81話 アンテナを目指せ3
【織姫ココロ視点】
みんな。元気かな?織姫ココロだよ。
ちなみにボクは、あんまり元気じゃ無いんだ。
なぜならそれは……シノブちゃんが作戦の為に、ボクと離れ離れになっちゃったからなんだ……。
それに加えて……もう一つ気になる事が、ボクにはあったんだよ……。
だからボクは、銀色にピカピカ輝くおっきな螺旋階段を登りながら、ぼそっと呟くよ。
「シノブちゃんの……パンツを……ナユタさんが?
もしかしてナユタさん……見てるの?……シノブちゃんのパンツ……。
どうして?」
そう言いながら僕は、目の前のナユタさんの背中を不安げに見るよ。
ひょっとすると、もしかして……シノブちゃんとナユタさんって……パンツを見たり見せたりする仲になっちゃってるのかな……。
それってもしかして……二人は恋人どうしなの……??
じゃ、じゃあ……ボクの……シノブちゃんへの”想い”って……。
どうなっちゃうの……??
そんな事を考えるボクの網膜ディスプレイ上に、SABIちゃんが現れるんだ。
「やれやれ……ココロ……。
あんたも、月影シノブのパンツにご執心なのね……」
「ふぇ!?はわわわわ!
き、聞いていたの!?SABIちゃん!?」
「『聞いていた』も何も……。
アタシだって一応は、アイドル専属の戦闘AIよ。
ココロの事は逐次モニターしているに決まってるじゃ無い?」
そんなSABIちゃんの言葉にびっくりして、ボクは言うよ。
「『逐次モニター』……って……もしかして……。
SABIちゃんって、ボクの昨日の夜の事も……見てたの??」
SABIちゃんは、
「ええ。見てたわよ。
昨日の夜のココロは……
月影シノブの名前をなんども呼びながら、布団の中でモゾモゾした後……
寝巻きを脱ぎ、四つん這いになり……
枕で口をふさぎならが、股間に何かをあてがって……」
そんなSABIちゃんの言葉にボクは、とても慌てちゃう。
「は、はわわわわわわわわ!!
ス、スススステイだよ!!
ステイして!!SABIちゃん!!
それ以上いけないよ!!」
SABIちゃんは不思議そうに首を傾げる。
「何がいけないの?
むしろココロが、アタシに“プライベートモード”を設定しないのがいけないのよ?
そうすればアタシはアンタの私生活をモニターしないわよ。
それに……どうして、ちょっと喜んでいるのよ?」
「よ、よよよよよ悦んでなんていないよ???
い、いいいいい“色んな事”を晒されて悦ぶ女の子なんて居ないよ!?」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるボクをよそに、SABIちゃんはやれやれ顔で話題を変えるよ。
「まあ……。そんな事はどうでも良いのよ」
ボクは全然どうでも良くなかったけど、SABIちゃんはボクよりもぺったんこな胸のコアに手を当てて、続けて言うよ。
「今からアンタのアイドル衣装に、パンツを”定義”するわ」
僕はとつぜんの事に、とても驚くよ。
ていうか「パンツを定義」するって……。
ボクは今から、スク水の下にパンツを履くってこと??
だからボクは驚いて言うよ。
「ふ、ふぇ!?
ど、どどどどういうこと?SABIちゃん??」
「『ふぇ!?』じゃ無いわよ。
あんたのアイドル衣装はスク水だから、今までパンツは定義されていなかったけれど……
これからは、ナユタの”パンツァー”の為にパンツを定義するわよ」
「ちょ、ちょっと待って?SABIちゃん!?
ど、どういうこと??
ボ、ボク……今から、ここでお着替えするってこと??
そ、それに、ナユタさんの”パンツァー”って……な、何??」
ボクのそんな言葉を聞いて、SABIちゃんは怪訝な顔をするんだ。
「え?ココロ……あんた……。
ナユタの”パンツァー”のこと知らないの??
昨日アンタの電脳に送信した——『西アイドル事務所 就業規則』に書いてあった筈よ。
”女性職員はプロデューサー(ナユタ)との作戦遂行時、パンツ着用を義務付ける”
……って」
SABIちゃんのその言葉で、きのう送られてきたとても長いテキストデータの事を、ボクは思い出したんだ。
でもボクは長い文章を見ると頭が痛くなるから、それを読まなかったんだけど……。
だからボクは、SABIちゃんにその事を正直に伝えるんだ。
「ま、まだ……読んでないよぉ。
あ、あんな長い文章……むりだよぉ……」
そんなボクの様子を、呆れた蔑んだような目でSABIちゃんは見て
「ココロ。あんた……。本当にバカね……。
ああいった書類は、一度は必ず目を通すもんなのよ……??
