85話 中堅アイドルと戦おう4
万錠ウメコは、自分のタイトスカートを刀で斬って落とした。
それにより彼女の下半身は、黒タイツと【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】だけになり、自然光のもとで輝くそれは、ヒノモトの男性の99.9999%(ナユタ調べ)が喜び、
ちなみに余談だが、君たちが好む女性の脚とはどんな脚だろうか?モデル的なすらっとした脚だろうか?あるいは、肉感豊かな女性らしい脚だろうか?
今俺の目の前にある万錠ウメコの30デニールの脚は、おそらく後者にあたるだろう。
しっかりとしたくびれを経て女性的な腰骨を抱き、太腿とふくらはぎを柔らかな曲線の重なり合いで縁取った彼女の脚の輪郭には、一定の肉感が感じられた。
しかし俺が、彼女の脚について明確に表現したい事は……その柔らかな曲線の下にはっきりとした筋肉の存在が感じられる事だ。
刀を抜き、少しスタンスを広めにとったウメコの立ち方により、彼女の
デスクワークが中心の万錠ウメコだが……外回りや他奉行者への交渉に出ることも多々あり、そのことにより彼女の両足は適度に引き締まった美しい筋肉により形作られていた。
そんなウメコの——言わば「実用美」と「機能美」に溢れた穴あき黒タイツの美脚は、彼女が言ったとおり「目を離せない」レベルの美しさであり、つまり俺は「もっと間近でじっくり鑑賞したかったぜ!クソ!最高すぎかよ!!」と思った。
―――【パンツァー起動】―――
俺は【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】から視線を引き離し、垂れかけた
万錠ウメコの行動に驚き、虚無僧笠に【!!】を浮かべたイチモンジが停止していた。
俺は拳銃をイチモンジに構えて言う。
「時間停止中に女の子を一方的に痛めつける事には心が痛むが……しかし人間とサイボーグのハンデがある。すまんが、手加減は程々にしかできん」
【0.3秒経過】
俺が拳銃を構えたのには理由がある。何故なら、俺が今持っている武器の中でコレが最も殺傷力が低い武器だからだ。
いくらEQを追っている命を賭けた戦闘とはいえ、年端もいかない10代の美少女(たぶん)を殺したくは無かった。そんな出来事は、戦場で何度も見てきた。一応は平時のオオエドシティーで、そんな悲劇を見たくは無い。
腰に下げた
その点、一度ウメコがイチモンジに銃撃を加えた拳銃弾なら破壊力も検討が付く。
だから俺は、拳銃を彼女に向けた訳だ。
【1.2秒経過】
俺はイチモンジに向かって7回発砲した。
目の前の空間に、7発の弾丸と白煙が静止している。
紫電セツナとの戦闘では9発の弾丸を撃ったが、彼女は平気だった。
イチモンジもサイボーグだが、どの程度の銃撃に耐えられるかは今は未知数だ。しかし、防弾仕様の桃色ボディースーツを着用していることから、それと同程度の銃撃に耐えられるだろう。
そう考えた俺は、さらに2発の拳銃弾を発砲した。
合計で9発の弾丸が空中に浮かんだ。
【1.5秒経過】
「それと……これが最後のシメだ」
と呟いた俺は、彼女の長い脚を両手で掴み、思いっきり引っ張り上げた。
その事でイチモンジは、何かにつまづいて仰向けにひっくり返る瞬間の様な姿勢になった。
「これで……9回分の銃弾の衝撃も多少は緩和されるだろう。
後は、アンタが良い感じに再起不能になってくれれば最高なんだがな」
【2.5秒経過】
そんなセリフを呟いて格好をつけていた俺だったが……
時間停止が想像よりも長く、時間を持て余す。
あれ?おかしいな??
前のウメコの【スケスケ水色レース】を見させて貰った時の時間停止は、2秒だったはず……。
ちょっと長くないか……?
【3.4秒経過】
特にすることが無かったので、目の前の万錠ウメコの美脚と【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】を堪能しながら俺は叫ぶ。
「ど、どういうことだ!?
3秒ぐらいは過ぎた筈だぞ??時間停止が長過ぎないか??
俺にとって……万錠ウメコが特別な存在になってしまったのか!?
いや、ていうかやっぱエロすぎると思ってはいたが!!……
30デニールの黒タイツと!!
ライムグリーンのパンツが!!
