29話 ナユタの作戦4

 俺がSABIちゃんの「黒のTバック」を見る事で、時間は停止した。


 先ほどは冷静を失って「ロリは最高だ」とか叫んでしまった俺だったが……

SABIちゃんの「左尻と右尻に収まる良い感じの黒いTの字」を見る事で、逆に冷静になる事ができた。


いわゆるこれが、“賢者タイム”って奴だ。

つまり、“無我の境地”って奴だ。


だから、何度でも言うが、俺はロリコンじゃない。分かってくれただろうか?


 そして俺は、行動を開始した。



―――【パンツァー起動】―――



 俺は走りながら考える。


実際のところ、今回の時間停止が何秒になるかは分からない。


しかし黒のTバックは、世の大半の男が性癖愛着を感じるパンツだ。もちろん、俺の性癖愛着でもある。


そして、萌え萌え2次ツインテールロリのSABIちゃんのTバックなら、3秒以上の時間停止の可能性すら高い。


ともかく、やる事はいつもと同じだ!


時間停止内で出来る限りの事をする!!



【 0.5秒経過 】



 俺は、SUZUSAKI 3年ローンの HXR-3愛車にまで辿り着き、それに跨った。


エンジンを掛ける。


時間停止中の世界の中では、エンジン音は無かった。


 いまさら言うが……

俺は、この“作戦”に、あまり乗り気じゃない。


なんせ、これは俺の愛車なんだ。

傷を付けるような事は、したくは無い。

まして、戦闘になんて使いたく無かった。


 しかし、背に腹は代えられない。


俺は、決心をしたんだ。


月影シノブに命を懸けるって。

あるいは、このクソ電脳に命を懸けるって。


 だから、アホの俺でも思いつく事は全てやってやる。


できる限り足掻いてやる。


 ……そう決心した俺は、

SUZUSAKI俺の最高の HXR-3愛車のガソリンタンクを撫で、心の中で言った。


『この戦闘が無事終わったら、また一緒にツーリングに行こうぜ!相棒!!』


 そして、目前には時間停止した紫電セツナが居る。


 彼女と俺の距離は、約15mだ。


 俺は、呟く。


「ドラッグレース……いや、チキンレースの開始だな」


 そして、俺はSUZUSAKI 3年ローンの HXR-3愛車のスロットルを開いた。



【 1.2秒経過 】


 

 少しスロットを開くとタイヤが空転し、白煙を上げた。


 時間停止中の白煙は、空中で固定される。


コイツは30秒で500km/hに達するスーパースポーツバイクだが……発進に難がある。


急発進をすれば、パワーがあり過ぎて横転してしまうんだ。


 だから俺は、紫電セツナまでの15mを慎重に、しかし最速で走らなければならない。


 素手で握ったグリップが汗ばむ。


 俺は、ジワリとスロットルを調整する。


 そうすると、タイヤの空転は止まり、タイヤがしっかりと路面を捉える感触が、俺の手に伝わった。


 前方向への推進力が生まれる。


 俺の体に後ろ向きにGが掛かる。



【 1.5秒経過 】



 紫電セツナまで、あと10mだ。


シフトチェンジは必要無い。1速のまま彼女の元まで走れるだろう。


 俺はさらにスロットルを開いた。


 バイクの速度が増す。

景色の流れが速くなる。



【 1.7秒経過 】



 ついに紫電セツナまで、3mに迫った。


 俺は愛車のタコメーターを見る。レッドゾーンは2万回転だ。まだまだ余裕がある。


SUZUSAKI 俺の最高の HXR-3愛車は順調に加速していく。


 俺は、このまま紫電セツナを撥ね飛ばすつもりだ。


そうすれば、バイクの加速で彼女を吹っ飛ばす事が出来る。雷葬の中断が可能だ。


時間停止中の紫電セツナは受け身を取れない。無事では済まないだろう。


そして、さらに加えてパンツァー終了後も、そのまま彼女を追って追撃が出来るはずだ。


その間にもう一度時間停止させ、紫電セツナにトドメを刺す。

もちろん、次に見るパンツはWABIちゃんのパンツだ。


つまり……

”バイクを使った隙の無い2段構えの攻撃“が、

俺の今回の”作戦“だった。



【 1.9秒経過 】



 紫電セツナまで、あと1mの地点に到達した。


 しかし、ここで俺の心臓が突然、「ドクン!」と大きく鼓動した。


 俺は驚愕して叫ぶ。


「SABIちゃんのTバックで発動したパンツァーが2秒で終了だと!?」


 俺は、まさかの事態に大きく動揺した。


 二次元萌えキャラ大好きの俺が、二次元ロリのSAIBIちゃんのTバックを見て2秒だと!?

何故なんだ!?


 あれだけ煩悩を感じたんだぞ!?

 ロリコンの悪魔に魂を売りかけたんだぞ!?

 完全に俺の性癖愛着の筈だ!!


 理由は分からない。

 しかし、ともかく、このままではマズイ!!


 この距離では、俺とSUZUSAKI俺の  HXR-3愛車の決死の体当たりが紫電セツナに避けられる!!


