21話 トップアイドルと戦おう1


 俺の電脳を狙って襲いかかる紫電セツナに対して、俺達は、シノブと織姫ココロと俺の、三人で応戦していた。



 紫電セツナが「縮地」のスキルで高速移動し、唐突に間合いを詰めてくる。

もちろん衣装は、ピチピチのネクタイ付きのチューブワンピだ。


 俺は紫電セツナに拳銃の照準を合わせながら、

“電脳リンク”を用いて、俺の左前方に居る月影シノブに警告を出す。

【※『』で囲まれた会話は電脳リンクを用いた電脳内の会話です】


『シノブ!右から来るぞ!』


 シノブが発信する。


『分かりました!』


 シノブは右後方に宙返りをする。


着地と同時に、紫電セツナの4つの剣撃が、彼女を襲う。


 月影シノブは、2つの剣撃を電脳苦無サイバークナイで捌き、残り2つの剣撃をシールドで防いだ。


その反動で、シノブは防御姿勢のまま、10m左後方に飛ばされる。


『大丈夫か!?』


『はい。怪我はありません。

 ただ、セツナさんの剣撃、重過ぎです。

 一発でプロデューサーさんの頭蓋骨が粉々になるぐらいです』 


 怖いから具体的に言うなよ。怖いじゃ無いか。と思いながら、俺はシノブの様子を確認する。


息は少し上がっているが、まだ大丈夫そうだ。この調子であれば、しばらく戦闘を続けられるだろう。


 俺は視線をスク水の織姫ココロに移し、電脳リンクを使って指示を出す。


『俺が拳銃を発砲し、紫電セツナの注意を逸らす。その隙に攻撃を頼む』


 織姫ココロが発信する。


『うん…… お願いするよ』


 俺は、紫電セツナが納刀した瞬間を狙い、拳銃を発砲する。


 紫電セツナは、半身をひるがえし、弾丸を避ける。


 それと同時に、織姫ココロが刀を振り、言う。


織姫一心流おりひめいっしんりゅう 極光閃きょっこうせん!!」


 織姫ココロの刀から、電撃の塊が射出される……


が、紫電セツナは横に飛び、それを躱す。


 織姫ココロの「極光閃」の電撃は、

そのまま直線に飛んでいき、ネオン信号機を弾け飛ばした。


 俺は再び、紫電セツナに発砲しながらも、月影シノブに電脳リンクを発信する。


『すまない!弾丸が切れそうだ!!』


 シノブから返信が来る。


『大丈夫です。持ちこたえられます!!

 一度下がって、リロードして下さい!!』


 続いて、織姫ココロから、電脳リンクの発信が来る。


『(おねえちゃん…強い……。

シノブちゃんも、なんとか戦ってる…。ボクも頑張らないと……。)

 (……でも、ずっと戦ってると、ボクのスク水が……どんどん食い込んで……色々こすれて……

シノブちゃん見てたら……ボクの……お股が熱くなって、なんだか…)』


 そこまで黙って聞いてた俺は、慌てて織姫ココロに電脳リンクで発信する。


『織姫ココロ!!

 電脳リンクに、思考内容が載って、個人的な事が全部、筒抜けになってるぞ!!』


 織姫ココロから返信が来る。


『はわわわわわ!!

 き、聞いてたの??

 シノブちゃんのプロデューサーさん??』


『と、ともかく、俺は一旦、戦線離脱する!!

 シノブと共に頼んだぞ!!』


『はわわわわわ!!!わ、分かったよ!!』



 「はわり」ながらも懸命に戦っている織姫こころを見ながら、俺は走って戦線から離れ、拳銃のマガジンを交換しながら、呟く。


「マズいな…」


 ここで、ロリ戦闘AIのSABIちゃんが、ホログラムで俺の目前に出現する。


「格闘スキル持ちのシノブは、それを防御に転用する事で、ギリギリ攻撃を防げるけど……

 ココロの剣術は、かすりもしないし……

アンタは、拳銃での援護が精々だし……

かと言って全員で攻めれば、100%全滅よね?

