20話 コラボ配信5

 ピチピチのチューブワンピースを着た絶世の美少女ながら、強くて怖い紫電セツナに指をさされ、俺は、あらゆる意味でドキドキしていた。


そんな中WABIちゃんが、紫電セツナのステータスを、俺の網膜ディスプレイ上にコッソリ表示する。


 そうだ。

WABIちゃんは、有能で美人なだけじゃなく気も利くんだ。



― Idol Status―――――――


/// 紫電セツナ ///

lv. 85

バトルスタイル : サイボーグ侍

属性:姉 僕っ子 シスコン 無感情 万年に一人の美少女


攻撃 : 300  防御:150 ボーカル : 30 ダンス : 98 可愛さ : 95


【 陽キャ:20 陰キャ:90 パリピ:1 厨二:90 】


スキル : 剣術 lv.74 居合 lv.80 縮地 lv.79 

    絶対領域 lv.2 格闘 lv.43

    暗殺lv.57

    ☆紫電七刀流 lv.81 ☆雷葬 lv.75


――――――――――――――



 やっぱ、つえーわ。

――という感想しか出てこない紫電セツナのステータスを見ながら、

俺は、ある重要な事柄に気が付いた。


 「絶対領域」というステータスがあるのか……。今度、シノブに取ってもらおう。


 そんな、現実逃避中の俺は、次の織姫ココロの発言で一気に現実に引き戻された。


 “はわり”ながらも織姫ココロは言う。


「ボ、ボクに……何の用?……お姉ちゃん?…」


 俺とシノブは滅茶苦茶に驚いた。

 

 そして、二人で同時に叫ぶ。


「「お、お姉ちゃん!!??」」


 銀髪をなびかせ織姫ココロの方を向いた紫電セツナは、微笑みながら言う。


「息災のようだね。可愛いココロ。

 さあ、今日こそ、僕と一緒に帰ろう。

 二人の愛の巣に…」


 スク水の織姫ココロが首をブンブン振りながら言う。


「い、いやだよ!お姉ちゃん!

 ボク……絶対に一緒に住まないよ?!

 それに愛の巣って何?」


「愛の巣は、先日僕が買った屋敷さ。

ココロと僕が住む為にね?

ココロは一人じゃ何も出来ないだろ?

僕と一緒なら、ココロは何もしなくて良いんだよ?

お姉ちゃんは、炊事、掃除、洗濯…

それにココロのマッサージと、マッサージに、マッサージ……

何だって出来るんだよ?」


「か!家事の事は!!……確かに……

お姉ちゃんが居れば……

助かるんだけど……」


「…だけど…?」


「お姉ちゃんが!寝てるボクを裸にして!!

ペロペロしてくるのが嫌なんだ!!」


「何が嫌なんだい?

可愛い妹が汚れているのなら、『慈しむ』のは姉として当然の責務だ。

もしかして………恥ずかしいの…かい?」


 と紫電セツナは言ったが、「ペロペロは嫌に決まってるだろう」と俺は思った。


 横を振り向くとシノブも、俺の意見に同意している表情をしていた。


 チューブワンピースの絶世の美少女の紫電セツナは、言う。


「あの時の僕は、確かに…

数年ぶりのココロとの再会で気が高ぶり、煩悩が溢れていたのかもしれない……。

 だが、最近は少し冷静になった。

欲望のコントロールも多少は出来るようになった。

 だから、これからココロを『慈しむ』のは…

下半身限定で週6回までにしよう。必ず約束する」


 スク水の織姫ココロが言う。


「多いよ!!あと、具体的に言わないで!!

ともかく……ボクは、今の生活で満足しているんだ……。

ペロペロもいらないんだ!!

 だから!! お姉ちゃんと、一緒に暮らすつもりは無いから!!」


 紫電セツナが笑顔のまま、露出した肩をすくめて言う。


「ずいぶんと、嫌われちゃったみたいだな」


 当たり前だろ。と俺は思った。

シノブも小声で「当たり前でしょ」と言った。


 しかし、一応、今のこの様子も配信されている訳だ。

この「変態姉妹」……失礼……「ピチピチ衣装姉妹」の「ペロペロプレイ」の話を放置していると、流石に腰痛部よーつうーぶにセンシティブ認定されそうだ。

 

シノブのチャンネルが、とばっちりのアカBANを食らったら困るから、俺は仕方無く話す。


「紫電セツナ。俺にも用があるようだが……。

 一体何なんだ?」


 紫電セツナは俺に向き直る。表情は笑顔のままだ。


「それは……思い当たる節があるだろ?」


 俺は言う。


「何の事だ?」


「君の電脳の事だ。パンツァーは『鬼の電脳』だ」


「どうして知っている?」


「僕は、数年前から、パンツァーを追っていた。

 君のパンツァーは、この世に終わりをもたらす」


「一体どういう意味だ?」


「言葉通りの意味さ。”この世の終わり”だ」


 直立していた紫電セツナの手が、腰の刀の柄に当てられる。


 俺達に、緊張が走る。


 紫電セツナは、続ける。


「僕の魂と体は、血で汚れている。

 おそらく死んだ僕は、地獄に行くだろう。

 しかし、そんな事は、どうだって良いんだ」


 紫電セツナの紫の目が黒く澱む。


「許せないのは、ココロに害を及ぼす者達だ。

 私利私欲の為に、この世を汚す者達だ。

 だから僕は、それらを容赦はしない」


 俺は、生唾を飲み込みながら紫電セツナに言う。


「容赦をしないだって?お前の依頼主……キチク芸能社だって相当のクソらしいじゃないか?」


 紫電セツナは言う。


「仕事は仕事だ。必要であれば、彼らに対してだって容赦はしない。

少しでもココロに害する可能性が有るものは、全て斬り伏せる。

 ココロの為なら、この世を地獄に落としたって良いんだ。

僕の、身体も魂も剣も、全てココロの為に存在するからね?