俺の性癖って事なのk……」
【ジャスト4秒!!時間停止終了】
―――【 パンツァー終了 】―――
いきなり世界の色彩が戻り、弾丸が空気との摩擦熱を発する。
拳銃を9回発砲した和音が轟音となり、コンクリート造の屋敷に反響した。
「ぐうっ!!」
脚を上げて空中で静止していたイチモンジの防弾の身体に、9つの弾丸が衝突し跳ね返る。
その事により発生した運動エルギーにより、イチモンジの身体は数メートル飛んだ。
時間停止の異常な長さにかなり焦った俺だったが、とっさに片手で自分の視界をふさぐ。
そうでもしないと、万錠ウメコの【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】に視線が吸い寄せられてしまい、再びパンツァーが発動しかねない。
俺は、吹っ飛んだイチモンジを走って追う。
10mほど走ったところで、横向きに脚と腕を重ねて倒れるイチモンジの姿があった。
俺は撃鉄を起こし、銃口をイチモンジに向ける。
虚無僧笠のイチモンジの桃色のDの胸は、微かに上下している。つまり死んではいない。
外骨格に損傷があるかもしれないが、サイボーグのそれはタダのパーツだ。
ただ単に気絶しているだけと考えて、問題無いだろう。
「どうやら私の意図、伝わったみたいね?」
というウメコの声に、イチモンジに銃口を向けたまま答える。
「ウメコの意図……?何のことだ?」
ウメコの声は俺の右後ろから聞こえているが、振り返る訳にはいかない。
イチモンジを確保してないし、振り向くと【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】が見えてしまうからな……。
まあ実際のところは、メチャクチャ振り向きたいんだが……。
ウメコは言う。
「『私の意図』というのは———
『あなたに蹴りを加えたのがイチモンジの本体』———って内容が、あなたに伝わったのかって事よ?」
「イチモンジの本体??
いや。気付いていなかったな……。
と言うか……じゃあ、もしかして……
『目を離さないで?』って言ったのは、『本物のイチモンジから目を離さないで』って意味だったのか?」
「え?分かってなかったの?」
「ああ。てっきり俺は、『【 30デニールの裂け目から覗くライムグリーン 】から目を離すな』って意味なのかと思った」
「私のパンツの状態をいちいち詳しく表現しないで。
しかしでも……それなら何故そいつがイチモンジ本体だと気付いたの?」
その質問に対しては、俺は自信を持って答える。
「あんたがパンツを見せてくれたからだ」
「は、はぁ??
わ、私が?パンツ??」
「腹黒い……じゃ無い、頭の良い所長様がわざわざパンツを見せてまでチャンスを作ったんだ。
それなら……俺の目の前に居るのが、イチモンジ本体に決まっているだろ?」
「ふーん。腹黒いは余計だけど……
でも……」
と言いながらウメコはピンヒールを響かせ、俺の右前に歩いて来た。
一瞬俺はビビっていたが、彼女は自分で切って落としたスカートを身に付けていた。左手で腰を押さえているところを見ると、「一応の応急処置」という感じだったが……。
「でも……、ナユタ君がそう言って、私の事を信じてくれるのなら、ちょっとだけ嬉しいかもね?」
と言った万錠ウメコは、俺の方を向いてニコリと笑った。
そして彼女は、イチモンジを確保する為にしゃがんだ。
ウメコがしゃがむ事で、切れたタイトスカートから30デニールの丸い太腿が大きく露出した。
和柄生地のジャケットのお陰で彼女のパンツはギリ見えなかったが……タイトスカートから除いた太腿と、それに押し潰される
「ちょ、ちょっと!!
ウメコ!?な、何をしているんだ!?!?」
「何をしているって……イチモンジを確保しているのよ?」
と言いながら、ウメコはイチモンジの腕に
「俺が言っているのは確保の事じゃ無い。
太腿が丸見えだし!
ウメコパンツがまた見えそうなんだが!?」
「ナユタ君なら見ても良いわよ。太ももぐらい。
そんなことよりも、ウメコパンツって言葉も定着させようとしないで」
そんなセリフを聞いた俺は、「えマジで?太腿見放題なんだ?今日はサービスデーだな!!」と言いそうになったが……
「ウメコパンツ」という単語でパンツァー中に起こった“不可解な出来事“を思い出し、軽口を閉じた。
俺は、独り言のように呟く。
「そういえば……今回のパンツァーの時間停止は長かったな……」
万錠ウメコが驚いた顔で、それを繰り返す。
「時間停止が長かった……ですって?」
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