 そして、雷葬が発動し!俺が灰になる!!


 しかたない!!SUZUSAKI 3年ローンの HXR-3愛車は無事に済まないだろうが!!


 アドリブで!【作戦B】に変更だ!!


そう判断した俺は、バイクに乗った自分の身体を大きく倒し……


SUZUSAKI 3年ローンの HXR-3愛車を横転させた。


予想通り、俺とバイクの加速は衰えず、勢いそのまま地面を滑る。


SUZUSAKI 俺の3年ローンの HXR-3愛車外装カウルが地面に擦れ、火花が散る。


外装の塗装がガリガリ剥がれる。


だから、俺は泣きながら叫ぶ。


「くそぉおおおおおお!!!

 俺の愛車がぁぁああ!!

 3年ローンがぁぁああ!!!」




【ジャスト2秒。時間停止終了】



―――【 パンツァー終了 】―――



 全てが同時に動き始める。


流石の紫電セツナでも、俺が、愛車と地面を滑りながら突進してくるとは、予想出来なかったようで、

虚を突かれたような表情を浮かべる。


「なに!?」


しかし、その瞬間も、俺とSUZUSAKI俺の3年ローン HXR-3の愛車は、勢いのまま地面を滑り続ける。


 俺がなぜバイクを横転させたのか……お前達は疑問だっただろうが、それは紫電セツナのパンツを見る為だ。


バイクに乗ったままではパンツは見えないが、バイクを横転させ紫電セツナの足元を滑る事で、パンツを見る算段だった。


 つまり、“アドリブの作戦B”とは、そういうことだ。


要は……『パンツァー終了と同時に紫電セツナのパンツを見て、もう一度パンツァーを起動しよう』作戦だ。


 しかし、俺の予想に反して、SUZUSAKI HXR-3を犠牲にしながら地面を滑っても紫電セツナのパンツは見えない。


 焦った俺は叫ぶ。


「ピチピチ過ぎて!パンツが見えないっ!!!」


 紫電セツナのアイドル衣装であるチューブワンピースは、グッドスタイルの彼女にフィットした刺激的な衣装な訳だが、それ故にパンツが見えなかった。


何故なら、彼女のその——“紺のピチピチ衣装”は、彼女の尻と太腿にピッタリと張り付いているので、普通のローアングルからはパンツが見えない。


おそらく、彼女の脚の間に、頭を潜り込ませないとパンツを拝む事は出来ないだろう。


 もちろん。そんな事が出来るような時間的な余裕は無いし、剣術の達人である紫電セツナにそんな隙は無い。

ていうか、殺したい男の頭を、脚の間に入れる女なんて、この世に居ないだろう。


 つまり、“アドリブの作戦B”は失敗だ!!


 だが、もう遅い!!

この状態の俺が、彼女の雷葬から逃げる事なんて無理だ!!


 くそ!死にたく無い!!


 と俺が後悔し始めた、その一瞬……

俺には、紫電セツナの声が聞こえた。



「君のパンツァーと、僕の雷葬……

 どっちが速いか比べてみようじゃ無いか?」



 それが、俺の空耳だったのか――

 あるいは、俺のフザケタ電脳の悪戯か――


 よく分からなかったが、

そう言った彼女の顔は、笑っているように見えた。


彼女のその表情は、俺を挑発しているかのようにも見えた。


 そして、その瞬間、俺には、いわゆる”走馬灯”が見えた。


 それは、何故か月影シノブの走馬灯だった。


俺の電脳中で、シノブは笑い、驚き、喜び、――そして“絶望して泣いて”いた。


 だから、俺は思い出した。


自分が月影シノブのプロデューサーである事を。


自分が今戦っているのは、俺が望んだ事だと。


 だから、俺は自分の枯れかかっていた闘志に再び火をつけた。


 だから、俺は力いっぱい叫んだ。


自分でもビックリするぐらいの声が、腹の底から湧き上がった。



「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



 俺は、地面を滑りながら、体勢を整える。


紫電セツナは、雷葬のチャージを終了させる。



 俺は、滑りながらも、なんとかブーツで踏ん張る。


紫電セツナがジャンプし、14本の剣を、訳の分からない速さで操り始める。



俺は、地面を蹴り、紫電セツナの下半身目掛けて飛び上がる。


紫電セツナの14本の剣が大きくスパークする。



俺は、紫電セツナのスカートに、手を伸ばす。


紫電セツナの14本の剣が、俺に襲い掛かる。



俺は、なんとか紫電セツナのスカートを掴む。


そして……


「ぬおおおおおおおおおお!!」


と叫び、無我夢中で引っ張り、それを、引きちぎった。



 紫電セツナの腰を覆っていた紺色の生地が、バラバラになった。



そして、俺は、紫電セツナの股間の――



【 サイドを紐で結ぶタイプの紫の紫陽花 《あじさい》柄】



――を見た。


 

 俺は思う。


『サイドの紐が刺激的だ。そして紫陽花の柄がエモい』



 その瞬間……

全てはモノクロになり、静寂が訪れ、全てが停止する。


俺の超感覚「パンツァー」が、本日3度目の起動をし、時間が停止した。

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