 だから、僕は躊躇しない。

君の様な無害な一般人を殺めることもね?」


「……つまり、アンタは、俺の電脳をどうするつもりなんだ?」


「もう分かるだろ? もちろん……」


 瞬間、俺の目の前から紫電セツナが消えた。


 彼女の声だけを残して……。


「『鬼の電脳』は全て破壊する」


 その声と同時に、風を切る音がし、

金属が激しくぶつかり合う音が響き渡った。


 気付いた時には、俺の喉元の直ぐ前に、紫電セツナの太刀の刃があった。


 しかし、それは俺の首を狩ることなく、停止している。


 俺の体中から汗が吹き出た。


 俺が下を向くと、月影シノブが屈み、紫電セツナの刀を電脳苦無サイバークナイで受けていた。


 ついでに言うと、俺の鼻の前に、月影シノブの頭頂部があった。もちろん良い匂いがした。


 月影シノブは、叫ぶ。


「紫電セツナさん!!

実のところ、私はあなたに尊みを感じ、同じアイドルとして憧れていました!!

だから、悲しいです!!

あなたが――

『ただの人殺し』で!

『サイコパスお姉ちゃん』で!

『ペロペロ変態さん』である事が!!

 要は……”ドン引き”です!!」


 ピチっとした衣装の紫電セツナが言う。もちろん笑顔でだ。


「言っただろ? 全ては、ココロの為なんだ」


 月影シノブが言う。


「例え、そうであったとしても!!

優しいココロちゃんが人殺しをして喜ぶと思ってるんですか!?

あと、ペロペロはあなたの完全な趣味でしょ!!」


 銀髪の紫電セツナが言う。


「僕には僕の正義がある。だから、君と議論するつもりは無い。

それに……僕は知っている。

シノブ君。君は万錠カナタの”忘れ形見”なんだろ?」


 月影シノブが驚愕して言う。


「どうしてあなたが?お父様の名を!?」


 紫電セツナは言う。


「僕は、何だって知っているさ?だってココロの姉だからね?」


 そう言った紫電セツナは突然、身を引いた。


 そのことにより、渾身の力で紫電セツナの斬撃を受けていたシノブは、体制を大きく崩す。


 流れるような動作で、紫電セツナは身体を引き、右手の刀を鞘に戻す。


 彼女が足を広げた事で、ニーハイブーツの絶対領域が大きく露出する。


 そして、身も凍る程に冷たい殺気が、周囲にみなぎる。


 俺は、叫ぶ。


「ヤバい!!!くるぞ!!!」


 しかし、俺の声をかき消すように、紫電セツナの声が冷たく響く。


紫電七刀流しでんしちとうりゅう 三業剣さんごうけん


 その瞬間、紫電セツナは消え、3つの斬撃になった。


 その3つの刃は、正確に、俺の首と腹と脚を狙っている。


 今度こそマズイ!避けられるはずが無い!

 死ななくても5体満足では済まない!!

 コイツは!サイコパス美少女過ぎる!!さっさと逃げれば良かった!!


 と、俺が後悔しつつも、左義椀で自分の首を庇おうとした瞬間……


 またしても金属が激しくぶつかる音が響き渡った。


 そして、俺の目の前に、再び紫電セツナが現れた。


 もちろん、彼女の刃は、

俺の服を裂き、腹の皮膚を数mmえぐっている。


 だがしかし……目を伏せた紫電セツナの顔からは、笑顔が消えていた。


「ココロ……。良いのかい? 僕は手加減しないよ?」


 紫電セツナの視線を追うと、俺の脚の間でスク水の織姫ココロが片膝立ちになっていた。よく見ると織姫ココロの脚は、震えていた。 

 

 ついでに言うと、彼女のスク水のお尻は俺の股間の前にあった。加えてもちろん、良い匂いもする。


 織姫ココロは、いつになく真剣な口調で言う。


「お姉ちゃんの太刀筋なら……ボクだって読めるよ?……だって…ボク……お姉ちゃんの妹だから……」


 紫電セツナは言う。


「やれやれ…致し方ないな…。

 殺戮と教育。どちらも並行しないといけないなんてね?

 覚悟は良いかい?3人とも?

 ——もちろん”死ぬ覚悟”をだ」


 と彼女は、銀髪を煌めかせ、紫の瞳を暗く光らせた。


 ちなみにここで、完全に余談だが……

今、俺の目前1m以内で、美少女3人がくんずほぐれつになっている。


一人は、セーラー服っぽいアイドル衣装で、

一人は、スク水で、

一人は、Eカップのチューブワンピだ。


 もし、この状況で俺の体の数ミリ先を、何度も刃が行き来しなければ、ただの天国なんだが……。

残念ながらこの三人は、バキバキのゴリゴリのアイドルだ。


ポップで可愛い見た目ながらも、一撃で俺の頭を余裕でブッ飛ばす戦闘力を持った、チート美少女達なんだ。


 そんな、状況を楽しめるかと言うと……まあ、普通の人間なら、99%無理だと思う。

残りの1%の奴は、その才能を違う事に活かした方が良い。


 とにかく、こんな感じで「月影シノブと織姫ココロと紫電セツナのコラボ配信」が始まったって訳だ。


 今の俺は、もちろん余裕が無いので、腰痛部は見れないが……


 この時の「月影シノブのニンニンチャンネル」の同接数カウンターは恐ろしい程の勢いで回りまくっていた。


 もちろん、この後、俺の頭が胴体から離れてしまった場合……

そんな情報は全く関係無くなるんだが……

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