まあ、でも……今は、時間が無いわ。
ともかく今から、あんたのパンツを定義するからね?」
とSABIちゃんが言ったとたんに、ボクのスク水の下腹部が緑色に光り始める。
「は、はわわわわ!!SABIちゃん??
ちょ、ちょっと待って??
ま、まだ心の準備ができてなくて!!」
しかしボクの制止もむなしく……ボクのスク水と素肌の間に、ナノマシーンのパンツが形成され始める……。
ところでみんなって……スク水の下にパンツを強制的に履かされたことって……あるかな?
な、無いよね??当たり前のこと聞いちゃった。
も、もちろんボクも無いよ。
だからボクは、”こんなプレイ”……じゃなかった、”こんなこと”は……”初体験”だったんだ。
そんな、初めて起こる下半身の変化と感触に、ボクはとてもビックリしちゃう。
スク水に締め付けられていたボクの脚の付け根や、腰やお尻や、その……人には言えない部分に……サワサワっと……そしてヌルヌルっと……何かがうごめく様な感触が、あったよ。
その、下半身全体を優しく撫でるような、しかし同時に滑らかに包み込むような未知の感覚に、ボクは思わず身悶え、変な声を出しちゃうんだ。
「んっ!!!!
あっ!!
ふあぁぁぁッ!!
ダ、ダメダメダメダメ!!!!
ダメだよぉぉ!!!!
ボ、ボクのお尻と!!お股が!ヌルヌルして!!
こんなガラス張りの!!螺旋階段の!!
みんなから見えるような場所で!!
ああぁっ!!
ふわぁぁぁぁっ!!!」
唐突に起こった下半身への”快感”と、それに付随する羞恥心によりボクは気持ちがいっぱいになって……
右手でお股を、左手でお尻を押さえ、その場でへたり込んじゃうんだ。
そんなボクの様子に驚いて、ナユタさんとウメコさんが振り返るよ。
最初にナユタさんが言うよ。
「き、急にどうしたんだ!?ココロ??
ス、スク水のケツを突き出して?
顔が真っ赤だぞ??」
なんとなく察した顔で、ウメコさんが言うよ。
「ああ……。ナユタ君……”これ”はきっと大丈夫よ。
織姫ココロがちょっと……なんと言うか……敏感過ぎるだけよ。
だからナユタ君は、震えるココロのお尻をじっと見て……鼻の下を伸ばさないでくれるかしら?」
ナユタさんは、ウメコさんの方を振り返って必死に反論するよ。
「ち、違う!!鼻の下なんて伸ばしていない!!
お、俺は元々そういう顔なんだ!!」
「へぇ?
あなたって、元々そんな顔だったのね?
思ってたより面長なのね?ナユタ君って……」
そんな感じで口論する二人をよそに、痴態を見られちゃったボクは、さらなる羞恥心と、パンツによる甘い緊縛感に熱くなり、余計に下半身を痙攣しちゃうんだ。
こ、こんな風になりたくないのにぃ……
と、止まらないよぉ……。
そんなボクにホログラムのSABIちゃんが言うよ。
「ココロ。アンタのアイドル衣装のパンツ……。
これで無事に定義されたわ。
これでナユタは、ココロでもパンツァーを発動できるようになったって訳ね。
……ていうか、大丈夫?ココロ??
よだれを垂らして……目が恍惚としているけれど……」
ボクは階段のステップに頬をくっつけて、お尻を高く上げた体勢のまま、ぼうっとした顔でSABIちゃんに言うんだ。
「う、うん……。
だ、大丈夫だよ……。
こ、こういうのも……けっこう……良いね……。
はぁ……はぁ……。
いつもありがとう……SABIちゃん……」
—————
【ナユタ視点】
突然の織姫ココロの”よく分からないプレイ”に驚いて足を止めてしまった俺達だったが……すぐに、ステンレス製の螺旋階段を登り切った。
目の前にはガラス製の大きな自動扉がある。
おそらくこの先に俺達が目的とする、【通信アンテナ】があるはずだ
そこで俺がふと振り返ると、階段室の大窓から屋敷の門が見えた。
その門の前で
だから俺は、思わずつぶやいた。
「化け物が居る……」
俺が化け物と表現したのは、
大戦中に実戦投入された
バジャラ合金製のヤツらの6cmの装甲は、通常の火器をほぼ無効化する。だから当時の歩兵達は、真っ黒なボディーにグリーンに光る“眼”を持ったヤツらを見た瞬間、恐怖で震えた。
軍に居た頃の俺ですら、
だから俺は、黄泉川タマキの事を「化け物」と言ったんだ。
驚愕する俺の様子に気づいたウメコが、同じように屋外の様子を見ながら言う。
「やはりヤツら……投入してたのね。
つまり……あそこにタマキさんを配置して正解だったってわけね」
「だ、大丈夫なのか?タマキ一人で??」
そうやって俺がウメコに質問する間も、タマキは
そのスピードは、早回しどころか残像が見えそうな程のスピードだった。
彼女の義体の背中から露出した黒い排熱板から蒸気が立ち上がり、彼女が超スピードで通過した空間に“蒸気の軌跡”が描かれる。そのことにより、俺はなんとか彼女の動きを目で追う事が出来た。
俺の質問に、ウメコが答える。
「タマキさんの事なら、1人で大丈夫なはずよ。
たしか彼女は、”霊峰防衛戦”でアレと独りで戦ったことがあるらしいから……」
ウメコのセリフを聞いて過去の大戦を思い出した俺は、言う。
「”霊峰防衛戦”……
終戦まぎわまで続いた、エド幕府の最終防衛線か……。
つまりタマキは……”死線”を越えて、生きて帰ったって訳か……」
「ええ。そうよ。だから彼女の事は大丈夫。安心して。
むしろ……これから危ないのは私達の方だから……。
へい!!
