25話 トップアイドルと戦おう5
俺は、パンツァーの4秒間の時間停止を使い、9発の弾丸を空中に静止させた。
パンツァー終了と同時に全てが動き出す。
一瞬で状況を理解した紫電セツナは、紫の瞳を大きく見開いて呟く。
「やられたな……」
だが、彼女が気付いた時は、既に遅かった。
9つの弾丸が紫電セツナを同時に襲う。
いくら紫電セツナと言えども、全ての弾丸を避けることは出来ず、4発が彼女の身体に食い込んだ。
金属がへこむような鈍い音が聞こえ、不自然な体勢で、彼女は後方に吹き飛ばされた。
それと同時に、雷葬を発動する為に電気を帯びて空中に配置されていた7本の刀は、地面に落ち、激しいスパークを放ち、方々に飛び散った。
そんな状況を確認し、少しホッと一息ついた俺だったが……。
「ふわぁあああああああ!!」
唐突な少女の絶叫に驚いた。
それは、月影シノブの声だった。
「私のお尻に!!プロデューサーさんが!!!」
と彼女は、自分の尻を押さえようとしたが――その時に初めて、俺の膝の上で自分が寝ている状況に気付き、さらに慌てて叫ぶ。
「ええええ!!!!!??????
私のお尻が、プロデューサーさんの顔だったのに!?
いつの間にか、私の頭がプロデューサーさんの膝に!?」
そして、月影シノブは、さらに大混乱し顔を真っ赤にしてもっと叫ぶ。
「『瞬間移動+強制膝枕』はやめてください!!!
心臓がバクバクし過ぎて全身から血が噴き出します!!」
そう言いながら彼女は、俺の膝の上で、もがく様に手足をバタつかせた。
俺も今更になって、思い出したんだが……
そういえば俺は、
月影シノブのパンツに顔を突っ込んでから、パンツァーを発動させたんだったな……。
正直言って……柔らかさに包まれた最高に幸せな瞬間ではあった。
そんなピンクな回想はともかくとして、暴れるシノブの手を避けつつ俺は言う。
「シノブが起き上がってくれれば……
俺は膝枕を終了できるんだが……」
俺のその言葉を聞いた月影シノブは、一瞬で正気になり――「ハッ」と言いながら、驚くような速さで俺の目の前に正座した。
そして、その瞬間、彼女は顔を真っ赤にした。
驚いたり、恥ずかしがったり、暴れたり、正座したり……
彼女の感情は、かなり忙しそうだった。
そんな月影シノブは、滅茶苦茶に恥じらいながら俺に聞く。
「えっと……
状況から察するに……
もしかしてプロデューサーさん……?
例の『変態さん能力』……じゃ無かった……『パンツァー』を……?」
俺は答える。
「ああ。発動した」
「じゃあ……もしかして……
その……私のパンツを……?」
俺は、正直に答える。
「クマさんだったな」
それを聞いた彼女は、一瞬沈黙したが、
直ぐに”赤を超えたウルトラレッド”に顔を変色させ……
後ろに崩れ落ちながら、叫んだ。
「ふぁあああああああああああ!!」
左向きに地面に倒れた彼女は、青い顔になり悪い夢にうなされているかのような口調で言う。
「オワタ……。 ふふ……。
この歳になって”クマさんパンツ”とか……。
しかも見られちゃうなんて……。
恥ずかし過ぎて、お嫁どころか……学攻にもいけない……。
オワタ……。 ふふ……」
しかし、俺は、”ある事”を決意し彼女に言う。
「シノブ。気持ちは分からなくもない。
しかし、時間が無いんだ。
だから、正気に戻って聞いて欲しい。」
彼女は、涙を浮かべ死んだ表情のまま、目だけをこっちに向けて言う。
「な……なんです……か?」
俺はシノブに、覚悟をして言う。
「もう一度シノブのパンツを見せて欲しい」
「は?」
「俺は、今、紫電セツナに4発の弾丸を撃ち込んだ。
だが……これでは不十分だ。
彼女は、サイボーグだ。
この程度で戦闘能力を失わない」
これは、本当だ。
俺は戦時中に、十発の弾丸を受けても倒れなかったサイボーグを知っている。
だから、トップアイドルの紫電セツナがこれぐらいの銃撃で倒れるとは思えなかった。
俺は続ける。
「俺は、上手く説明できないが……
俺のパンツァーの能力は、見たパンツへの『想い』によって変化する」
道路に寝っ転がり涙を流している少女に対して――「パンツを見せて欲しい」と真剣な顔で言ってる俺は、明らかにヤバい奴だし、色々と終わっているのは重々承知しているが、仕方が無かった。
俺はせっかく掴んだチャンスを逃したくなかったし、何より月影シノブを守りたかった。
月影シノブは、横向きに寝た状態のまま俺に聞く。
「プ、プロデューサーさんの……その……
”パンツへの想い”って……なんなんですか?
……ちょっと…と言うより……だいぶ変態さんなのですが……」
俺は、真剣な顔のまま説明を続ける。
「俺のシノブのパンツへの『想い』の事を、WABISABIは『性癖』と言っていた」
「せ、せいへき!!??」
「しかし、今の俺は……シノブに対する『想い』だと思っている」
「わ、私への想い…!?」
ここまで説明した俺は、腹をくくった。
とにかく、今はシノブのパンツを見なければならない。俺の恥など二の次だ。
分かりやすく、誤解が無いように説明しなければならない。
俺は、さらに真剣な顔で月影シノブに語りかける。
「俺は、シノブの事を大事に想っている。こんなところで死んで欲しくない」
「へ!?え!?