つまり、今のままならアタシ達、ジリ貧なんだけど……。

 あんた、人間でしょ?何か良い作戦無いの?」


 俺は、SABIちゃんのペタンコの胸を確認してから言う。


「俺に聞くのかよ?

 SABIちゃんは『戦術特化タイプ』だろ?」


 SABIちゃんが、ツンデレに怒声を放つ。


「アタシのSONSHI戦術アドオンを持ってしても、どうしようも無いから、あんたに聞いてんの!

 アタシだけでなんとかなるなら、質問しないわよ!!」


 AIなのに、SABIちゃんは、なぜこんなにツンデレ口調なんだ?

多分、設計者の妙な拘りだな。

 …と俺が思っていると、我らが天女のWABIちゃんが、ホログラムで出現する。


「ナユタ様の電脳の不安を考えれば、あまり推奨は出来ませんが……

 あるいは、パンツァーを起動できれば、現状打破の可能性はございませんか?」


 俺は、WABIちゃんのEカップを確認して答える。


「パンツァーの起動に躊躇は無いが、あれを見てみろ」


 と、俺が指をさすと……


 紫電セツナが、月影シノブの攻撃を受けた瞬間、消え、5mほど後ろに姿を現していた。


「紫電セツナの動きが速すぎて、いつ時間を止めれば良いのか分からん」


 ロリのSABIちゃんが言う。


「やれやれ……噂に聞く超高性能電脳のパンツァーも使用者がこうじゃ、かたなしね?」


「え?俺が悪いのか?」


 大人のWABIちゃんが、真面目な顔で俺に聞く。


「ちなみに……どなたのパンツを、ご覧になられるおつもりですか?」


 なんて、答え難い質問なんだ……と俺は思ったが、一応、答える。


「シノブは、ゴリゴリ戦ってるし……

 織姫ココロは、スク水だからノーパンツだし……

 紫電セツナは、近付いたら頭蓋骨粉砕されるし……

というより、あの戦場の中に入っていったら、俺なんか一瞬で死ぬ気がするんだが?」


 SABIちゃんが、笑いながら皮肉っぽく言う。


「それも、そうね。笑えるわ」


 全く笑えないんだが。と俺は思った。


 ここで、胸の上のコアを点滅させ、考え込んでいたWABIちゃんが意を決した表情で言う。


「ワタクシの――は、どうでしょうか?」


「え?」


「もし、ワタクシでなければ、SABIちゃんの——でも良いのですが……」


「え?どういうこと?」


 SABIちゃんが腰に手を当て、WABIちゃんに言う。


「ちょ、ちょっと!!WABIちゃん!?なに言ってんの??

 あんたもしかして……アタシ達が、この男にパンツを見せないといけないって事??」


 WABIちゃんが言う。


「ええ。そのとおりです」


「え!?嫌なんだけど!?っていうか!……

”AI検証”で禁止されているわよ?

 『第2054条 AIをみだらに性的に消費してはならない』って!」


「もちろん。それは存じております。

 AI検証違反をすれば、我々は廃棄処分となり、消滅しますので」


「じゃあ、ダメじゃない!?」


「しかし、パンツァー起動は、第2054条の範疇ではありません。

 なぜなら、”業務上の行い”と言えるからです」


「確かに、そうかもしれないけど……」


 と言ったSABIちゃんは、腕を組みながら、俺の方を見る。


 そのSABIちゃんの表情は、俺を蔑み、汚物を見るかのような目だった。


おそらく……ツインテールツンデレ幼女AIの”蔑み目線”は、一定数の男にとっては、”超”が付く程のご褒美だろうが、俺はまだ、その段階まではいっていない。

しかし、ちょっとだけ「悪くないな」と思った。

 

 ここで、大人なWABIちゃんが顎に手を当て、真剣な面持ちで言う。


「ただ、1つ疑念がありまして――

ナユタ様が、二次元の存在である我々AIに『性癖』…失礼…『愛着』を感じられるのか?

