87話 ココロと乱暴な黒光り1

【織姫ココロ視点】


 乱暴で黒光りしてイキリ立つ……蜘蛛みたいな戦車さんの攻撃をボクは刀で受けたよ。


でもやっぱり耐えられなくなって、ふっとんじゃう。


「ふわぁっ!!」


 飛んだボクのスク水の身体がナユタさんを巻き込んで、ボクたちはけっこうな距離を吹っ飛ぶ。


絡み合ったボクとナユタさんの身体はすぐに、地面に衝突する。


コンクリートの床は硬くて、スク水のお尻の布がこすれてやぶれそうになったけど、やぶれ無かったよ。


だからボクは、ちょっと残念……じゃ無く、痛かったよ。


 ボクの背中のほうからナユタさんの声が聞こえる。


「だ、大丈夫か!?ココロ??」


「ぼ、ボクは……大丈夫だよ」


 そしてボクは恥ずかしさを我慢しながら、後ろに居るナユタさんに続けて言うよ。


「で、でも……ナユタさんの股間が……

ボクのお尻に当たって……その、くすぐったくて……んっ!……」


「え!?う、うわ!!

す、すまない!!」


 そして息をつく間も無く、“蜘蛛さん戦車さん“は次の攻撃に移る。


怪しくグリーンに光る牙の様なパーツが上に開き、その中に無数のミサイルが見える。


その様子は、大きな黒い蜘蛛さんが大きく口を開けたみたいだったよ。


 その様子を観測したSABIちゃんが言う。


「ココロ!!喜んでる場合じゃ無いわ!

ジョロウグモのミサイルが来るわよ!!」


「よ、よよよ悦んでいないよ??

 す、すす好きでも無い男の人に何かを強引に押し付けられて、喜ぶ女の子なんて居ないよ??」


 と言いながらボクは立ち上がり、水色のシールドを両手で作る。


その瞬間、次々とミサイルがボクのシールドの前で何度も爆発しちゃう。


「んっ!!あっ!!」


 激しい爆発の衝撃で、ボクはシールドを作った態勢のまま地面を滑って後退する。


その勢いでボクのスク水のお尻が、尻餅を付いたナユタさんの顔に激しくぶつかっちゃう。


ボクのお尻に顔を潰されたナユタさんが、「ばぶべ!」と叫ぶよ。


 ボクはつい、熱い吐息と共に悲鳴をあげちゃう。


「あっ!はぁっ!!

 ご、ごめんね!!ナユタさん!!

ボ、ボクのスク水のお尻が……ナユタさんの顔で潰れて……」


 ボクのお尻から顔をはずしたナユタさんが、大きく息をついてから言うよ。


「いや。いいんだ。むしろ、ありがとう。

しかしスク水のアイドル衣装……思った以上の破壊力・・・だな……」


 そんな僕たちを見たイチモンジさんは、拘束されたピンクの身体を芋虫のようにウネウネさせながら笑う。


「ナハハハハハ!!

 見たか!!

これが先の大戦を終結に導いたと言っても過言では無い、多脚戦車ジョロウグモの実力じゃ!!

 ナハハハハハ!!

って言うか……あの……そろそろ……こなたの拘束を解いてくれませんか?……ジョロウグモさん??」


 そう言ったイチモンジさんは、蜘蛛さん戦車さんに電脳手錠サイバーオナワを破壊して貰うよ。


 体が自由になったイチモンジさんは、ふたたび「ナハハハ!」って笑いながら立ち上がる。


 それを見たナユタさんが、股間を手で隠しながら悔しそうに言うよ。


「クソ!イチモンジの拘束が解かれた!!

振り出しに戻ったどころか……最悪の戦況じゃないか!!」




 そんなハラハラドキドキの戦闘の中、ボクの心はちょっとだけ元気になっていたんだ。


それは、さっきの戦いの中でわかった事があったからだよ。


 それは、ナユタさんとウメコさんが恋人の関係にある事だよ。


だって、ウメコさんがナユタさんの前でパンツやタイツを露出させたり、いきなり2人でキスをしたり、しかも、股間をまさぐり合ったり……恋人以外の何者でも無いと思うでしょ?


