53話 スカウトに行こう5
【ナユタが去った後の、東アイドル事務所の会議室にて】
みなさん。少々失礼いたします。
私は西奉行所で”秘書”と”所長代理”を務めております、黄泉川タマキです。
ナユタさんが出ていった後、会議室は沈黙に包まれていました。
誰も発言する人は居ませんでした。
アカラさんもSABIちゃんも、唖然としています。
ですから私は、
あら!美味しい!!素敵な
そして、私が
「……ナユタさん……かなりお怒りの様子でした」
私は、
「ええ。そうですね。”お怒り”でした」
「しかし……
まさか……あそこまでとは……」
「ふふふ。
”凄い”でしょ?」
「はい。確かに凄いと思いました……。
シノブ君に対する、『凄まじいまでの執着』を感じました。
あれこそまさしく……愛……」
「ふふふ。
そうなんです」
アカラさんは続けます。
「拙者も同じプロデューサーとして彼の
ナユタさんなら、“拙者の織姫ココロ”を安心してお預けできます」
「それでは……
ココロちゃんの西アイドル事務所への移籍の手続きを、
進めてもよろしいですか?」
アカラさんはニッコリと微笑んで言います。
「ええ。もちろん。
よろしくお願いいたします」
「ふふ。ありがとうございます」
と言って私は飲み終わった
あら?よく見ると素敵な
そして美しい湯呑を堪能した私は、アカラさんにお話をします。
「実は、ちょっとした余談ではありますが……
ナユタさんのシノブちゃんへの”執着”は、『パンツァーの稼働時間』を見ても一目瞭然なんです」
「パンツァーと言うと……
彼の電脳に埋め込まれた噂の……『おパンツ』ですね?」
「いいえ。アカラさん。
ナユタさんの”パンツァー”は、”おパンツ”ではありませんよ?
『オーパツ』ですよ?アカラさん」
「おっと、失敬。ははは。
ついつい、パンツァーとパンツとオーパーツが、ごっちゃになってしまいました。
”シンギュラリティ直後”に作られた彼の電脳のパンツァーは、『おパンツ』では無く『オーパーツ』でしたね?」
「ええ。そうです。パンツァーは現在では失われた技術ですから……『オーパーツ』と言えます」
アカラさんは、眼鏡を直します。
ちなみに、高学歴で高身長で高収入な”ハイスペックイケメン”であるアカラさんは、女性職員に人気です。
しかし……個人的な意見で大変恐縮ですが……私としては、ナユタさんが時折見せる『飢えた野獣の様な目付き』の方が、濡れます。
「ナユタさんに、ぐちゃぐちゃにして貰いたい」と思ってしまいます。
あら、いけない。話が脱線してしまいましたね?
ともかく、そんな“ハイスペック”なアカラさんは、お話を続けます。
「しかし……ナユタさんの『パンツァーの稼働時間』から、一体どんな事が分かるのですか?」
「ふふふ。
ナユタさんのパンツァーは、対象とするパンツの
それをまとめたのが、こちらの”ホログラム資料”です。ご覧ください……」
と言って私は、会議室の机の中心にある、ホログラムモニターを指しました。
~~【ナユタが見たパンツと、パンツァー稼働時間の関係性】~~
月影シノブ /// ピンクのストライプ …… 2秒
月影シノブ /// くまちゃん柄 …… 4秒
SABIちゃん /// 黒のTバック …… 2秒
紫電セツナ /// 紫のアジサイ …… 2秒
万錠ウメコ /// 水色のレース …… 2秒
資料をひととおり見たアカラさんは、眼鏡を直しながら言います。
「ほう……なるほど……。
これは、非常に興味深いですね……」
資料をじっくり見るアカラさんを見たSABIちゃんが、蔑み目線で言います。
「ほんとね。興味深いわね。
つまり、アカラも『パンツ大好きなガチのロリコンの変態』って事ね。
……本当にキモっ……
……マジでキモっ……」
慌てたアカラさんは、SABIちゃんの方を向きます。
「誤解だSABIちゃん!!
拙者は、女性達のパンツを知る事ができたから『興味深い』って言った訳じゃない!!
この資料に対して『興味深い』って言ったんだ!!」
私は、資料の事をアカラさんに質問します。
「アカラさんは、この資料を見てどう思われましたか?」
アカラさんはSABIちゃんの蔑み目線を気にしながらも、もう一度資料に目を落とします。
そしてしばらくして、彼は言います。
「そ、そうですね……この資料から分かる事は……
ナユタさんは、くまちゃんパンツを履いたシノブちゃんに、最も
それを聞いたSABIちゃんが厳しい表情のまま言います。
「……キッモ……」
SABIちゃんの罵りで、さらに慌てるアラカさんを微笑ましく見ながら、私は話を続けます。
「ええ。アカラさんの
「
「これは、あくまで私の仮説ですが……
パンツァーの稼働時間は、基本的に2秒が限界なのだと思うのです」
「その理由は?」
「このデータの中で、ナユタさんの
しかし、その中でも「月影シノブ /// くまちゃん柄パンツ」の継続時間が4秒という、突出した長時間になっている事が、実は『
「つまり……黄泉川さんがおっしゃりたい事は――
『シノブちゃんと くまちゃん柄パンツ』の組み合わせが『
「ええ。あるいは……
シノブちゃん自身が、ナユタさんのパンツァーの『
「なるほど……。
つまり、その事から――
ナユタさんの月影シノブちゃんに対する『凄まじいまでの執着』が、このデータから見て取れる。
――という事ですね?」
「ええ。その点に関しては間違いないかと……」
「なるほど……。合点が行きました……」
と言って、アカラさんは頷きながら思考をします。
続けてアカラさんは私に質問をします。
「しかし……ナユタさんのここまでの……
『凄まじいまでのシノブちゃんへの執着』の発露は……一体どんな感情なのでしょうか……?」
「おそらく……『愛』は……すでに越えているのかもしれません」
「『愛』を越えているのなら……
その感情は……」
そして、私は、微笑みながら言います。
「『初恋』かもしれませんね?
あるいは、それすら超越した……
『崇拝』なのかもしれません……」
「なるほど……ナユタさんが、シノブちゃんを『崇拝』ですか……。
”アイドル”という言葉が、本来的に
……しかし、さすが……ナユタさん……。
同じプロデューサーとして、頭が下がる思いです……」
そして、これまで黙って聞いていたSABIちゃんが、「やれやれ」と言いながら会議の”締めくくりの言葉”を言います。
「それって……つまり結論として……
ナユタは、『アカラをも越えるガチのロリコン』って事よね?
もう、本当に勘弁して欲しいんだけど?
この感じなら……
『奉行所のプロデューサーは、大体ロリコン』って結論になるじゃない……」
SABIちゃんのこの言葉を聞いて、みなさんはどう思われますか?
だって……ナユタさんが”ロリコン”であるのなら、私はそれ以上の”大人の魅力”を持って、彼を
ともかく、このような感じで――
織姫ココロちゃんの西アイドル事務所への移籍の会議は、
何事も無く非常に和やかなムードで終わりました。
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