第7話 ようやく現状把握

 俺の行動がクレティアに筒抜けという事実は受け入れよう。

 納得はしていないけれど。


「ヘルピー」

【はい、マスター】

「身体能力と魔法能力について、詳しく教えて」

【まず、身体能力ですが、マスターは……



「ありがとうヘルピー。良く判ったよ。復習のために箇条書きで表示して」

【理解出来ていれば表示は不要かと思いますが……。どうぞ】


 ****************

 身体能力

 ・あらゆる能力がエルトガドにおいて圧倒的に優れている

 ・能力を使いこなすためには鍛錬が必要

 魔法能力

 ・魔力量は満タン時エルトガドの全魔素量と同等

 ・能力を使いこなすためには鍛錬が必要

 ・生活魔法に関しては今でも使える(誰でも使える)

 ****************


 箇条書きにすると凄くシンプルだね。

 潜在能力は高いけれど練習しないと使えないし、上達しないって事ね。

 身体能力が高いのは判っていた。石を投げたら巨大な熊の肩を粉砕したからね。

 力の制御が出来ないと、不幸な事故が起きかねないからしっかり使いこなせるようにならないとね。


 魔法は、ヘルピーから教えてもらうから問題無いはず。

 生活魔法を使いながら、魔法に少しずつ慣れていこうと思う。


「ヘルピー」

【はい、マスター】

「使徒基本セットって何かな?」

【生活魔法(極)、最低限の装備、引き寄せの三つです】

「最低限の装備はあの袋に入っていた荷物?」

【そうです】

「引き寄せってのは何?」

【マスターがおもむく先々で、事件が起こりやすくなります】


「つまり、イベント引き寄せ体質……。という事ね?」

【その通りですね。事件を乗り越えながら強制クエストを達成する準備をしていると認識してください】

「了解。練習が出来るって事か」


 失敗が許されない強制クエストだが、練習が出来るのは素直にありがたい。


「それからヘルピー」

【はい、マスター】

「俺はクレティアに知識もお願いしたんだけど、それは授けられてないの?」

【直接付与する事はさすがに難しかったようです。その代わり私が派遣されました】

「どういう事?」

【身体能力と魔法に関してはチートです。これ以上の能力はさすがに創造と終焉の神サイナス様もお認めになりませんでした。そこで、クレティア様は使としての私に、アシスタント機能を付与されました】


 イメージとしては外付けメモリみたいなものかな。

 判らない事があればこれからもヘルピーに頼っていこう。


「頼りにしているよヘルピー」

【頼り過ぎられても困りますので、自分で考えて行動出来るようになってください】

「善処します……」


 何故だろう、心を見透かされている気がします。


「自分でしっかり考えるためにも、エルトガドの基本情報を表示してくれ」

【表示します】


 凄い量のデータが表示された。


 まず、エルトガドに関して。

 

 エルトガドは基本的に地球と同じだと言う事。

 

 一日二十四時間。一週間は七日で、一年は三百六十五日。

 太陽も月も、惑星の数も全て同じ。

 

 地形は少し違うらしい。

 理由は、地球とエルトガドの核を構成する物質の違いらしい。


 神様の研究の一つで、同じ世界を創って、構成している物質が違う事によってどのような変化が現れるかを管理、観測しているようだ。


 どうやら最高神になると、自分の世界(宇宙)を一つ創造出来るらしく、どのような世界を創るかを決めるための研究? 研修みたいな事らしい。


 余談だが、地球にも魔素はあるらしいが、魔素を必要としない種族が繁栄したとか。

 おかげで、エルトガドへ地球の魔素を移動させる事が出来たと。


 因みに恐竜は魔素を取り込む事で巨大化したらしい。

 隕石の衝突で一時期魔素が地球上から消失し、絶滅したらしい。



 次に種族について。


 エルトガドには人族と魔獣がいるらしい。

 人族は、ヒューマン、エルフ、ドワーフの三種が存在し、全種族魔法を使える。

 一番繁栄している種族はヒューマンで、全体の九割を超え、エルフやドワーフは、現在は大国の庇護の元細々と暮らしているらしい。

 

 魔獣は、魔素をエネルギーとして活用出来る動物で、大半が巨大で、人族の脅威になる存在。

 俺が出会った大きな熊さんは、魔獣との事。

 

 魔素をエネルギーとして活用出来ない動物は、地球と同じ動物でだそうだ。一部人族の脅威になるほど強い動物もいるが、ペットも家畜も存在する。


 ヒューマンの国は大小様々乱立しており、大国が三つある。

 センドラド王国、ライオネル帝国、レクストン共和国の三つだ。

 小国は三大国の属国がほとんどで、大国同士の緩衝地帯となっている。

 同時に戦場になる。

 その代わり宗主国からの補助金はかなり大きいらしい。


 モヤモヤするね。どうにかしたい。


 因みに、世界樹があるこの森に関しては、どの国にも属さないそうだ。

 森には魔獣が跋扈しており、人族が立ち入る事は不可能な土地が世界樹の森。


 通称『死の森』


 森は広大で一番近くの街まで、徒歩一ヶ月かかるらしい。

 道を整備して、馬車で行けば一週間。

 

 それから、剣と魔法の世界の定番であるダンジョンは無いらしい。残念。

 しかし、冒険者は存在して、ギルドもあるらしい。

 やはり、魔獣の素材は貴重で、様々な用途で活用されるし、人族の脅威である魔獣は討伐対象だからね。


 これもお決まりで、ギルドは何処の国にも属さない独立機関という建前。

 

 冒険者ギルドでテンプレ発生を少し期待します。


 通貨は、三大国で違うらしいが、商業ギルドがあるので、換金は問題無いとの事。

 他にも各職業別にギルドが乱立していて、国や街によっては支部が無い場合もあるので、各街には必ずギルドなるものがあるそうです。


 総合ギルドは銀行業、不動産業、運送業もやっており、ギルド同士のトラブルの仲裁役でもある。



 そして、宗教。


 我が愛しの婚約者クレティアはエルフが信仰する神だそうです。

 

 ヒューマンが信仰するのは、三大国がそれぞれ祀る神。創作神話の神ですね。

 エルフをきちんと保護していますよと言う政治的配慮のおかげで、各国にクレティアの教会はあるそうだが、現状は厳しい監視下に置かれ、非常に貧しく厳しい状態らしい。


 この現状からクレティアへの信仰心を高めろと。

 現状も使徒契約の事も知らずに自分から提案したのですけれどね。


 失敗して地獄が待っているなら、せめてエルトガドの生活を楽しもう。         

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