第104話 怒られのプロ?
クレティアからクレームが入っているらしいが、全く心当たりが無い。
否。今回のブラック男爵の件を勝手に神罰執行とした事が問題だったか?
それともクレティア像の進捗が悪い事か?
考えても答えは出ない。
答えが出ないなら考えるだけ無駄だ。
「カミーユ。ブラック男爵はどうするの?」
「今は王国に守られている感じだからな。悪事を書き出させる事は確定として、ちょっとした魔法を掛けようかと思う」
「どんな魔法?」
「眠ると激痛が全身を襲う魔法……」
「うわぁぁ。ご愁傷様としか言いようが無いわね。死ぬより苦しそう」
「全てはブラック男爵から始まった事だからな。因果応報だ」
今まで散々善良な市民達やシスター達を苦しめてきたのだ。
簡単に終わらせては罰にならない。
自分達が苦しめてきた人々の痛みを物理的に味わって貰おう。
「カミーユ様。サクラ様。総合ギルドのユベール統括が到着されました。応接にお通ししております」
応接でユベール統括から悪事メモを返却して貰い、今回の顛末を説明する。
「残っているのは男爵夫妻だが、男爵には今まで苦しめてきた人達の痛みを物理的に味わって貰う魔法を掛ける。寝ると全身に激痛が襲う魔法だ」
「それは……。いえ。ありがとうございます。領民を代表する訳ではありませんが、総合ギルドの職員や護衛、その遺族も心が少し軽くなるでしょう」
「エデンとしてはこの悪事メモを渡して男爵に魔法を掛ければ終了だが、総合ギルドとしては今後どのように動く?」
「先ず、
総合ギルドは全国的な組織だからな。
俺達と違って好き放題する事がギルドの不利益に繋がってしまうのだろう。
ある意味権力者とは持ちつ持たれつの関係だろうから、落とし所が難しいのだろう。
「今回の件で亡くなったのは総合ギルド関係者だから、有効活用してくれ」
「感謝いたします」
その後少し雑談をしたところでユベール統括は帰っていった。
冒険者ギルドの件は未だ結論が出ていないようだ。
今まで関わりが無かったので、きちんと結論を出してくれればそれで良いと思っている。
今回の男爵領の件を考えると、当事者としては頭を抱えているだろうが……。
皆で食卓を囲み食事をしながら報告を受ける。
アリーゼの話によると今回連れてきた市民達の八割はエデン行きを決めたらしい。
残り二割は王国に残る決断をしたとの事だ。
騎士の立ち会いの下話をしたので、既に王国側には報告が上がっており、王国の決定次第手続きに入るらしい。
重要な話はそれ位で後は俺への面会希望が殺到しており、それを断る作業が大変だと愚痴をこぼされた。
「皆に苦労を掛けて申し訳ないな。人材確保を急ぎたいが、誰でもいい訳では無いからな。気になる人材がいたら採用してくれ。俺とサクラの決済は不要だ」
「何かあればカミーユと私が責任を取るから、貴方達は何も気にせず動いてね」
夜中に熊どんとシードルが此処に来る事を伝えお開きとした。
俺とサクラも寝室で寛ぐ。
「サクラ。今夜クレティアに呼び出しを受けていてな……。どうやらクレームらしい」
「あら。怒られるような事したの?」
「神罰を勝手に執行した事か、像の進捗が悪い事かなと思っているが……。判らない」
「クレティア様はその程度の事で怒らないと思うのだけれど……」
俺もそう思う。
クレティアが怒るイメージがどうしても出来ない。
「それと、もしかしたらサクラも一緒に呼ばれる可能性もあるから、一応伝えておく」
「わっ、私も? もしかしてカミーユの妻失格って事かしら……」
サクラの顔色が見る見るうちに青くなっていく。
「それは無いと思うぞ。サクラに祝福を授けたい神がいるらしくて、クレティアの立ち会いが無いとそれが出来ないらしくてな。サクラが呼ばれるとしたらその件だと思う。まあ、今日呼ばれると決まった訳では無いが、いきなりクレティアの前に出ても驚くだろうから、念の為に伝えただけさ」
「クレティア様から呼ばれるとして、
「タイミングは俺も判らない。突然眠気が襲ってき……」
――
「あら。おはようカミーユ」
「あっ、ああ。久しぶりだなクレティア」
気がついたら神界のクレティアホテルだ。
毎回前触れも無く意識を飛ばされるのはどうにかして欲しい。
「貴女は初めましてねサクラさん。私が女神クレティアよ」
「あっ。おっ、お初にお目にかかります女神クレティア様。私ルシアナ・ヘノベバ・レムス・ムルシア改めサクラと申します。この度は女神クレティア様にお会いする事が出来て感謝いたします。それと……」
「堅苦しい挨拶は不要よ。貴女は私がカミーユの妻として認め祝福したのだから。貴女には感謝しているのよ?」
「かっ、感謝ですか?」
「そうよ。カミーユは女性に不慣れでしょ? 私の夫となる時にそれでは困るのよ。しっかり鍛えてくれている貴女には感謝しか無いわ」
「滅相もございません。クレティア様が素晴らしい肉体を作られたので……。はい……」
顔を赤らめ恥ずかしそうにするサクラを見る事が出来るとはラッキーだ。
そして本人を目の前にして何て話をしているのだこの二人は。
「クレティア。クレームがあると聞いたが……。何か都合が悪い事があったか?」
「クレーム? 貴方に? 得には無いのだけれど……」
クレティアの後ろで澄ました顔で控えているヘルピーと目が合う。
スッと目を反らすヘルピーが怪しすぎる。
「日報や週報の中身が薄くて困るとヘルピーには伝えたけれど……。その分、本の内容は充実してはいるけれど……」
「クレームって、ヘルピーへのクレームか?」
「そうね。報告書も盛りすぎてる感があるし……」
「まっ、マスター。私は怒られ慣れていないのです。怒られのプロのマスターと一緒に……。私とマスターは一蓮托生ですし……。ねぇ?」
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