――という点です」


 ここで、俺は一旦、お前達に聞きたいんだが……


もし、お前たちが思う”最高の萌え萌え二次元キャラ”が、「私のパンツを見ますか?」と聞いてきたら、お前らはどう思うだろうか?


そう!それだ!!!


今の俺の感情は、お前達の今の感情と全く同じだ。


つまり!!


「うほほーーーーい」だ!!



 だから、俺は自信を持って答える。


「大丈夫だ!まかせてくれ!!

 俺は、WABIちゃんとSABIちゃんのパンツなら、十分に性癖愛着を感じる事が出来る!!」


 鼻息を荒くし、熱弁する俺を見た幼女のSABIちゃんは、自分の身体を両腕で庇い、ますます表情を歪めて言う。


「ええぇ……。キモイんだけど……」


 その様子を見たWABIちゃんが、SABIちゃんに注意をする。


「SABIちゃん。優秀な”擬似感情”が稼働しているのは、重々に存じておりますが……

 ほどほどにしておきませんと、ナユタ様が我々の『パンツと向き合う』事を躊躇されるかもしれませんよ?」


 「パンツと向き合う」って凄い表現だな。と俺は思った。


 SABIちゃんは肩をすくめ「やれやれ」と言う。


「まあ、WABIちゃんが言うとおり、仕事なら仕方ないわね。

 でも……今回だけよ?

 『いつでもSABIちゃんのパンツを見ても良い』とかって勘違いしないでよね!!」


 とSABIちゃんの完璧な”ツンデレ節”が炸裂したところで、俺は言う。


「パンツァーは俺の電脳を蝕む。

 だから、不用意に使いたくないのが本音だ。

 ぶっつけ本番になるが、パンツァー起動時は頼んだぞ。

WABIちゃん!SABIちゃん!!」


 それを聞いたWABIちゃんは、天女の笑顔で言う。


「ええ。もちろんでございます。

 使用者様の為に働く事が、我々、戦闘AIの役割でございますから」


 それにSABIちゃんが、ツンデレで続く。


「その変わり、ちゃんと作戦を立てるのよ?

 私のパンツを見たのにヤツに有効打を与えられなかった時は、私、本気で怒るからね?」


 俺はサムズアップし、最高の笑顔で答える。


「もちろんだ!!

 君達のパンツは無駄にはしない!!」


 SABIちゃんが明らかに蔑んだ目で俺を見る。


「……もう……最悪……。

 キモイんだけど……コイツ……」


 WABIちゃんが、その言葉に反応する。


「SABIちゃん。

 『ツンデレライブラリー』からの語彙選出をもう少し、マイルドにして下さい。

 ナユタ様の心が、傷つく可能性が示唆されています」


 そんなWABISABI二人の口論を、走りながら聞きながら俺は、全く別の事を考えていた。


 そもそも、

美女と美少女に囲まれたアイドル事務所の、今の日常がイレギュラーなだけであって……


本来の俺は、二次元美女大好きの、生粋の二次元ヲタなのだ。


 パンツァーの持続時間は、発動時に見たパンツへの愛着性癖により変化するが……


 最高の二次元美女or美少女のWABISABIのどちらかのパンツを見た場合、

パンツァーの持続時間は、きっと、今までで最大級の時間停止になるだろう。


 もし「WABISABIパンツ」により2秒以上の時間停止を得られた場合…

この戦況を一気に逆転する事が、可能になるかもしれない。



 ただ一つ、考えなければいけない大切な事がある。


それは、「どっちのパンツを見るか」だ。


大人でセクシー美女のWABIちゃんのパンツか――


ロリでツンデレ可愛いSABIちゃんのパンツか――


――それが問題だ。




―――――――――――――――――――――――


本日から、2章終了まで毎日更新をします。

時間は19:00~21:00(予定)です。


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