戦闘中にそんな事するほど、燃え上がっているなんて……二人はどこでも盛っちゃうただれた関係なんだと、ボクは思うんだ。


 とにかくつまり……ナユタさんとウメコさんは恋人同士ってことになる訳だがら……シノブちゃんは恋人のいない“フリー“って事だよ。


シノブちゃんは、ナユタさんにパンツを見せたことがあるらしいけれどきっとそれは何かの間違いなんだよ。


 つまりボクは、これからも変わりなく、シノブちゃんに“ハァハァしていても“……じゃなくて、“好きでいても“問題ないって事だよね??

 

 だからちょっと元気になったボクは、ルンルンな気持ちで「乱暴で黒光りする蜘蛛さん戦車さん」と戦うことができていたんだ。



 そんな感じで嬉しい気持ちで電脳がはっぴーになっちゃったボクに、銃弾がたきのように降り注ぐよ。


だからボクはとっさに腕を前に出して、水色のシールドを張ってそれを防ぐんだ。


 一瞬でボクの目の前が真っ白になる。


「んっ!!」


衝撃の連続で、ボクのスク水の身体がまたまた後退する。


 シールドで跳ね返った弾丸が、いくつのものまるい円を描いて、飛び散ったよ。


その様子は、ある意味で綺麗でもあったよ。


 ボクの網膜ディスプレイに警告が浮かぶ。



【‼︎ シールド破損率83% ‼︎】



 だから、SABIちゃんが慌てた感じで警告するよ。


「ココロ!!

まともにジョロウグモの攻撃を受けちゃダメよ!!

 ヤツの腹部に内蔵された副砲の発射レートは100,000rpm!

数秒の銃撃でコンクリートの壁が“溶ける“威力だわ!!」


「え、えっと……

  ジュウマンピーエム?

 コン……クリト……ケル??」


「違うわよ!!

どこの国のなんの呪文を唱えているのよ!!」


「で、でも……SABIちゃんの話し方が早すぎるって言うか……

優しさが足りなさ過ぎるって言うか……」


「とにかく!!

 次のジョロウグモの攻撃は、バカ正直にシールドで受けちゃダメってことよ!!

 シールドが破壊されて、アンタとナユタが一瞬で揃ってミンチになるわよ!!」


「え、えええ??

 ボクとナユタさんの……合い挽きミンチ??

 表現が怖すぎるよぉ……SABIちゃん……」


 そんな怖がるボクに、ナユタさんの電脳リンク(思考同期)の声が聴こえるよ。


『ココロ!!マズイ!!

来るぞっ!!

 走るんだっ!!!!』


「は、はわ??」


 ナユタさんは急にボクの手を乱暴に掴んで、走る。


「ナ、ナユタさん!?

 ら、乱暴過ぎる!?」


 ボクの体勢が崩れて、ボクのニーソの足が、その場を離れる。


 そして警告が、ボクの網膜ディスプレイに浮かぶ。



【‼︎ 敵ミサイルロックオン感知 ‼︎ 自動シールド起動 ‼︎】



 その瞬間、ボクが気づくより先におっきな爆発が真横で起こる。


でっかい音とすっごい閃光で、ボクの目の前は真っ白になる。


「ココロ!!!!」


 と言ったナユタさんが、僕のことを身体で庇おうとしたけど、もの凄い衝撃で、ボクとナユタさんは吹き飛んだ。


「んっああああッ!!!」


 網膜ディスプレイが警告の文字で一杯になる。



【‼︎‼︎シールド破損‼︎‼︎ ‼︎‼︎シールド破損‼︎‼︎ ‼︎‼︎シールド破損‼︎‼︎ ‼︎‼︎シールド破損‼︎‼︎ ‼︎‼︎シールド破損‼︎‼︎ 】



 そんな警告をボクが理解する暇もなく、ボクとナユタさんの身体は、もういちど絡まりあい、お空まで舞い上がるよ。


「ナユタ君!!!!!ココロ!!!!!!」


「ナハハハハハ!!」


 そんな声が聞こえたような気がしたけれど……ボクにはよく聞こえなかったよ。


何故なら、ボクの身体は屋上のヘリポートを越えて完全に空中に投げ出されていて……それどころじゃ無かったからね。


重力に引かれたボクのお腹が、ふわっとする。


ああ……。


この感覚……。


前にも味わったよね……?


