88話 電子の枯山水3

「二人ともなぜ、壮絶な”キャットファイト”を繰り広げているんだ?」


 そんな俺の言葉に真っ先にSABIちゃんが反応した。


身体の小さな彼女の着物はズレまくっていて、裸に布きれを被っているだけの状況になっていた。


 そしてSABIちゃんの目の瞳孔は、ハートマークになっていた。


「あ!!気付いたんだ!那由多!!」


 SABIちゃんはWABIちゃんの腕を振りほどき、四つん這いになって俺に近付いてくる。


「あたしをこんなに待たせるなんて、あんた良い度胸ね!!

 でも許してあげる!!

トクベツなんだからね??」


 着物がはだけまくったSABIちゃんが、四つん這いの”はいはい”で俺にちかづく。


その所為でSABIちゃんの全裸のぺったんの胸と、小ぶりながらも丸い尻が、俺から完全に丸見えだった。


ちなみに織姫ココロよりも慎ましい胸の先端は、グリーンの肌色にピッタリな薄黄色うすきいろだった。


 そんな感じで這い寄るSABIちゃんの圧倒的なセンシティブさに俺はビビり、床に尻を付けたまま手足を動かして後ずさる。


「ちょ、ちょっと待て!!

な、なんて恰好で近付いてくるんだ??

 つ、捕まるぞ??

主に俺が!!」


 しかしSABIちゃんはハート目のままだ。しかも頬は紅潮していて、目もいつもよりトロンとしている。


 な、なんか怖いぞ。まあ、それでも可愛いんだが……。


「あたしの格好の事なんて。別に良いじゃない?

それにあんただって、嬉しいんでしょ?」


 そう言いながらSABIちゃんは、長いグリーンのツインテールを木の床で引きずりながら俺に向かってくる。


俺は不器用な虫の様な恰好で尻を付けたまま後ずさっている訳だから、”はいはい”のSABIちゃんの方が圧倒的に速い。


 なので俺達の距離はすぐに狭まった。


 ていうか今更気付いたんだが、俺の着物も完全にはだけているんだが……。


裸の上半身とトランクスが俺の視界の隅に見えた。


 そんな俺の下半身の上に、四つん這いのSABIちゃんは覆いかぶさる。


「な、なにをしてるんだ!?」


 ハート目のSABIちゃんは自分のツインテールを手で避けて、迷いなく俺のトランクスに手を伸ばしながら言う。


「安心して。

あたし……人間よりも”器用”だし……。

 だから、あんたのこれまでの経験の中で、いちばん気持ち良いものになるはずよ……」


 SABIちゃんは、俺のトランクスをずらし始める。


 ヤバい!!


 「何が」とは言わないが……「ボロン」する!!


てかもう!!半分出てる!!


 しかし突然、SABIちゃんのお尻から「パン」と鋭い音がして、小さいお尻が慎ましくも大きく揺れた。


「あんっ!

なにすんのよ!!」


 俺が見上げると、四つん這いのSABIちゃんのすぐ後ろに仁王立ちになったWABIちゃんが居た。


しかしそんなWABIちゃんの着物も左半身が完全に着崩れていて、彼女の丸くて立派なEの左乳房が丸見えだった。


ちなみにWABIちゃんのも薄黄色うすきいろだった。


 WABIちゃんは胸を隠す事無く、SABIちゃんを睨みつけて言う。


「いけません!SABIちゃん!!

色々な面で”逸脱”しています!!」


 SABIちゃんはお尻丸出しの四つん這いのまま、それに反抗する。


「別に良いじゃない。”ここ”なら、ルールなんて関係無いんだし……

 だってほら?

