58話 宣戦布告?

【ナユタとウメコが現場検証をした翌朝 5:00】


【月影シノブ視点】




 私は、またしても夢を見ました。


 私は、またしても軍人さんでした。


私(軍人さん)は、野戦病院で女の人に左腕のケガの手入れをして貰っていました。


ベッドに寝た私(軍人さん)は、女の人に包帯を巻かれながら話します。


「いつもすまない。でも、ホノカ。衛生兵の君が俺ばかり面倒を見ていてはいけないだろ?」


「いいのよ。だって、あなたの左手……このままじゃ壊死えししてしまうわ」


「もう、峠は過ぎただろ?」


「だーめ。

 手当てあては念入りに。

 予後が全然違うんだから」


 その衛生兵の女の人は、黒髪セミロングの美人さんです。

比べるのは失礼かもしれませんが、私のお姉ちゃんと同じぐらいの美人さんです。

 

 そして理解はできませんでしたが、私は急に、”愛しい感情”で胸が一杯になります。


私は続けて言います。


「君のお陰で、俺の左腕は義腕にならずに済んだ。だから……」


「だから?」


「だから俺は、もう君には、戦場に出て欲しくないんだ……だから頼むホノカ……」


 と私が言った瞬間、私の口は、とても柔らかい物でふさがれます。


その柔らかい物は、黒髪セミロングの美人お姉さんのくちびるでした。


 そうです。


私と”美人お姉さん”は、キスをしたのです。


 私は、驚愕しました。


 なにせ、現実世界の私はキスなんてした事が無かったからです。


しかも初キスの夢が百合ですか?


ちょっとレベルが高過ぎませんか?


 そして、”美人お姉さん”は、私から離れます。


 私と”美人お姉さん”の唾液が絡まって、私の口から垂れます。


 そして美人お姉さんは、言います。


「もう良いの。”決めた事”だから。

 だって、私……

 那由他と一緒ぐらい、この美しい国……

 ヒノモトを愛しているから」


 美人お姉さんは、そう言いながら私の股の上に跨りました。


 そして彼女は、黒髪のセミロングをかきあげます。


 女の私ですら見惚れるほどの美しさがありました。


 そして、その瞬間、

私の“股の間に付いてるよく分からない物”が、熱くなって来ました。


 変ですね?


