28話 ナユタの作戦3

 俺は、全速力で走りながら独り言を言う。


「もう少しだ!

 もう少しでSUZUSAKI俺の  HXR-3バイクが見えてくる!!

 そこが、俺の“作戦”の“目的地”だ!!」


 俺と月影シノブは、ポロリで戦闘不能になった織姫ココロを残し、キンザの車道を“目的地”を目指して走り続けていた。


 その間も、紫電セツナの猛追はとめどなく続く。


俺は振り返り拳銃を撃ち、月影シノブがその間を縫うように忍術を使う。


太刀を失い小太刀こだちを振るう紫電セツナの攻撃は相変わらず、苛烈だった。


むしろ、彼女の戦闘能力は、さっきより上がっている気すらした。


 ここで、美女のWABIちゃんから報告が上がる。


「数度の死線をくぐる事で、シノブ様のレベルが5に上昇しました」


 さらに彼女は続ける。


「加えて……先程のパンツァーの発動と諸々の行為に伴い、シノブ様の“LP”が3500増加。

 ナユタ様はプロデューサースキル”電脳リンクlv.10”を獲得しました」


 俺は再び「”LP”って何なんだよ?」と思ったが、今は詳細な質問をしている余裕は無い。

 

だから俺は、必要な情報だけをWABIちゃんに質問する。


「俺のプロデューサースキルの”電脳リンクlv.10”って何が出来るようになったんだ?」


 WABIちゃんが答える。


「電脳リンクlv.10は、より高度な”感覚共有”に加えて……

 新たに【エモとら】が使用可能となります」


「【エモとら】ってなんだ?

すまないが戦闘中だから、かいつまんで説明して欲しい」


「分かりました。

 【エモとら】とは”パッシブスキル”の一種です。

所定の条件に達した時に、自動発動する機能です。

いわゆる”強力な【切り札】”と捉えて頂ければと存じます」


「つまり【エモとら】ってヤツは……

俺が自発的に使えるスキルじゃないんだな?

 それに今は、理解してなくても問題無いんだな?」


「はい。そのとおりでございます。

【エモとら】とは、”緊急時の【切り札】”とご理解頂ければ今は問題ございません。

もちろん、起動時にはワタクシがポップアップし、詳細にご説明……」


 ここで、WABIちゃんの説明は強引に中断される。

何故なら、紫電セツナが俺の近くまで踏み込んで来たからだ。


俺は、拳銃を2回発砲する。紫電セツナは、2発の弾丸を小太刀で防ぐ。


「隙ありです!!」


 と言ったシノブが電脳苦無サイバークナイで、紫電セツナに死角から襲い掛かる。


 しかし紫電セツナはノールックで、シノブの攻撃を避け、回し蹴りを放った。


シノブはそれをシールドで受けたが……紫電セツナの蹴りは強烈で、彼女は数十m以上飛んだ。


シノブの体が、路上の高級車に叩き付けられる。


高級車の警報が作動し、大きなアラームが鳴り響いた。


「シノブ!!」


 と叫んだ俺に、WABIちゃんから報告が入る。


「ご安心を。

 シノブ様のレベル向上によりナノマシーンシールドの性能が上がりました。

 シノブ様へのダメージは、ほぼございません」


「助かった!

 ありがとうWABIちゃん!」


 そう言った俺は、改めて状況を確認する。


 織姫ココロは、未だにスク水をはだけた状態で悶絶している。距離は40mぐらいだ。月影シノブは立っているが、これもかなり距離が離れている。


つまり、紫電セツナの雷葬の射程範囲内(20m)には、俺しかいない。


そして、俺の目前5m先にSUZUSAKI俺の  HXR-3愛車がある!


 少し“目的地”には遠いが、“作戦”実行のチャンスだ!

この条件なら、なんとかいけるかもしれない!!


 そんな、俺の様子を見た紫電セツナが言う。


「君の事だ……何か奇策を考えているに違いないが……

 運命は変わらない。つまり……」


 そう彼女が言い終えると、彼女の前の空間にホログラムが出現する。


紫電七刀流しでんしちとうりゅう 七星の備え”終” しちせいのそなえ つい


 表示と同時に、紫電セツナの上半身の人口外皮が次々と外れる。


そして、彼女の上半身の服を突き破り、小太刀が次々と射出される。


数えるのも面倒だったが――紫電セツナの周りの空中に14本の小太刀が配された。


その14本の刃は、空中に規則正しく並んだ。


 そして、紫電セツナは紫の両目を発光させる。


「つまり……君は灰になる。

 もちろん。その『鬼の電脳』と共にね?」


 そう言った紫電セツナの上半身の衣装は、破れまくっていた。


彼女のEカップは露出し、腰痛部よーつーぶ視聴者達が狂喜するような姿となっていた。


しかし、今の俺はそれどころじゃない!


 間違いなく、次の瞬間に雷葬が来る!!

 

 こっちも“奥の手”を使わないと!!


