第78話 第一回 エデンの森大調査大会

 エフセイ国王が感激して跪いている光景を若干モヤモヤした気持ちで眺めていたが、これである程度旧公国王侯貴族の処遇が決まった。

 残念ながら第一王子は幽閉され裁判に掛けられるが。


 今まで法律など無かったので、憲法を作り、各法律を作らなければならい。


 幸いな事に俺には超有能アシスタントが付いている。


(ヘルピー)

【はい。マスター】

(久しぶりに活躍の場だ。頼りにしているぞ)

【何か勘違いされているようですが、私は常に活躍しています。憲法や各種法律を作るのは私の役割の範疇を超えていますが、他ならぬマスターのお願いですから……。ねぇ?】


 既に『ブラックハイヒール』という超攻撃的な薔薇が夜な夜な絡みついてきているが、神上がりした後の事を想像すると……。


 切り替えていこう。

 起きていない事を憂いてもしょうがない。

 やる事は沢山あるのだ。サクサク片付けて女神像を置き換えていこう。


 神界で唯一俺の希望となっているクレティアのお願いだ。


【マスター。クレティア様は最近誰かの影響での研究に余念がありません。クレティア様の為にもマスターも研究、探求に……。ねぇ?】


 嫌だ。俺は普通の恋愛をして普通の結婚がしたいのだ。

 異世界転生している時点で普通では無い自覚はあるし、許嫁がいる時点で普通の恋愛も望めないが……。

 更に言えば既に第三夫人までおり、第三夫人とは……。ねぇ?

 

 そして誰かの影響と言っているが、ヘルピーの創作物のせいなのは間違いない。


 しかし、希望は捨てない。

 夢と希望を抱いて真面目にコツコツと頑張ろう。


 それから更に二ヶ月ほど我武者羅に働いた。

 既に終戦から三ヶ月経過している。


 大まかな方針と法治国家の概念がアンジェラ宰相初めこの街の幹部と考えている元貴族達にも理解して貰えた。


 それを周知していくのは大変だろうが、人が集まる場所に貼り出したり、各ギルドを通して周知してもらったり、当然自分達が直接市民に説明したりして、徐々に新しい形を浸透させていくしか無い。


 それから、俺のせいで騎士の数が極端に減ってしまったので、魔獣達から有志を募り、国防と街の安全を騎士と共同で行うようにした。

 意外と魔獣達からの食いつきが良かったのが驚きだった。

 魔獣単体で活動しないように、必ず騎士と同行する事が義務づけられている。

 同行する騎士達は最初ドン引きだったが、暫くすると魔獣達との連携や意思疎通が出来るようになっていた。


 その内魔獣達は街のマスコット的存在になるだろう。


 憲法や各種法律の草案を作り、エルトガドや旧公国で問題無いように修正してもらい、裁判所や議会のように今まで無かった制度の運用準備をお願いした。


 皆新しい取り組みで大変だろうが、同時に自分達の手で新しい国が出来ていく充実感も味わっているようで、目には力があり表情も明るい。


 迎賓館一体の土地と旧公国を一帯とした街の整備計画も丸投げしている。

 新たな街のシンボルを何処にどのように建てるのか。市民の代表にも参加してもらって誇れる街にして欲しいと思っている。


 個人的にはエルトガド初の議会と裁判所をシンボルに出来れば良いなと思っているが、どうなるのか楽しみでもある。


 サクサク片付けてと思っていたが、殆どの事を委ねて俺とサクラはクレティア像置き換えの旅に出る事にした。


 各地を回る時にエデンの新たな取り組みを積極的に宣伝していこうと思う。

 エデンの森大神殿や迎賓館、特産品についてもトップセールスを行って外貨獲得をしなければならない。


「という訳で旅を再開する。各国に案内を出しておいてくれ。俺とサクラは一度森に戻ってお土産を準備してくる」

「アリーゼ。ごめんなさいね。これも修行の一環ですから。着実に近づいていますよ」

「はい。この程度は何でもありません。修行の成果を早く見て貰えるようにこれからも励みます」


 誰に何を見てもらうのか恐ろしくて聞けない。

 当事者と思われる俺には何の話も無いのだが……。


 問題の先送りをして世界樹へ向かう。

 エルミーニアさんをはじめ、大神殿関係を直接見てもらった方が良いと判断した人達を引き連れて。


 滞在期間は一週間。


 同行者は皆世界樹や大神殿に圧倒されていたが、限られた時間でやるべき事をやらないといけないので、直ぐさま再起動して色々と調べていた。

 中には鳥の魔獣に跨がり、空から森を観察している猛者もいた。


「国王。エデンの森を利用すれば流通革命が起こりますぞ。各国に赴いた際にその事もさりげなくアピールしておいてください。お金の匂いがプンプンしますぞ」


 目をキラキラさせている人物はエデン観光都市計画の責任者だ。


「街道をどの国に通すのかは重要になるでしょうね。その辺のさじ加減はサクラ王妃に一任されても良いかと思います」


 その辺の機微はエルトガド生まれエルトガド育ちのサクラの方が適任だと理解しているようだ。

 短い期間でその辺を理解している彼は森に常駐予定の外交官だ。


 皆キラキラ目が輝いている。

 短期間ではあるが此処に連れてきて本当に良かった。

 百聞は一見にしかずだな。


 問題は夜な夜な俺の悲鳴が響き渡ると言う事だけだな。

 サクラはだし、『ブラックハイヒール』も当然のようにしているからな。

 ベッドルームにはカロリーバーとポーションが常備してある事が全てを物語っているだろう。


 そんなこんなで『第一回 エデンの森大調査大会』は終了して迎賓館まで戻ってきた。

 ようやくクレティア像置き換えの旅に出られる。

 何せ最初の目的地で躓いてしまったからな。


 目的を達成して、迎賓館に戻ってきたら次は建国式を行おう。


「これより俺とサクラは女神クレティアの依頼により各国を回り女神像を正しい姿に作り替えてくる。留守の間大変だろうが、よろしく頼む」

「国民の為の国民による新たな国造りです。貴方達の功績は歴史に刻まれ語り継がれます。エデンとレオニランの名に恥じない行動を期待します」


「「「「畏まりました」」」」


 サクラの言葉に声を揃えて答礼する。

 似たような事が以前あった気がする……。


「国王カミーユ様及び王妃サクラ様。出立です」


 ユニコーン馬車に乗り込みザクスを先頭にした旅団が出発する。

 通りには多くの人が見送りに来てくれている。

 俺とサクラは窓を開け手を振って応える。


【マスター。クレティア様からの伝言です。『今夜用事がある。サクラも同行するように』だそうです。三人の妻が初めて集合しますね。いきなり四人で……。この節操無しが!】


 理不尽が過ぎる……。 

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