 本来、私の股には何も付いていないんですが……。


 ともかく、夢の中の私は何かよく分からない熱い感情で胸いっぱいになり……。


美人お姉さんの軍服を、一気に脱がしました。


 美人お姉さんの綺麗なおっぱいが、壮大に”ポロリ”します。


おそらく、私と同じぐらいのCカップです。


 そして私は……


黒髪セミロングの美人お姉さんの、裸の胸に顔を近づけ……


口を開き……


美人お姉さんのおっぱいの、桜色の……





―――――――


―――――


―――




【月影シノブ視点】



「うわぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!」


と叫びながら、私は目を覚ましました。


 そして、「ガバッ!」と跳ね起きて、あたりを見渡します。


「こ、ここは……どこ??」


 私は、大きく息を切らしながら周囲を確認します。


 まず目の前には、流行りのアニメ――「釈迦しゃかの子」のポスターが目に入りました。


お釈迦様がヒロインを抱いて、流し目のイケメンスマイルで私を見ています。


つぎに自分の隣を見てみると……私が命名した「オノコマちゃん」という名のツキノワグマのぬいぐるみが、敷布団しきぶとんの上でうつ伏せに転がっています。


つまり……様子から察するに、どうやらここは、私の部屋のようです。


 私は、息を整えながら呟きます。


「はぁ……はぁ……。

 なにか……ものすごく……”R18な夢”を見たような、気がします……」


 そして同時に、私は顔がものすごく熱くなりました。


つまり私は、とても赤面しました。


「はっきりと覚えていませんが……私の股が……

 なんか大変なことに……なっていた記憶があります……」 


 そう思った瞬間、私は「ハッ!!」と言って、自分の掛け布団をまくりあげました。


しかし私の予想に反して……

敷布団に“ヒノモトの地図”はできておらず、私はいったんホッとしました。


ですが……確認すべき場所は、“もう一つ”あります。


今の私にとってはむしろ、“そっち”の方が気がかりでした。


ですから私は恐る恐る、寝巻きの間から「白ベースのピンクのストライプ」の“ある箇所”を、人差し指で触ってみます。


その結果は…………


秘密です。


 ともかくそんな……”秘密の理由”で、私の頬はさらに熱くなりました。


 頬が“湯たんぽ化”した私は、自分の枕元に散らばった大量の塵紙ちりがみを目にして、さらに頬を赤らめます。


「まさか私が……R18指定の夢を生成してしまうなんて……。

 “胸筋”とか“腹筋”とかを思い出したのが……ダメだったのだと思います……」


 そして私は視線を落として、寝巻きの間から覗く「白ベースのピンクのストライプ」を見て、独り言を続けます。


「それにしても、知識はありましたが……。

 まさか、”あんな“事になってしまうなんて……。

 しかも挙句……寝落ちしてしまうなんて……」


 そして昨日の夜の自分の“痴態”を思い出して、私はさらに恥ずかしくなり、もっともっと顔を赤くします。


そして私は枕に顔から突っ伏して、「あああああ!!」と言いながら両足をバタバタさせてしまいます。


思い出すだけで恥ずかしくて死にそうです。


いや、むしろ……


柔らかな枕が私の鼻と口を完全に塞いでしまい、「ヴェ!!」とうめきながらマジで死にかけました。


だから私はすぐに「ぷはぁ!!」と言って、枕から顔を離し、天井を仰ぎ、新鮮な空気を吸います。


そのことで私は、なんとか一命を取り留めました。


しばらくして息を整えた私は、落ち着きを取り戻し、自分の胸の上に両手を置きます。


そして、色んな事に思いを馳せます。



 私は昨日気付いたのですが……プロデューサーさんは、お姉ちゃんの事が好きになっていると思います。


そしてお姉ちゃんも、プロデューサーさんの事が好きです。


お姉ちゃんの事ですから、あの手この手でプロデューサーさんを落とそうとするに違いありません。


ワンチャン……プロデューサーさんは、お姉ちゃんの魔手に完全に絡めとられている可能性すらあります。


そして、聡明な皆さんなら、もしかしたら既にお気づきかもしれないですが……。


私は意図的に、お姉ちゃんがバイセクシャルである事をプロデューサーさんにバラしました。


そうする事で、プロデューサーさんとお姉ちゃんの関係に距離が出来ると思いましたので……。


そうしたら、もしかしたら、プロデューサーさんは私の方を振り向いてくれるかも知れないと思いましたので……。


ですので、私は卑怯ひきょうな手段をとりました。


お姉ちゃんの秘密(まあ、そこまで秘密でも無いんですが)をバラす事で、2人の中を裂こうとしたのです。


だって、プロデューサーさんは重度の足フェチですから、美脚黒タイツのお姉ちゃんに私が勝てる筈がありません。


私は、どっちかと言うとかなり“和風”な体型ですから……。


 そして勝ち目が無いのなら、何か策をろうしなければなりません。


だから私は、”卑怯な手段”をとりました。


お姉ちゃんの秘密をバラして、彼女の事をおとしめようとしました。


しかしそのことで、昨日の夜、私は激しく自己嫌悪しました。


すごく後悔したし。悲しくもなりました。


人の秘密をバラすなんて……。私はなんて嫌な女になってしまったのでしょうか……。


だから、こんな駄目な自分は、プロデューサーさんには相応しく無いと思ったんです。


卑怯な自分は、プロデューサーさんに相応しく無いと思ったんです。


確かに……プロデューサーさんは、そこまでイケメンでも無いし、やさぐれてますし、死んだ魚の目ですし、オッパイとお尻と足フェチの博愛主義のロリコン変態さんです。


 それでも、彼は何度も命を賭けて私を救ってくれました。


プロデューサーさんは、いざって時はとてもカッコよく、私を助けてくれます。


そういう時のプロデューサーさんは、1000倍増しでイケメンで……

”白馬に乗ったお殿様”に見えてしまいます。


それに、昨日見たところ、プロデューサーさんは胸板も腹筋も結構あって……何というか、悪くはありませんし。


そんな事をモンモンと考えてしまった昨日の夜の私は……つい、出来心で……“R18な行為”に走ってしまいました。


ひょっとしたら、「シノブはムッツリだから毎日やってるんだろ?」とか、思われてるかもしれませんが、断じてそのような事はなく……昨日が、初めてでした。


きっとプロデューサーさんが私に振り向いてくれない”切なさ”も、あったのだと思います。


初めての刺激と体験で感情が一杯になった私は、なんだか凄く”大変な感じ”になってしまい……すみません……流石に恥ずかしいので、詳細は伏せます。


ともかく、塵紙ちりがみを見ながら、今の私は考えます。


「このままでは、ヤバいです。

 まず、卑怯な私がヤバいです。

てか……卑怯なアイドルはダメです。需要がありません。

 それに……毎夜こんな感じになってしまっていては、“淫乱”になってしまいます。

ワンチャン……すでに“淫乱”になってしまっている可能性もありますが……ともかく、いけません。

 あと、紙を使いすぎるとエコじゃ無いので、“持続可能な社会の発展”をいちじるしく阻害そがいしてしまいます」


つまり私が……卑怯じゃ無い“まっとうな国民的アイドル”になる為にも——

塵紙の使いすぎによる森林の伐採の加速と、それによる地球の温暖化を抑制する為にも——


私は、プロデューサーに振り向いて貰わないといけません!!!


つまり、私、月影シノブは……アイドルとして……

そして、地球の未来を守る為にも!!!!


“まっとうな手段”で、プロデューサーさんを”落とさないと”いけないのです!!!


つまり私は、正々堂々とお姉ちゃんと戦い!!


正々堂々と、プロデューサーのハートをゲットしないといけないのです!!


 そう決意した私は、すくっと立ち上がりました。


そして私は、“宣戦布告”をします。


「お姉ちゃんが“性的”方向で、行くのなら!

私は“バブみ”方向で、行きます!!

 私は、“母性”を使ってプロデューサーさんのハートを狙います!!

母性を用いて、ロリコンのプロデューサーさんを私に“バブら”せます!!

 だから!!まず狙うは!!

プロデューサーさんの首……じゃなく胃袋です!!!

 得意の料理でプロデューサーさんの胃袋を掴んで!

お姉ちゃんに勝ちます!!!!!」


 こうして私の、“恋愛という名の戦争”が始まりました。


本日の朝から私は、婆や【※いわゆるお手伝いさん】に料理の特訓をして貰います。


 きっとツライ特訓になるでしょうが、プロデューサーさんをのハートをゲットする為です。


そう思った私は、寝巻の前を正し、いさみ足で万錠家の厨房にむかいました。


 あ……でも、先に塵紙の山を何とかしないと……。

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