67話 ドウセツ1

 俺は薄布うすぬのとばり【※要はスケスケのカーテン】が降ろされた和室の一室で、布団の上に座っていた。


 開かれた障子しょうじからは灯籠とうろうがある日本庭園が見え、その空には三日月が浮かんでいた。

 月には灰色の薄雲がふたつ掛かっていて、それを見た俺はキンザの空で月影シノブと見た朧月おぼろづきを思い出していた。


 ロリのSABIちゃんが、俺の網膜ディスプレイ上にポップアップする。


『今から兎魅ナナの”VF”が始まる訳だけれど……

”本番”が始まってアタシが兎魅ナナの電脳に侵入して位置情報が”抜け”たら、この潜入捜査は成功よ。

だからナユタは、それまで兎魅ナナとしっぽり楽しんでいてちょうだい』


 俺はツッコむ。


「ロリのSABIちゃんが”しっぽり”とか”楽しむ”とか、言うもんじゃないぞ。

 それにこの様子は西アイドル事務所の連中も見ているんだし、仕事だ。

 目的が終わったら強制終了してくれて良い」



—————



 配信を盛り上げて兎魅ナナに気にいられた俺は、兎魅ナナから”リンク”付きのDMを受け取った。


 その”リンク”に接続すると、俺は別の電脳空間にとばされた。


だから俺は今、夜景が見える布団が敷かれたエロい和室にいるわけだ。


 畳の上に2つ並んだ布団、スケスケのとばり、花々が散る屏風びょうぶかれた高級そうなお香と、この電脳空間の和室の雰囲気は、いちいちエロかった。


 そしてこの空間は、VFの空間な訳だ。さっきまでのVR空間とは、”感覚の解像度“のような物がちがっていてるように思えた。


要は……「現実よりも現実的な夢」……とでも言えばわかるだろうか?


 そんな“エロエロ和室”で俺がソワソワしていると、ふすまの向こうから声が聞こえてくる。


「入るよ……?

ナユタちゃん」


 静かにふすまがひらく。


 影の中から兎魅ナナがあらわれる。


 兎魅ナナの服装・・を見た俺は、驚愕のあまり大声を出してしまう。


「え!?ええええええ!?

 そ、そそそその服は!?

な、なななな何なんだ!!??」


  そこには“ちょいエロパジャマ”を着た兎魅ナナがいた。


そしてその“ちょいエロパジャマ”は……


なんと、万錠ウメコが着ていた“ちょいエロパジャマ”と瓜二つだった。


いや……”瓜二つ”というか、完全に一緒だった。


 もしかしたら、もう忘れている人も居るかもしれないから説明するが……“ちょいエロパジャマ”とは、万錠ウメコが着ていた男を悩殺する事だけに特化した服だ。

 薄いグレイのシルクの生地で出来たキャミソールとナイトガウンだけの服だが、胸は露出するしボディーラインは強調されるしで、その破壊力は俺のプレハブ長屋がブッとぶレベルだ。


 “ちょいエロパジャマ”でクルッとまわった兎魅ナナは、口を手で隠し、俺を見て少しだけ恥ずかしそうな顔をする。


いちいち可愛いじゃないか。


「あはは(恥)。ビックリした?

 ちょっとだけ、ナユタちゃんの性癖を見させて・・・・もらって……。

 ナユタちゃんが最近でいちばん”性癖”を感じた服に着替えたんだよ(ぴょん)?

 どう?

 ナナ可愛い??」


「せ、性癖?を、見る……だって…?

俺の電脳をハッキングしたのか??」


「違うよ。

なんて言うのかな?

 人柄ひとがらと表情と手と耳の形……。

それだけ見れば、あちき分かっちゃうんだ。

……その人の性癖が」


 SABIちゃんがポップアップして電脳内で《・・・・》説明する。


『兎魅ナナのユニークスキルみたいね……。

「性癖アナライズ lv80」だそうよ』


 それを聞いて『なんてエロいユニークスキルなんだ』と思いながらも、俺は兎魅ナナから目が離せなかった。


月夜に照らされた兎魅ナナの腰骨の形が、スケスケのシルク生地で浮き上がり、見ただけで手に取るように分かった。


 さっきまでの明るい表情とは違い、少し目を伏せてどこか恥ずかしげで、しかしその様子はうれいがあった。


 兎魅ナナは話を続ける。


「えっと……ナユタちゃんの性癖は……。

適度な日本人体系で……セミロングで……黒髪。

 脚とお尻が好きみたいだね?

あとナユタちゃんはMだから、ちょっと気が強い女の子が好きみたい。

 オオエドシティのアイドルで言うと……」


「ステイッ!!」

 兎魅ナナッ!!

ステイッッ!!!!」


「どうしたの?」


「い、いや……それ以上、言わなくて良い」


「恥ずかしい?」


「恥ずかしいどころじゃ無い。

 それ以上言うと、俺が全方面で死ぬ」


 俺は冷や汗をダラダラとかいた。


この様子は、西アイドル事務所の連中も見てるんだ。そんな中で性癖暴露大会とか……


“終わってる”を超えて、”とむらってる“。


 いや。すでに、もう……恥ずかしくて死にそうなんだが……。


「ふふ。とにかく。

ナユタちゃんが嬉しそうでナナもメッチャ嬉しいよ(嬉)?