 俺は、叫ぶ。


「へい!!SABIちゃん!! ホログラムで出現してくれ!!」


 俺のコールに対してツインテールロリのSABIちゃんが、現実空間に出現した。


 SABIちゃんは俺と電脳内で会話を始める。


【※ちなみに――電脳内でのAIとの会話は超高速ですので、これより下の会話は0.3秒ぐらいで全て終わる感じです】


 腰に手を当てたポーズのSABIちゃんは、不機嫌そうに俺の電脳内で言う。


『もしかして……。この状況でアタシを呼び出すって事は……』


 俺は電脳内で返事をする。


『ああ!見せてくれ!!SABIちゃんのパンツを!!』


 明らかに蔑んだ目で俺を見つめるSABIちゃん。


『あぁ……マジで最悪……。

 わざわざ、ロリのアタシを選ぶとか……

 やっぱ、アンタ……変態ね?』


『大丈夫だ。俺は真正のロリコンではない……多分。

 だから変態じゃない……多分』


『”多分”って何よ?

 でも、どうしてアタシなの……?

 あんた……WABIちゃんの方に愛着性癖があるんじゃないの?』


 それについては、俺も滅茶苦茶に悩んだ。

しかし、WABIちゃんは俺の”二次元の嫁”とも言える存在だ。


だから、なんと言うか……「とっておきた」かった。


あと、ついでに言うと……

ツンデレロリに嫌々パンツを見せて貰う感じに、どこかノスタルジックで背徳的な愛着性癖を感じ始めていたからだ。


あ、あれ?俺って……

だんだん変態に近付いてないか?

ま、まあ……気のせいか。きっと、大丈夫だろう。


 ともかく、そんな感じの理由を正直に言ってしまうと……

SABIちゃんは元より多方面で「変態さん認定」が確定しそうだったので、俺はこう言った。


『今の俺は!

SABIちゃんのパンツに愛着性癖を大いに感じている!

だから、パンツを見せてくれ!!SABIちゃん!!』


 俺のその狂ったセリフを聞いたSABIちゃんは、細いツインテールを弄りながら、恥ずかしそうに視線を逸らし、言う。


『……もう……マジで最悪なセリフね……』


 さらにSABIちゃんは、やや上目遣いになり、俺に言う。


『……でも……

 アンタが……そこまで言うなら……

 …仕方ないわね……』


 そして、SABIちゃんは立ったまま後ろを向き、少し尻を突き出した。


空中に立つ彼女の未発達で華奢な腰が、俺の目線になった。


 ところで以前に俺は、WABISABIの衣装は「ボディースーツ」と言ったが……

彼女達の下半身は、太腿に大きなスリットが入ったタイトスカートになっている。


そんなタイトスカートの裾を、SABIちゃんは自分の指で摘まんだ。


 そして彼女は、俺に尻を向けた状態から首だけで振り返り、言う。


『一応……もう一度……言うけど……』


いつも、気が強そうな彼女の恥ずかしそうな様子に、俺の煩悩が溢れ出そうになった……が、なんとかギリギリ正気を保った。


 彼女は続ける。


『こんな状況じゃなきゃ……絶対に見せないんだからね?

これが仕事だから…………

………見せてあげるんだからね………?』


 とSABIちゃんは、ツンデレを遺憾なく発揮しながら……

自分の尻を覆う布をめくり上げていった。


 俺に背を向けスカートをたくし上げるSABIちゃんの姿は、先程、シノブが同じ様にスカートをたくし上げようとしてたイメージとダブって見えた。


その事を思い出すと、俺の下半身が再び疼き始めた。

ヤバいしマズイ!!

もしかして、俺は”ロリコン道入門”の入り口に立ってしまっているのか!?

いや、あるいは既に入門してしまっているのか!?

とにかく、このままでは、本気でロリコンの世界へ突入してしまう!!

なんとか、煩悩を沈めなければ!!

 

 と俺が、自分の中の煩悩と戦っているところで……ふと“ある疑問”を感じた。


 『SABIちゃんの可愛い太腿は全て露出した。

 だから、そろそろ……

 SABIちゃんのパンツの布が見えても良い筈だ……。

  しかし、まだパンツの布は見えない……

 つまり…………コレは、もしかして……???』


俺のその”疑問”は直ぐに解決した。



 何故なら、俺の目の前には――


【黒のTバック】


 ――が現れたからだった……。



 だから俺は強烈な煩悩に魂を揺さぶられ、感極まって泣きながら絶叫してしまった。


「うおおおおおお!!!!

 二次元ツインテール萌え萌えロリ美少女の!!!

 黒のTバックだとぉぉぉぉぉおおおおお????

 やっぱ、ロリは最高だぜぇええええええ!!」


 同時にSABIちゃんが、顔を赤く染めて涙を浮かべて叫ぶ。


「いやぁぁぁぁぁああああああ!!

 具体的に叫ばないでぇぇぇぇえええ!!

 このクソ変態っっっっっ!!!!!」


 さらに同時に紫電セツナの雷葬発動の声が聞こえる。


紫電七刀流しでんしちとうりゅう! 雷葬らいそう!! 無量光剣むりょうこうけん!!!」


 しかし、その瞬間……

黒のティーバック以外の全てがモノクロになり、静寂が訪れ、全てが停止する。


俺の超感覚「パンツァー」が起動し、時間が停止した。


 ……ちなみに、俺はまだロリコンでは無い。忘れないでくれ。

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