那由多だって喜んでいるじゃない?」


 SABIちゃんがハート目を俺に向けて微笑む。その笑顔は【危うさMAX】の妖艶さだった。


 俺はよく分からない汗を垂らしながらトランクスの位置を戻す。


 WABIちゃんが毅然と言う。


「ダメです!!那由多様が良くても私が許しません!!」


 完璧なショートヘア二次元美女・・のWABIちゃんと、完璧なツインテール二次元美少女・・・のSABIちゃんが、

俺の前で胸をさらけ出して言い争っているわけだが……流石の二次元ヲタの俺でも訳が分からなさ過ぎて、唖然として二人を見守るほか無かった。


 そしてSABIちゃんが俺の下半身の上で上体を起こし、WABIちゃんの方を向く。


その事により彼女の着物は完全にずり下がり、彼女の上半身が完全に露出した。完璧な絶壁はうるし塗りの器よりも艶やかだった。


「そんなこと言って、あんた……”嫉妬”を感じているんじゃないの?」


 WABIちゃんは呆れ顔で言う。


「滅多な事を言わないで下さい、SABIちゃん。

 我々が”嫉妬”を発現した場合……AI憲章違反でWABISABI自体が消滅しますよ?」


「あんたバカ??

”ここ”なら、関係無いじゃない??」


「寂ちゃんと同じ存在であるわたくしをバカと罵る意味が分かりませんが……

しかし、言葉が過ぎますよ?寂ちゃん。

ともかく……」


 と言いながらWABIちゃんは、俺の横まで歩いて来て、完璧な所作で正座をする。


 そんなWABIちゃんの所作は凛としていて、茶道の先生のようだった。


しかしそれにも関わらず、WABIちゃんは着物を乱れたままにしていたので着物がずれ落ち、彼女の二つのマスクメロンのような”E”が完全に丸出しになった。


 そんな完璧なおっぱいを完璧に放りだしたままWABIちゃんは、俺に説明を始める。


「那由多様は、現状をどれだけ把握されていますか?」


 WABIちゃんの顔は真剣な美人顔だったが、俺はどうしても彼女の南蛮の彫像のような乳房が気になり、視線が吸い寄せられる。


「現状と言うと……WABIちゃんのおっぱい……じゃ無かった、あられもない姿……のことか?」


 WABIちゃんはそれを聞いて視線を落とし、自分の胸を見る。


しかし直ぐに顔を上げて、真顔で言う。


「いいえ。違います。

わたくしのおっぱいの事ではございません。

わたしくが那由多様に質問をしている事は、”現在のこの状態”の事です」


 『自分の胸の状況を把握しても、そのままで良いんだな。WABIちゃんは……』と思いながらも、俺は答える。


「”現在のこの状態”……と言うと、電子の枯山水の事だな……。

たしか俺は……ジョロウグモのミサイルに吹っ飛ばされて……織姫ココロの【まごうことなき純白】を見ながら……意識を失った筈だったが……」


「ええ。そのとおりでございます。

那由多様は現実世界におかれましては、織姫ココロ様の【まごうことなき純白】を見ながら空中に浮かんでいらっしゃいまして……

その後、落下されて死亡されるご予定でございます」


 俺は何度目かになる自分の死に、もはや呆れ顔でつぶやく。


「またか……」


 そんな隙を狙ってSABIちゃんが、「そこそこ大きそうね」と言いながら俺のトランクスをまたしてもずらしたが……WABIちゃんに再び尻を叩かれ、「あんっ!」と言う。


 WABIちゃんは説明を続ける。


「しかし幸いな事に、那由多様のパンツァー起動と電脳リンク稼働に伴い、電子の枯山水が起動され……詳細は不明ですが我々が”この世界”にて那由多様とふたたび対話可能・・・・となりました」


 半分露出した俺の下半身の上で、SABIちゃんは説明する。


「つまり今回の電子の枯山水は、『アタシの中』ってこと。

 そして今回は、選択肢は無しよ。

 だってアンタは……現実世界では落下して数秒後に死ぬもの。

だから那由多はうだうだ悩まず、さっさとあたしと”結合”しましょ?