ウメコはSABIちゃんをホログラムで呼び出し、質問する。
「通信アンテナ付近の索敵結果は??」
SABIちゃんはグリーンの粒子から像を結び、ロリ声で答える。
「アンテナ付近のキチク芸能社の陣容は、サイボーグ兵1人ね」
それに俺は驚く。
「サイボーグ1人だけ!?
……妙だな?
SABIちゃん?ソイツの詳細は分からないのか??」
SABIちゃんは平滑な胸に収まるコアを点滅させながら、顎に人差し指をあてて答える。
「アンテナ付近で軽度の通信妨害が発生しているから……
ココロのナノマシーン衣装からの赤外線
だから分かっているのは、そのサイボーグの義体化率が『70%』ぐらい……って事だけだわ」
それを聞いたウメコが言う。
「『義体化率70%』……。
紫電セツナの79%には劣るけれど……先程戦ったサイボーグ達よりも、さらに高い義体化率だわ……」
俺はウメコに言う。
「強敵の可能性が高いな……」
ウメコがそれに同意する。
「ええ……。覚悟して当たる必要があるわね」
ウメコのそのセリフを聞いた俺は、なぜかスク水の股間を気にしている織姫ココロに聞く。
「いけそうか?ココロ??」
ココロは、”はわる”。
「は!はわわわわわわ!!
ナ、ナユタさん!?
イ、イイイイイけるって!?
な、
なぜか両手で下腹部を押さえ、顔を真っ赤にして慌てるココロに俺は続けて聞く。
「相手は、義体化率70%のサイボーグだそうだ。
戦えそうか?」
それを聞いたココロは「そ、そっちのことか……」と呟いてから、自分の腰に装着した刀の
そして意を決したような表情で俺を見上げ、SABIちゃんに負けず劣らずのロリ声で言う。
「ボ、ボク……戦闘は怖いし……苦手だけど……。
し、下のフロアで……シノブちゃんも戦っているから……。
な、なんとか……がんばってみるよ……」
水色のくせ毛の前髪の奥に見えるココロの紫の瞳には、かすかな闘志が見て取れた。
だから俺は言う。
「なら……頼んだぞ。ココロ。
これから、俺と君の初めての
俺は出来る限り、君のサポートをする。
ココロの背中は、俺に任せてくれ。
もちろん、俺が君の代わりに前線に出ても良い。
とにかく俺は君を守る。安心して
俺がそう言うと、織姫ココロは紫のクリクリの瞳を見開き、驚いたような表情になった。
そしてすぐに照れたような表情になり、両手で手遊びをしながら頬を染め
そんな……スク水の織姫ココロの「ロリキャラ専用照れ仕草」を見て、俺はノスタルジックで背徳的なパトスを一瞬感じてしまったが、ロリコンでは無いので平静を保てた。
そうだ。お前達も良く知っているように俺は、「お姉さんキャラ専門の二次元ヲタ」だからな。
この程度で「ロリコン道の門」を叩くほどの半端者では無い。
まあ……ちょっとだけ——
「めちゃくちゃ可愛いじゃないか。容姿だけは完全なるロリ美少女だなココにゃん」
——と思ってしまったが……。
そんな感じで、通信アンテナ攻略作戦——もとい、俺の「織姫ココロ初プロデュース」が始まった訳だ。
まあ、もちろん……ここまで俺の話に付き合ってくれているお前達なら予想が付いていると思うが……
一筋縄では行かないんだがな……。
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