18話 コラボ配信3
【月影シノブ視点】
私は、夜になったキンザの空に飛び上がります。
ナノマシーン衣装で「忍術lv1」のスキルを発動し、ワザをコールします。
「カトンまぐなむ!」
同時に私のナノマシーン衣装の手甲からマイクロミサイルが発射されます。
次の瞬間、“カトンまぐなむ”が命中した敵の
そして、私が着地したと同時に、敵さんが、私に向けて機関銃を斉射します。
「ボクに任せて!」
と言った、織姫ココロちゃんが、私の前に立ち、スク水のナノマシーン衣装から、
水色のシールドを発生させます。
敵さんの機関銃の弾丸は、ココロちゃんのその水色のシールドで跳弾し、近くのネオン看板を貫きます。
「パパン!パパン!」と、いくつものネオン管が弾ける音がして、ガラスの破片が私達の周りにキラキラ落ちてきました。
私は、笑顔でココロちゃんに言います。
「ありがとうございます!ココにゃん!」
「シノブちゃんの為なら……これぐらい……平気だよ?」
再び、ココロちゃんと私は、走り始めます。
—————
その理由は……お店の中で闘うと民間の人達に被害が出てしまうからです。
そして、私達はSABIちゃんが提案する「機動戦」という作戦を採り、
「車道を走りまくり敵さんを倒す」って感じのヤツを繰り返していました。
東奉行所のSABIちゃんは、こういった作戦を立てるのが得意な戦闘AIですから、今のところ私達は順調に戦っています。
ここで、我らが西奉行所のWABIちゃんのホログラムが出現します。
「シノブ様!
ナユタ様が、バイクにてこちらに急行中です!
到着予想は、約5分後です」
私は、めっちゃ驚いて聞きます。
「え!?プロデューサーさんって入院中じゃなかったんですか!?」
「ええ。そうでしたが……ナユタ様は、担当医様の制止を無視し、病院を抜け出されました。
よって、現在こちらの救援に向かっています」
という事は、プロデューサーさんって、私の為に、病院を抜け出して来たんですか?
——と思った瞬間、胸が「きゅっ」と締め付けられました。
そしてその、本日最大の締め付けられる想いに、私は滅茶苦茶に戸惑いました。
そして、今気付いたのですが……
この種の胸の締め付けって、ちょっと気持ちが良いんです。
え?
胸が苦しいのが気持ち良いって、私って変態さん??
ついにプロデューサーさんの変態さんウィルスがクラスター化したんですか??
——みたいな感じで、かなりパニくった私は、走りながら頬を真っ赤にし、訳の分からない事をのたまいます。
「そ、そうなんですね……プロデューサーさんが援軍で……白馬に乗って……関ヶ原に駆け付けて……小早川を……」
そして私は、さきほど高級パンツが買えなかった事を後悔します。
なぜなら今日の私のパンツは、「若干問題あり」だからです。
あ……いや。違いますよ??
プロデューサーさんにパンツを見せる為じゃないんですよ!?
あくまで、オシャレの観点から「若干問題あり」なんですよ!?
だって…今日のパンツはその……
お母様が何故か唐突に買って来たやつなんです。
だから、ちょっと子供っぽ過ぎるって言うか……
お尻部分の模様の主張が強過ぎると言うか……
恥ずかし過ぎるって言うか……
そんな感じに私が本日のパンツに不安を抱き始めたところで、ツンデレ幼女のSABIちゃんが現れ、現状の報告をします。
「ナユタが一番近かったようだから、彼が一番最初に救援に来るわ。
ただ……西奉行所、東奉行所本体の救援は時間がかかるみたいね……。
だから、それまでは、このまま『機動戦』を続けて持ち堪えるのよ!!」
織姫ココロちゃんが走りながら、SABIちゃんに質問します。
「『機動戦』って事は……
このまま走って逃げて……
敵さん達をアタフタさせれば良いんだね?」
SABIちゃんは、小さな手を腰に当て、少しプンプンしながらツンデレに答えます。
「理解の悪い子ね??
要は、ヒット&アウェイの一撃離脱よ!!
ココロとシノブの速さなら、アイツらみたいな素人の銃撃には当たらないから、とにかく走って翻弄するのよ。
そして、孤立した敵を、さっきみたいな二人の連携で各個撃破するのよ!!
ただし、狭い所には要注意よ!
敵に囲まれたら蜂の巣にされちゃうわ。理解できた!?」
少し気持ちが落ち着いた私が、言います。
「SABIちゃんの説明は分かりやすい方だと思いますが……。
ただ少し、喋り方が早過ぎます」
ココロちゃんもそれに続きます。
「そうだね……ツンデレも良いけど……
もう少し…優しく……ゆっくり……
話してほしいな」
ツインテール幼女なSABIちゃんは、さらにプンプンして言います。
「私は!ツンデレじゃないわよ!!
アンタ達みたいにスッとろく話すのが苦手なだけよ!」
そこで、大人美人なWABIちゃんが、私達に笑顔で簡単に説明してくれます。
「要は――とにかく逃げて下さい。それで、孤立した敵が居れば倒して下さい。
作戦としては『いのちをだいじに』と捉えて頂ければ良いかと…」
そのWABIちゃんの説明を聞いた私とココロちゃんは、「わぁ!わかり易い!」とか「流石、WABIちゃんですね!」と言って喜びます。
それを見た幼女のSABIちゃんは、大人なWABIちゃんの方を向き、言います。
「ちょっと!WABIちゃん!!