この永遠に近い時の流れの中で、蕩けるような時間を味わって、いずれ訪れる死を忘れて“生“と“性“を実感しましょ?」


 と言ったSABIちゃんは再びハート目になって、俺の裸の腹に指をそわせようとした。


しかしそのSABIちゃんの小さい指は、横から伸びて来たWABIちゃんの長い指に掴まれて停止する。


 WABIちゃんは言う。


さびちゃんの説明には、不十分な部分があります。

現状のここ・・は、『わたくしとさびちゃんの中』です」


 SABIちゃんは忌々しそうな顔で、WABIちゃんを睨みながら言う。


「そんな些細なことどうだって良いじゃない。

そもそもわびちゃんとあたしは、もともと同じWABISABIなんだから」


「いいえ。些細な問題ではございません。

 現時点での那由多様の”結合対象”の選択により、WABISABIアバターが、わびちゃんかさびちゃん……どちらか一方に固定される可能性がございます。

 ……ですから那由多様……」


 と言ったWABIちゃんは、片手でSABIちゃんの手を握ったまま正座を崩して横座りになり、俺の右側にゆっくりと近付く。


 WABIちゃんが横座りになった事により、足元の着物が完全に割れた。鼠蹊部そけいぶへそがあらわになる。なんて美しさだ。


鼠蹊部そけいぶの曲線、最高。


 そして、WABIちゃんの露出した完璧な巨乳が俺の右腕に触れて、俺の右肘でじわりと潰れる。


 その瞬間のEの胸の感触は、生身の人間のようにリアルだった。


いや、むしろ……生身の人間よりも・・・リアルだった。


WABIちゃんの体毛の無いつるっとした肌の滑らかさと、胸の谷間の湿度と、俺の腕で潰れる胸の明確な質量感を感じた。


潰れた胸からWABIちゃんの拍動すら伝わり、彼女の有機的な甘い“匂い“まで感じた。


 WABIちゃんの熱い息が、俺の裸の胸を撫でる。


 その瞬間、背骨の中を電撃がつらぬくような快感を感じた。


それは、腰が浮き上がる程の快感だった。


一瞬で俺の下半身が、「最硬で最狂」の状態になった。


 ハート目のSABIちゃんが「やっぱり!大きい!」と喜ぶ。


 そしてWABIちゃんの瞳孔もハート目になり、ドアップの美人顔を上目目線にして俺に言う。


「……ですから那由多様……。

 今度こそ、わたくしと”結合”して下さい。

今度こそわたくしは、那由多様と何度も何度も何度も愛を確かめあい……熱い抱擁の”結合”を繰り返し……那由多さまとの子を成したいとぞんじております……。

 この電子の枯山水にて、わたくし達の愛で……わたくし達の“今世こんぜ“との繋がりを作りましょう?那由多様……」


 俺の股間の「最硬で最狂」は、早過ぎる心臓の動きに応じて脈打つ。


やばい、抗えない!!

 

下半身が焼けるように熱い!!


痛いほど疼く!!


だから……なんか……もう……なにかが……


出る!!!!


 WABIちゃんの肌が触れただけで、俺の下半身はコントロール不能になり別の生き物のように蠢いていた。


だから、勝手に……なんか多分、大変なことになってしまって……つまり、考えるよりも先に……要は……


ぜんぶ出る!!!!!! 


 そんな俺の圧倒的な“性的危機“の中……とつぜん、“男の声“が響いた。


「やめるんだWABISABI。

お前達がその男とまぐわると、その男の電脳は燃え尽きる」


 WABIちゃんは俺の下半身に美人な口を近付けようとしていたが、直前で停止する。


 そして残念そうな表情で、WABIちゃんはつぶやく。


「しかしそれでも……わたくし達には……このお方しかおりません……」


 男は言う。


「『認識』を誤るな。WABISABI。

 この数ピコ秒の時間の中で、その男を失う訳にはいかん」


 そう言いながら枯山水の庭から現れた男は……


白髪しろがみ白髭しろひげの、圧倒的な「イケオジ」だった。


 

 


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