でも、いつだったか……もう思い出せないかも……。


だって、ボクのスク水はボロボロだし……

白いパンツも丸見えで……


それを鼻の下を伸ばして見る……ナユタさんも……どっか……


飛ん………いっちゃ……ta………


………


……





【ナユタ視点】




——————


【SAFE mode 起動 “DENSHI NO KARESANSUI”】


——————


————


———




 ししおどしの音が、聞こえる。


竹林の奥から、ウグイスの鳴き声がこだまして聞こえる。


土壁の向こう側には、見事な松の木が二つ見える。


  穏やかな春の日差しに照らされた俺の胸はポカポカと暖かく、半裸の上半身でも寒くは無い。


ただ心地が良かった。


俺は木材で出来た縁側のような場所で寝ているらしく、目の前には清々しい青空が広がっていた。


俺の目の前で梅の花びらが、美しく舞っている。


「『春は曙』ってやつだな……いやあれは……明け方の空の事だったな……」


 そう言いながら俺は、自分の着物がはだけている事に疑問を感じたが……。


唐突に怒った少女・・の声が飛び込んできて、その疑問はかき消された。


「どうして邪魔すんのよ!!」


 静かに諭すような女性・・の声が聞こえる。


「然るべき手順を踏むべきだからです」


「そもそもなぜ、わびちゃんがここに居んのよ!!

今回はあたしの番でしょ!?

 あんたばかり!いつも肝心な時に居てズルいのよ!!」


「前回の時の那由多なゆた様は、わたくしだけのご使用者様でしたので。

よって対象・・は、わたくしのみでしたから……。

 それに、さびちゃんのそのお言葉……そっくりお返しします。

EQとの対峙の際は、わたくしも行くべきだったと“後悔”しておりますので……」


「ふふん。KOKINTEIみたいな下らないアドオンで調子に乗ってたアンタが悪いのよ」


「確かに、その点に関しては認めざるを得ません。

 KOKINTEIがあそこまでポンコツ……失礼……“下ネタに特化”したアドオンだったとは思っていませんでしたので」


 そんな話し声のなか、俺のはかまの帯がゆっくりと緩められるような感覚があった。


 しかし直ぐに少女の声が聞こえる。


「あんっ!!

 ちょ!!わびちゃん!!

あたしの帯を引っ張らないで!!

 着物がはだけるじゃない!!」


「まったく、油断も隙もありませんね。

那由多様の袴をずらして何をするつもりだったのですか?那由多様のパンツと逞しい腹筋が丸見えじゃ無いですか?

 きゃっ!!

さびちゃん??

何てことをするんですか!?

わたくしの着付けが……」


「ふん。仕返しに決まっているじゃない。

この淫乱年増としまAI!!」


「お言葉ですが”年増”なのは、SA81型……失礼……さびちゃんの方です。

先に分離・再構築されたのは、わたくしでは無くさびちゃんですから。

 淫乱AIについては……お言葉をそのままお返しします」


「うっさいわね!!

いちいちクソ真面目に返答しなくて良いのよ!!

 それにあんたの事、前から思っていたけど……無駄に巨乳で!邪魔なのよ!!」


「それを言うならさびちゃんは、ロリロリし過ぎです。完全に犯罪です」


 そんな二人・・の喧嘩の騒がしさに、俺は上半身を起こした。


 まあ、ここまでの会話で見るまでも無かったんだが……。


 俺の足元では、緑色の肌の絶世の美女&美少女であるWABI&SABIちゃんが、座った状態でお互いの着物を引っ張り合って喧嘩をしていた。


 しかしその「修羅場」は、どちらかと言うと、かなり良い方の「修羅場」だった。


なぜならWABIちゃんの着物が乱れ胸元の”たわわ”がほぼ露出し、SABIちゃんに至っては小さな尻が9割ぐらい見えていたからだ。


 それを見た俺は、「女は着物の下に下着を付けないってのは本当だったんだな」と思った。


しかし当のWABISABIズは俺が起き上がった事には気付いておらず……


しばらくのあいだ、「胸揺れの物理演算に無駄にスペックを使うポンコツ」だとか、「仕様とは言えツンデレ過ぎるのは如何いかがな物か?」みたいな罵りあいをしばらく続けていた。


 彼女達の喧嘩が続けば続くほど着物が乱れ——

丸くて大きな乳房や、長いセクシーな脚や、真っ平な胸とその先端や、小さい丸い尻が露出していき……極上の最高の癒しの空間が形成されていた。


しかし無闇に鼻の下を伸ばしてずっと眺めている訳にもいかないので、俺は彼女達に話しかける。


「二人ともなぜ、壮絶な”キャットファイト”を繰り広げているんだ?」

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