第15話 行列が出来る薬屋さん
エルフの女性ルシアナさんと熊どんの治療は無事完了した。
ルシアナさんに関しては、表面上と言った方が良いが。
熊どんは元気だが、ルシアナさんはまだ眠り続けている。
「と言う事で、土魔法の練習をしよう」
熊どんを治療して見送った後唐突に切り出した。
【どういう事かは判りませんが、お手伝いします】
ありがとうヘルピー。
頼りになる。
「道を
【最終目標を先に聞かせて下さい】
「礼拝堂を石造りの神殿風にして、クレティアの像も俺の魔法で造りたい」
【お任せ下さいマスター。不肖ヘルピー。完璧に仕上げて見せます】
「おっ。俺の代わりにヘルピーが神殿を造ってくれるの?」
【何を言っているのですか。マスターの土魔法を完璧に仕上げると言っているのです】
ですよねー。
知っていましたよ。
「しかし、今までに無く気合いが漲っているな」
【当然です。クレティア様を侮られてはいけません】
ヘルピーはクレティアが絡むと、気合いマシマシなのだ。
「じゃあ、早速煉瓦を作ろう」
【マスター。座学が先です。急がば回れです】
そうなりますよね。
生活魔法の練習の時もそうだったから、そういう気がしていました。
「座学はダイニングテーブルでしようか。彼女の事も気になるし」
善は急げと言う事で、室内に戻って勉強開始。
ヘルピー先生の話によると、土魔法は他の魔法と組み合わせる事によって出来る事が爆発的に増えるらしい。
それは生活魔法で経験しているから納得出来る。
土魔法単体では、俺が道路工事で使ったような、整地をしたり土を固めたりが関の山だそうだ。
土を固めるにも、単に堅くなるようにイメージするのでは無く、隙間を無くすし結合させるイメージを持つとより強固になるらしい。
奥が深い。
ストーンバレットとかストーンランスと言ったファンタジーな魔法は、土魔法で武器を生成し、ブリーズで飛ばすようなイメージ。
生成した物を移動させる時に他の魔法を組み合わせるイメージだな。
それから、分離と合成。
例えば、鉄のインゴットを作りたい場合は、土の中に含まれている鉄のみを抽出する。これが分離。
分離したバラバラな鉄を融合してインゴットを作る。
又、別々の素材を混ぜ別の素材を作る事を融合と言う。
合金も自由に作れる。
作り出すのは、インゴットでは無くても良い。剣でも盾でも良い。
最終形態はイメージ次第で如何様にも変更出来るらしい。
ここで肝心なのが、何と何をどのような割合で組み合わせると目的の合金が完成するかをきちんと知っている事。
勉強は大切なのだ。
それから、石も宝石も土魔法で加工出来る。
ダイヤモンド原石を発見すれば、ブリリアントカットの宝石を作れると言う事だ。
エクセレント。
土魔法は素晴らしい。
お金の匂いがプンプンします。
道路工事の時ヘルピーも下卑た笑いを浮かべていたはずだ。
想像だけれど、間違ってはいないはずだ。
「ヘルピー。目標が決まった。金貨風呂だ」
【……】
あぁ。ヘルピーのジト目が心地良い。
その日は寝るまでヘルピー先生の熱い講義が続いた。
ルシアナさんも目を覚ます事は無かった。
翌朝目が覚めると、何だか外が騒がしい。
魔獣の鳴き声や、息づかいが聞こえてくる。
こういう事は初めてだ。
急いで外に出ようと思ったが、ルシアナさんの様子を確認してから。
一応ノックして部屋に入る。
凄く良い香りが鼻腔をくすぐる。
薔薇の香りのような芳香だ。
窓(ガラス窓は無いよ。壁に穴を開けて鎧戸を開閉するだけ)を閉じているので、生活魔法のライトで部屋を明るくする。
キラキラと輝く銀髪が美しい。
寝顔も大層お美しい。
やはり彼女は目覚めていなかった。
胸が上下しているので、呼吸をしてい事が確認出来て一安心。
掛けていたマントははだけていないが、一応掛け直しておこう。
ヘルピーがジト目で見ている気がする。
他意も下心もありませんから。
念のためだから。
不敬罪で死刑にならないためにやむを得ずの行動だから。
ゆっくりと掛け直す際に、チラリとお胸の膨らみが視界に入る。
【マスター。不敬罪で死刑になりますよ。それから、クレティア様へも日報で報告しておきます】
「いやいや。マントを掛け直す際に、チラッと見えただけだから。不可抗力だから」
【たっぷり五分は見入っていましたが、チラッは五分間ガン見する事だったとは知りませんでした】
「……」
「と、所で外が騒がしいようだが、確認しに行こう」
鎧戸を開けてから、部屋を後にし、外に出た。
魔獣達が動物を咥えて並んでいた。
十頭は超えている。
熊どんが俺に気付いてやってきたので聞いてみよう。
「熊どん、どうなってるのこれ?」
「ぐあおぉう」
仲間に声を掛けたら、傷を治しにやってきた?
手ぶらでは申し訳ないから、食料も持ってきた?
「熊どん。友達多いんだね」
別に羨ましく無いんだからね。
俺は一人が好きだったから一人でいただけ。
友達は多ければ良いと言うわけでも無いしな。
【日本にマスターに友人がいたんですか?】
「も、も、勿論いましたけど?」
【では、クレティア様が嘘をついていると?】
「ごめんなさい……」
大丈夫。エルドラドには熊どんがいる。
親友がいるのだ。
俺は一人では無い。
【マスター。私もついていますよ】
「ありがとうヘルピー」
もしかして、伝説のツンデレ?
デレるヘルピーも嫌いじゃ無いぜ。
「ヘルピー。エリクサーで魔獣達の治療するから、世界樹の葉と実の採取量教えて」
【世界樹の葉を三十枚と実を百個お願いします。大きな容器を作って飲ませましょう。流れ作業が最善です】
エリクサーを大量生産。
バスタブを作って、その中にエリクサーをどんどん入れていく。
最終的にゆっくり肩まで浸かれる程の量になった。
「じゃあ、順番に飲んでくれ。持ってきてくれた食料は、飲む前に俺に渡してくれ」
最初は熊どんが飲むのね。
昨日治療しなかったかな?
声を掛けた責任?
毒味は大事?
熊どんの毒味が終わり、次々に魔獣がエリクサーを飲んでいく。
エリクサーってさ、もっとこう、ありがたく頂くものだよね。
俺は世界を変える。
エルトガドではエナドリ代わりにエリクサーを飲む習慣を作る事にしよう。
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