第25話 カミーユのカミーユが カミーユしました

「おお。これは綺麗だな……」

 キラキラと輝く光に包まれて、幻想的な光景が目の前に広がる。


「はい。凄く、凄く綺麗です」

 銀髪が金色に染められ、エメラルドグリーンの瞳は黄金の向日葵のように輝き、彼女をより美しく、幻想的に輝いていた。


「美しい。こんなにも美しく輝く女性を俺は見た事が無い」

 

 女性を褒める。成功体験したばかりだからな。

 忘れる事無くきちんと言葉にして伝える。


「あっ、ありがとうございます。そ、その……。カミーユさんも凄く……。凄く素敵です」


 そう言いながら身を寄せてくる。

 相変わらず薔薇の香りが彼女の身体から放たれている。


 どうしたら良いのか判らないが、そっと抱きしめておこう。

 今の俺は乗りに乗っている。

 俺の直感は間違っていないだろう。


「あぁ……」


 艶めかしい声が漏れてくる。

 これ以上は無理です。もう、動けません。

 カミーユのカミーユがカミーユしている事がバレてしまうので動きません。


 暫くすると光が収まった。

 カミーユのカミーユも何とか治まった。


「折角なら、このまま此処で話を続けよう。君の話を聞かせてくれないか?」


 そう言って彼女をエスコートしながら、以前作った切り株のテーブルとロッキングチェアの元へと移動する。


「ちょっと待っていてくれ。もう一つロッキングチェアを作るから」


 ささっとロッキングチェアを作った。


「凄いですね。私は風魔法には自信があったのですが、自信を無くしそうです」

「まあ、一度作った事があるからな。初めての場合は此処まで上手くは行かないよ」

「それでもです……。惚れ直してしまいました」


 おう?

 惚れ直す?

 魔法に惚れ惚れするという事だろうか?


「まあ、俺の魔法は置いておいて、君の事を教えてくれないか?」

「そうでした。どこから話しましょうか……。この森へ来た理由は既に話していますし……」

「時間はあるんだ、エルフの郷でどんな生活をしていたとか、些細な事でも良い。君の全てが知りたいんだ」


 治療のヒントが少しでも欲しい。

 得られる情報は沢山ある方が良い。


「はぅぅ……。すっ、全て……。はっ、はい。全て……。はい。だ、大丈夫……」


 どう考えても大丈夫じゃ無いな。


「じゃあ、個人的な話の前に、この世界の歴史とか、エルフとハイエルフの違いみたいな基本情報から教えてくれよ」

「はい。任せて下さい。お勉強は好きだったんです」


 木を持ち直したサクラさんは、勉強が好きだったと言う言葉通り、エルトガド創造の神話から始まり、種族の事や、エルフの歴史についてかなり詳しく話してくれた。


 大変勉強になった。

 情報量が多すぎて覚えきれないが、大変勉強になった。

 おかげで日も傾いてきた。


「おお、もうこんな時間か。サクラの話が上手だから、時間を忘れていたよ」

「あら。ごめんなさい。カミーユさんが聞き上手だから、ついつい話しすぎてしまいました。夕ご飯の準備しますから、待ってて下さい」


 弾ける笑顔が眩しい。

 弾むお胸が素晴らしい。

 弾み具合が彼女の心のバロメーターだろう。


(ヘルピー)

【はい、マスター】

(彼女の話はどうだった?)

【興味深かったですね。天地創造の神話など聞く価値もありませんが、歴史などは大極を見ている私と違う視点で知れました】


 ヘルピーにとっても有意義な時間だったようで何よりだ。


 因みにヘルピーとは頭の中で会話している。

 ヘルピーの言葉は俺しか聞こえないから、俺がしゃべっていると頭が痛い人に見えてしまうからね。


 その後、美味しい夕食を頂きました。

 彼女の料理が美味しい秘密を突き止めたい。

 ハイエルフが理由であれば一生俺には美味しい料理が作れない。


「今日は色々あって疲れただろう。ベッドで休んでくれ。俺はクレティアからお話があるそうだから、ねぐらで寝るようにと指令が来たから、申し訳ないが……」

「そ、そうなんですね……。しょっ、初夜が……。私の覚悟が……」


 またサクラさんの様子が変だ。

 無理をさせてしまっていたようで申し訳ない。


「ベッドと言ってもマットレスも無いのは勘弁してくれ。そのうち街で買おう」

「はい。ゆったりとした大きなサイズの……。小さい方が密着出来て……」


 やはり領主の娘。

 小さなベッドでは満足出来ないらしい。

 立派なマットレスを買ってあげよう。


「ゆっくりと休んでくれ。明日の朝食も楽しみにしている」

「はい。料理は得意なんです。精の付く食事を用意しておきます」


 釈然としないが、そろそろ塒へ入っておこう。

 いつクレティアが来るのか判らないからな。

 どうやって来るのかもよく判らないし。

 準備は万全にしておこう。



「カミーユ。久しぶり」


 突然その時はやってきた。

 急に眠くなったと思ったら、あの時のホテルにいた。

 俺の中ではこの高級感溢れる空間はホテルなのだ。


「クレティア。元気そうで何よりだ。相変わらず神々しいな」

「女神だからね。貴方も格好いいわよ」

「それな。鏡が無いから自分の容姿が判らないんだよ」

「大丈夫。私の好みの顔にしてるから安心して。誰が見ても惚れる顔だからね」


 それはそれで問題があると思うのだよ。

 何せ、『引き寄せ』付きだから、余計な問題を引き起こしかねない。

 程々という言葉をこの女神には覚えて欲しい。


「所で、話って何だ? 身に覚えが無いんだが」

「えっ。そんなはず無いでしょ? ヘルピーからは貴方がいけ好かない女にプロポーズしたって聞いたけど。しかも、ヘルピーが私に報告している間に夫婦の宣誓までしたって聞いたけど?」

 

「えっ?」

「えっ?」


「ヘルピー」

「はい、マスター」

「えっ?」


 クレティアの秘書と思っていた女性が答えた。


「そうでした。マスターは私の姿を見るのは初めてでしたね」


 秘書だ。誰がどう見ても美人秘書だ。

 しかも、抜群にエロい。

 パリッとしたスーツを着て、キュッと髪を一つ結びに。

 当然のように眼鏡は掛けられており、出来る女ですとアピールしている。

 そして、巨大な膨らみ。

 スーツのボタンが吹き飛びそうな程のボリューム。

 ハイヒールである事もポイントが高い。


「私はマスターの監視役兼アシスタントのヘルピーです。名前以外最高に気に入った容姿をしています。マスターの願望が具現化した姿でしょう? いつでも踏み潰してあげますよ?」


 ヘルピーの改名もしよう。

 ヘルピー。俺にそんな性癖は無い……。はず……。 

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