プロデューサーさんが、私を『大事』に!?
ど、どどどどういう事ですか??」
俺の言葉を聞き、青かったシノブの顔がみるみるピンク色になっていった。
ドギマギしているようにも見える。
しかし、俺は、それに構わず続ける。
「言葉の通りの意味だ。
シノブは俺にとって大事な存在だ。
俺は、君の事を自分以上に、大事に思っている。
もし、シノブに何かあった時、俺は後悔してもしきれない。
だから、シノブ。君のパンツを俺に見せて欲しい。
パンツァーを再び起動させて、君を守りたいんだ」
「わ、わわわわ私の事が『大事』って!?
そ、そそそそれが!
どうして私のパンツに繋がるんですか!?」
「君のパンツじゃなければダメなんだ!」
「え!!ええええ!?」
「君のパンツを見た時、俺のパンツァーが最高の性能を発揮するんだ。
つまり……シノブのパンツが俺にとって最高のパンツなんだ!!」
「・・・」
熱弁しながらも俺は――「そろそろシノブに殴られるかもしれないな」と思った。
あるいは、「ロリコン地獄」に堕ちて永遠にロリに地獄の責苦を受けるかもしれない。
いや?それはご褒美じゃないか?
そして、俺の予想に反し、
シノブは「俺の説得という名のタダのセクハラ発言」を聞いても、暴力行動には出なかった。そして、起き上がり、座って考え込む。
しばらく考えた彼女は、俺から目線を外し、お姉さん座りのまま桃色の顔を俯け、恥ずかしそうに俺に聞く。
「じゃ、じゃあ……
私……どうすれば良いんですか……?」
シノブの、いつもと様子の違う、恥ずかし気なそのセリフに、俺は驚いた。
「え?」
「私…… プロデューサーさんに……
どんな感じで……その……
……パンツを見せれば……
……良いんですか……?」
「え? い、いいの?」
「よ、よよよよよ……良くは無いです!!
で、でも!
プロデューサーさんが言ったんですよ??」
「そ、そうだったな……」
殴られても仕方ないと思っていた俺は、シノブの意外な肯定に、徐々に冷静になって来ていた。
本人が”OK”と言っていても……良いのだろうか?
俺は、もうすぐオッサンになる年齢だぞ?
少女にパンツを見せてもらって良いのか?
ヤバくないか?色々と?
ここでなぜ、いきなり冷静になるのか俺も不思議だったが……まあ、仕方が無いだろう。
美少女みずからパンツを見せて貰う経験なんて、産まれて初めてだからな……。
しかし、シノブは恥じらいの表情を増しながら続ける。
「で、でも……本当に……
……『最高のパンツ』……なんですか?」
「え?最高のパンツ?」
「こ、これも!!
プロデューサーさんが言われていたんじゃないですか!!
……その……私のパンツが……
……プロデューサーさんにとっての……
……最高のパンツだって……」
ここで一つだけ、みんなに留意して欲しい事は……
俺がこれまでの発言を「軽々しく行なった」訳じゃないって事だ。
いくら俺でも、常識は弁えている。
公共の場で美少女に「君のパンツを見せて欲しい」って言って回っている人種じゃないんだ。
つまり、俺なりに命掛けで今までの発言をしたって訳だ。
それだけはどうか、理解してほしい。
――そんな感じで、後ろめたさを感じ始めた俺だったが、
一方で、お姉さん座りの月影シノブは、自分のスカートを押さえてモジモジしながら言う。
こんな時になんだが……その様子は、結構可愛かった。
「……勘違いしないで欲しいんですが……」
「な、なんだ……?」
「……私は、誰にでもパンツを見せるような軽い女の子じゃないです……」
それは、もちろんそうだ。
そんな女は、黄泉川タマキだけで十分だ。
「……あ、ああ……それはもちろん理解している」
彼女は、さらに恥ずかしがりながら言う。
「……それに、これが大切な事じゃなかったら、
……絶対にしません……
……その……パンツァーの為に、
……必要なんですよ……ね?……」
「……そ、それは、もちろんそうだ。
パンツァーの為だ」
「……私のパンツが……プロデューサーさんの
……さ、最高のパンツって……
ことですよね……?」
「そ、そうだな……。
君のパンツは俺にとって最高のパンツだ」
「……じゃ、じゃあ……
……分かりました……
……ちょっと……待って下さい
……ね?……」
と言った月影シノブは、
お姉さん座りの状態のまま、両手を使って、後ろを向き……
上半身だけを起こした。
片膝立ちになっていた俺の視線の先に、月影シノブの尻があった。
そして、俺に背を向けた彼女は、顔だけを左に向けうつむき、流し目気味に俺を見た。
薄紫のセミロングの間から彼女の瞳が見えて、俺には、それが潤んでいるように見えた。
少し呆けた顔をした俺の視線に気付いた彼女は、
頬を桃色に染め、目をつぶり言う。
「あ、あまり!!
私のお尻をマジマジと見ないで下さい!!
は、恥ずかし過ぎます!!」
「す!すまない!!」
と、俺は少し目を伏せたが……
その視線は、彼女のニーソとフレアスカートとの間の絶対領域と合った。
彼女のシミ1つないハリの良い太腿は、ネオンの灯りに彩られてピンク色に見えた。
俺の目は、ヤバイぐらい泳いだ。
羞恥心から耳まで桃色になったシノブは、少し涙を浮かべ再び俺に目を合わせて、言う。
「……じゃ、じゃあ……いきます……ね?……」
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