲慢では無いのか?」
ジェイコブ陛下の主張は納得出来るものだ。
仮にも三大国を含めた国々を裁こうというのは傲慢と言われても仕方が無い。
「ジェイコブ陛下。確かに傲慢と思われても仕方が無いが、つい先程旧レオニラン公国に対して武力行使をされた。まあ、こちらに一切の被害は無かったのだが……」
「それは誠か?」
「間違いない。俺の眷属が念話で報告してくれた。ジェイコブ陛下は貴国が同じような事をされて何もしないのか?」
「大国が相手であろうとも決して許さぬ」
「そういう事だ。この場が茶番では無い事と、俺達が裁くと言った事も理解出来たようだな」
「茶番では無い事は理解した。そして、三国が我々を欺いていた事もな」
玉座に座る三人の王を睨みながらジェイコブ陛下が着席した。
俺とサクラは座る椅子が無いので立ったままだ。
会場はかなりザワついている。
俺が言った事が事実であれば玉座に座る三人は他国を騙していたのだから当然だろう。
勿論、俺の言葉を即座に否定する者が大半なのだが、小さな疑念を抱かせる事は出来ただろう。
「チェス宰相。私は三つの質問に納得出来る回答を得た。先程カミーユ殿が話した内容も含めこの場で審議してはいかがか? この場は各国の代表が集まっているのだ。事の次第を
「確かに先程の言葉が真実であれば我が国も考えなければ」
「何を言っている。このような者の言葉など捨て置けば良いのだ」
「我が国は何があっても王国に従うまでだ」
ジェイコブ陛下の言葉にそれぞれが思いを口にしていた。当然沈黙を貫く者もいるのだが、この場での正解は沈黙だと思う。
一度言葉にしてしまえばそれを違えるのは大変な事だ。それが国を代表する者の言葉なのだから、言葉を覆せば信用出来ない国と認定されてしまう。
「皆様、静粛に。静粛に願います」
チェス宰相の言葉でザワついていた会場に再び静寂が戻ってくる。
「先程ジェイコブ陛下のご質問に対するカミーユ殿の回答に於きまして、真偽を確認する必要がある発言がありました。三国の決定……、この会議の正当性を根底から覆す内容であるため、先ずはその件から詳らかにしたいと思います。異議はございませんか?」
チェス宰相が会場を見渡す。
「あるに決まっておろう。そなたは帝国の宰相であろう。帝国に向けられた悪意を排除せずして何とする」
「恐れながら陛下。本来であればエデンを国として認めるか否かの審議をこの場で行う予定でしたが、三大国の王が協議した結果を伝えると言う無茶をしているのです。そして、その正当性が疑われているのです。当然の事かと」
「そなたはそこの二人に付くと言うのだな?」
「そのような事ではございません。帝国の決定が正当なものであると証明するためでございます。但し、私はこの場の進行のために中立を守ります。そうで無いと此処に集まった各国首脳に対し失礼かと存じます」
「この場で宰相の任を解く事も出来るのだぞ?」
「構いません。私は帝国が招待した皆様に礼を尽くしたいと存じます」
ライオネル帝国の皇帝はバカなのだろうか。
こんな事を言えば自分達が後ろめたい事をしていると白状したも同然だ。
ジェイコブ陛下も他の代表者もドン引きしているのに気付いていないのだろうか。
「チェスの覚悟はこの場の進行を任せるに足ると認める。皆も異議は無いか?」
空気を一瞬で変えてしまった。
流石超大国の皇帝と褒めてあげよう。
「それでは、予定を変更し、先程女神クレティア様の使徒カミーユ様の発言に基づき、審議を開始致します」
「審議の前に確認する。カミーユなる者の主張が間違いであった場合は
皇帝は自分の主張が正しいとばかりに自信満々で俺の処分内容を取り決めたいらしい。
意見を通すための手練手管なのだろうが、自らの首を絞める行為をするとは、皇帝はドMらしい。
「万一そうなった場合は俺を処刑するなり好きなようにすると良い」
「私の事も好きにして良いわよ。但し、ライオネル帝国とセンドラド王国は既にエデンに対して軍事行動を起こしている事をお忘れなく。全員捕虜になっているけれど」
「更に言えば現在帝都は俺達の護衛に包囲されている事も忘れるなよ?」
何か女神の使徒と言うよりも、悪役貴族のような気がするが、気のせいだろう。
大丈夫。これから挽回出来る……。はず。
「貴様らの言った事が正しいと各国が認めたならば、エデンを国として認めてやろう。元々そのためにこの場にいるのだからな」
やはり超大国のトップとなると自分中心に世界が回っていると勘違いしてしまうのだろう。
帝国が白と言えば、たとえ黒でも白に今までなっていたのだろう。
俺は許さないが。
「先程のサクラの言葉を聞いていなかったのか? 前提条件が違うのだよ。俺とサクラは条件通りに此処へ赴いた。しかしライオネル帝国とセンドラド王国はエデンに対して軍事行動を起こしているのだ。此処にいる各国は女神クレティアに対し矛を向けた。自国のためを思った行為だろうし、宗主国に対して異を唱える事が難しいのは理解でいるが、事実だ。そして、ライオネル帝国とセンドラド王国は実際に行動に移した。特にセンドラド王国は一度チャンスを与えているにも関わらず。許されると思うなよ?」
「ちっ、違うんだ……。私は騙されたのだ……」
青い顔をしてガタガタと震えながらルーラント国王は掠れた声で言い訳を並べだした。
【マスター。公開お仕置きですね。ようやく新たな扉を開く覚悟が定まったのですね。捗ります】
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