 じゃあ……さっそくだけど……」


と言いながら“ちょいエロパジャマ”の兎魅ナナは、ゆっくりと近付いてくる。


 座って見上げる彼女の“ちょいエロパジャマ”の胸は、万錠ウメコの時よりもさらに挑発的にそそり立っていた。


そうだ。兎魅ナナはもっとデカいんだ。胸が。


兎魅ナナの両目が、三日月に照らされて光る。


「……しよっか……?」


 唐突にSABIちゃんが、俺の電脳内で言う。


『ナユタは動かずそのままで居て。

 アンタが兎魅ナナに接触した瞬間に、アタシは彼女の電脳に侵入してハッキングを開始するわ』


 しかし俺は、そんなSABIちゃんの言葉を理解する事が出来なかった。


 なぜなら俺の電脳は……

——目の前いっぱいの兎魅ナナのおっぱいと、

——脚の上のフワフワした尻の感触と、

——瑞々みずみずしいまでの肌の香りで、

一杯になっていたからだ。


 俺は思わず、溜息とともにつぶやく


「さいこうだ……」


 耳元で優しい声が響く。


「さいこうでしょ(喜)?」


「ああ……。

 柔らかさで包まれて……いい匂いがして……ってちがう!!

 いや!!、違わないが違う!!!!」


 慌てる俺を微笑みながら見て、兎魅ナナは言う。


「抱いて?」


 そう言って兎魅ナナは、俺の腕を自分の腰にまわした。


交差した俺の右手と左手が、彼女の左尻と右尻にふれた。


シルク越しからでも分かる兎魅ナナの尻は、パツパツでまん丸で、何よりすべすべだった。


 ん??……「すべすべ」だって……?

 

 疑問に思った俺は、兎魅ナナの尻がのった足を少し動かしてみる。


なんだか、適度に肌が張り付いて……フワフワで……あれ?でも??


その瞬間に俺の電脳に衝撃が走った。




 『履いていないだと!?!?』




 兎ナナは吐息と共に言う。


「ふふ……あんまり激しくし動かないで??」


 兎魅ナナのそのセリフは、甘い声で俺の下半身を1ピコ秒で貫いた。


例のごとく、俺の“例のヤツ”が“起床”を始める。


 くそ!!思ったよりヤバい!!


 なぜなら、兎魅ナナが想像の8倍ぐらいエロいからだ!!!


このままではマズイ!

SABIちゃんのハッキングはまだ終わらないのか??


 俺の下半身は、あっともって“2秒”だぞ!!


 そんな俺の様子を理解しているんだろうか?

挑発するような目付きで、兎魅ナナは言う。


「ねぇ?……じゃあ……」


 と言って兎魅ナナはピンクのドリルツインテールを跳ね上げる。彼女のうなじがよく見えた。うなじ最高。


「じゃあ、さ?……ナユタちゃんも……脱ごっか?」


恥ずかし気な顔を続けて兎魅ナナは、そう言った。


 バサバサのまつ毛を伏せた目線ははかなく、兎魅ナナの表情はウブな少女のようだった。


 その表情で俺はなぜか、またしても月影シノブを思い出した。


 俺の下半身がさらに勢いを増す。


ちがう!俺はロリコンじゃ無い!!

てか、なんでこんな時までシノブが!!!


 だから俺は、反抗する。


「ま、まだだ!

え????いや!ちょっと待て!?!?

……いつの間に!?

袴が!!!!」


 喋りながら気付いたが、いつのまにか俺の袴が無くなっていた。いや、それどころか着物も……。


知らない間に俺はパンツ一丁になっていた。


「ふふ。

ドウセツ中は、あちきがルールだよ?

 ナユタちゃんの服を消すのも、自由自在だよ?

でも……大丈夫……安心して?

すぐ気持ち良くなるから……」


 と言って、兎魅ナナの人差し指が俺の裸の胸を撫でた。


 その感触は、当然ながら最高に気持ち良かった。


 俺の下半身が一気に、“最硬さいこう”の状態になる。


 兎魅ナナが微笑みながら言う。


「ナユタちゃんって……敏感で可愛いんだね?

あちきと……いっしょ……」


 と言いながら兎魅ナナは、俺の上で膝立ちになった。


 そして彼女は手を下半身に持って行き、“ちょいエロパジャマ“のキャミソールドレスの真ん中を開こうとする。


 マ、マズイ!!


今の兎魅ナナは履いていない訳だ。


 だから、俺の目の前の……その”シルク生地“が開くと……


 ”全部“見える!!


 兎魅ナナの”全部“が見えると、おそらく間違いなく、俺の理性がぶっ飛んでしまう!!!!


どうにかして、兎魅ナナを止めないと!!!


SABIちゃんのハッキングが終わる前に!


俺が”終わって“しまう!!!!!

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