私の仕事を取らないでよ!!戦術は私の役割よ!!」
「そう言われましても……肝心の使用者様に、作戦が伝わらなければ元も子もありません。
ワタクシは、SA型……失礼……“SABIちゃん”よりも語彙の柔軟性には欠けますが、平易な説明をするのは得意でございます。要は『役割分担』かと」
それを聞いたSABIちゃんは、さらにプンプンします。
少々死語ですが、言うならば「激おこプンプン丸」です。
「私の語彙は、ヒノモトのアニメ100年分の『ツンデレ口調』の平均値を取った、ツンデレ口調の集大成的な語彙よ!?
あんたの堅苦しい“いにしえのAI 口調”よりも、ぜんっぜん分かりやすいんだから!!」
「しかし、お言葉ではございますが、SA型……失礼……“SABIちゃん”がおっしゃる……」
と言う感じで、ヒノモト最強の戦闘AI WABISABIの二人が喧嘩を始めたところで、私達は、再び敵さん達を発見します。
瞬時にSABIちゃんが索敵結果を報告します。
「敵
前方100m!接近中!
撃破しなさい!!」
続いてWABIちゃんも言います。
「敵は軽機関銃と散弾銃で武装。
接近に伴い、ワタクシが敵エイムシステムをハッキングし無効化します。
よって、正面から撃破可能です」
喧嘩しながらもサイバー戦までこなす賢さは、
流石戦闘AIです。私にはそんな器用な事は出来ません。
優秀な二人のWABISABIのお陰で、ココロちゃんと私は分担して、簡単に敵さんを倒す事が出来ました。
そして、敵さん2体を倒し、また走り出したところで、ココロちゃんが私に言います。
「流石に…… 疲れてきちゃったよ……
それに……
スク水のお股が……擦れて……」
私は、
「確かに、もう30分は走りっぱなしですし、休憩が必要かもしれません。
スク水のお股にはついては……
ノーコメントでお願いします」
と、私達が疲れて来たところで、拡声器の大きな声が聞こえて来ました。
「アイドル共!!聞こえているか!?」
私達が振り向くと、ひときわ派手な違法改造トラックの屋根に乗った
彼の違法改造トラックには、鉄板や、カラフルなネオンや、機関銃がゴテゴテ付いています。
さらに、その車体側面にデカデカと赤く描かれた『天誅』という文字の雰囲気も合わさって「フルアーマーデコトラ」と呼べる感じです。
そして、その——「フルアーマーデコトラ」の彼は、拡声器をハウリングさせながら続けて言います。
「我々、維新の志士!
倒幕新鮮組の志を阻むおこない!!
美少女アイドルの貴様らと言えども、許されざるおこない!!
よって!ソビカの国家元首様の名のもと、ヒノモトの安寧のため貴様らに天誅を下してやる!!」
それを聞いた幼女のSABIちゃんがつぶやきます。
「隣国の国家元首の名でヒノモトの安寧を語るとか……。
あいつらの政治理念……全く理解できないんだけど……」
大人のWABIちゃんもつぶやきます。
「おそらく、あの方達も理解は出来ていないかとぞんじます。
暴走した政治活動集団の成れの果てと言えます」
私は、その「フルアーマーデコトラさん」に向かって叫びます。
「あなたの言ってる事は、よく分かりませんでしたが!!
市民の安全を脅かすあなた達が、犯罪者さんである事に変わりはありません!!
ですからともかく!さっさと投降してお縄について下さい!!」
私の話を聞いて、フルアーマーデコトラさんは「ガハハ」と笑い、言います。
「笑止千万!!
ならば思い知るが良い!!
キチク芸能社からパクった…じゃなかった…借り受けた、この秘密兵器の異様を!!」
そう言って、フルアーマーデコトラさんは、アタフタとトラックの屋根の上から降りて、荷台に向かいました。
私がその様子を見てると、私の後ろから声が聞こえて来ます。
「すまない。待たせたな」
そこには、息を切らせたプロデューサーさんが立っていました。
私は、喜色満面に言ってしまいます。
「プロデューサーさん!!??」
でも彼の顔を見たその瞬間……
私の胸は「きゅん」どころか「ズギューン」って感じになってしまい、顔が信号機よりも真っ赤になってしまいます。
やはりこれは……心不全!?
てか、私の顔!熱すぎ!!
やっぱ、私、死ぬの!?!?
——という感じで、死を意識し始めた私を他所に、プロデューサーさんは質問します。
「ヤツらは何をしてるんだ?」
顔が茹でダコ化して行動不能の私に代わり、WABIちゃんが説明します。
「現時点では、詳細は不明ですが、
敵の
「最終兵器?……ってなんだ?」
とプロデューサーさんが言ったと同時に……
デコトラの箱型の荷台が、昼間のような明るさでスポットライトに派手に照らされます。
そして、ゆっくり荷台の扉が上方向に開き……
スモークと共に、蛍光レッドの塗装が輝く、カッコいいロボが出て来ました。
そのカッコいいロボのコックピットには、先程の「フルアーマーデコトラさん」が乗っていました。
そして、彼はドヤ顔で言います。
「ふははははははははは!!
政府の犬共!恐れおののけ!!
これが!キチク芸能社の最新鋭パワードスーツ!
——『
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